よく「シン・ゴジラは面白いんですか?」と聞かれるんですよね。
昨日も『正義のミカタ』っていう大阪のローカル番組の情報番組に行ったんです。
ローカル番組と言っても、関東以外は日本全国でやってるんで、ローカルじゃないんですけどね。
そこでは、ゴジラの映画を見てたのは、元官僚で安倍総理の家庭教師だった高橋先生と、東野さんだけだったんです。
この二人には、凄く評判が良かった。
東野さんは「見るつもりはなかったんですけどね。エヴァが好きですから。」っていうだけの理由で見に行かれてましたけどね(笑)
そのほかの人を見たら、あんなにアニメとかを語りたがる宮崎哲弥が、まだ見ていない。
なんという事だ。
僕は、本当を言えば首相官邸の正解探しをしたかったんです。
なので藤井聡先生には、ぜひ見て欲しかったんですけども、藤井先生もまだ見てなかった。
なので、「とりあえず、次回までに見ておいてください」と、お願いしました。
それで高橋さんが前の安部政権では政府のメインメンバーにいたので、「作中の首相官邸はどうだったですか?」って聞いたんです。
すると「あれは、すごい取材をしてるよ」と返事がありました。
「意地悪な言い方をすれば、ちょっと違うんだけどね。」
「だけど、首相の部屋をかなり再現してるのにビックリした。」って。
首相の執務室というのは、原則的に撮影が禁止なんです。
撮影が許されてるときは、要人が来て話しているとき。
決められたアングルしか、写真が撮れないんです。
テロ対策とかで、部屋の見取りを絶対に分からないようにしてるからなんだけども、シン・ゴジラを見たらほぼ合っていたと。
俺は、それを聞けただけでも「嬉しい!」ってなっちゃったんです。
なのに、この二人以外は誰も見ていない状態だったんですね。
そこで「シン・ゴジラの何が面白いのか?」と聞かれたんです。
僕の面白いポイントは、普通の人とは見方が違うんですけどね。
この作品は、役者さんの顔が面白いんですよ。
僕は、これは日本映画の長所だと思ってるんですけど、とにかく役者さんの層が厚いんです。
韓国や中国の映画だったら、あんなに面白い顔の中年男性を、いっぱい出せないんですよね。
イケメンばっかりになる。
極端に太ったヤツか、極端に痩せたヤツか、極端に背の高いヤツは、中国映画や韓国映画にもいるんですよ。
だけど、メインはイケメンなんです。
日本は、とにかく面白い顔の役者が多い。
赤井孝美くんは、昔から言ってました。
「邦画の魅力は“顔”ですよ」って。
「どんな映画を見ても、面白い顔のオッサンがあんなに出てくるのは、日本の他には無いですよ」と。
海外の映画では、人種が色々とあって彫りも深いから、顔なんか違って当たり前なんですね。
ところが日本人は、ほぼ一定の平面的な無個性な顔をしているように見える。
でも実は、日本人から見たら、すごく多様な顔になっている。
ゴジラのパンフレットを見ても、ダサい背広を着た7・3分けのオッサンがズラリと並んでる。
そして一人一人の顔がみんな面白いという、いい感じの映画でした(笑)
あとテロップが面白い。
見た人はお分かりの通り、この映画はテロップがかなり出てくるんです。
特に主人公の矢口の役職が変わるたびに「お前も○○に任命されたな」って言て、その瞬間に下に新しいテロップが出てくるんです。
だけど、このテロップが読むヒマも無く切り替わるんですね。
僕は、これを“情報のポトラッチ”と呼んでます。
“ポトラッチ”とは、アメリカ原住民の戦争の仕方なんです。
普通の戦争は、相手の資産を削る。
だけど、“ポトラッチ”のは、自分たちの資産を削るんですね。
たとえば飼っている豚を焼き殺して「こんな事をしても、俺は平気なんだぞ!」と見せ付けるのが、ポトラッチなんです。
庵野映画の凄さは、ドンドン情報を出していって「これは見なくても構いません。でも、あとで調べたら、ちゃんと書いてますから。」って、字幕で溢れてる。
この情報のポトラッチな感じが、面白さの一つじゃないかなと思います。
あとはアップの多さですかね。
たとえば柄本明とかが喋るたびに、画面がめちゃくちゃ寄るんですよ。
これは役者さんに緊張を強いるんですけども、逆に言えば無表情でもサマになるんです。
他の映画では、中途半端なフレームで撮っちゃうから、役者が「演技しなきゃいけない」と思って、不要な事をやるんです。
日本人って、案外、無表情なんですよ。
それを「ドラマだから」「映画だから」といって無理な演技をする事に、これまでの演技の失敗があったと思うんですね。
日本の俳優の大部分は、映画の演技が下手なんですよ。
でも「俳優の演技が下手なのか」というと、そうじゃないんですよ。
「映画に出てるとき」が、下手なんです。
これは不用意なフレームで撮っているからなんです。
同じ俳優に舞台をやらせると、みんなメチャクチャ上手いんですよ。
これは「日本人は元々、無表情で話す民族だ」という事を見逃しているんですね。
実は僕らの生活の中では、あまり表情を変えずに喋ることが多いんです。
表情がすごく変わって、身振り手振りが多いハリウッド映画とは、根本的に違うんですね。
それを無理矢理「動的に見せよう」として、不自然な演技を付けさせてるあまり、演技力が空回りしてる作品が多いと思うんです。
あとは、フレームに他の人を映らせない。
たとえば政府の官僚が喋る時に、両隣の人が映っちゃったら、そいつらも演技をしなきゃいけないんです。
でもアップを撮る事によって、演技をしない事による画面の緊張感が生まれます。
あとは、余計なものが無い効果が生まれているのもあります。
この三つですね。
テロップがすごい。
ポトラッチで、情報の無駄遣いで面白いという事。
あとは役者の顔 自体が、演技者の層の厚みで面白いという事。
最後はフレーム。
「喋るときは、思い切って寄る」緊張感と、日本人の無表情で喋る事が、上手く出来ているんですね。
この作品は、見ている人が解釈を読まなきゃいけないんです。
物語の後半で、ゴジラに攻撃をする時に「本当に現場に、もう避難民で逃げ残ってる人はいないんだろうね?」って首相が確認するんです。
そうすると担当の人が「私は現場の判断を信じるのみです」って言うんですよ。
これはある種、責任の回避の言葉だとも言える。
しかし「それを振りなおすって事は、首相の責任逃れなんだよ。お前は、そんなことを言える立場じゃないだろ?」って返してるとも言えるんです。
でも、そこで“良い者”“悪者”を作らない。
見ている人にボールを投げるがごとく、「ちょっと心配した顔」と、「無表情で忠実そうに見えるオジサン」とのやりとりを解説なしにポンと見せる。
それによって見る側に「これは、俺が自分で考えて解釈しなきゃいけないんじゃないか?」って思わせる。
この、知能指数の上がり方。
その辺が、すごく面白と思います。
あとの面白さは、ネットの評論に対する盛り上がりですね。
いろんな人が「やっと見た」と言いながら、みんなエクスキューズを突きつける。
「と、言うけど」とか「と、言われてるけど」「○○みたいだけど」って言いながら、全員がムキになって語っている口調が楽しいなと思います(笑)
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こんにちは、岡田斗司夫です。
いつもYouTubeを見ていただいて、どうもありがとうございます。
岡田斗司夫のシン・ゴジラの評論を、ものすごい数の人が見てくれているんです。
だけど、何故かYouTubeの岡田斗司夫チャンネルを、お気に入り登録してくれる人が少ないんですね。
一万七千人ぐらいしかいない。
なので、特別キャンペーンとして限定映像を公開することにします。
ただし8月31日までに、お気に入りの登録数が三万人を越えたら。
以前に放送した、限定放送でだけやったシン・ゴジラの弱点を5つ。
これをYouTubeで公開させていただきます。
是非とも、みなさんのお友達を誘って拡散しながらも、8月31日までに、岡田斗司夫チャンネルのYouTubeのお気に入り登録をよろしくお願いします!
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宇宙の怪獣、怖くない♪
悪党どもに 勇気をみせる♪
ゴジラとジャガーで パンチパンチパンチ♪
あ、これは『ゴジラ対メガロ』の主題歌で『ゴジラとジェットジャガーでパンチ・パンチ・パンチ』ね。