おはよう! 岡田斗司夫です。
試算では10万円くらい黒字のはず。
しかし大会当日が近づくにつれ、予想外の出費が増える。
素人集団だから失敗も多い、つまり資材にムダが出る。
撮影が失敗するとフィルム代や現像費も倍かかる。
撮影用のライトもつけっぱなしで、家の電気代が一ヶ月20万を超えた時、さすがに両親に怒鳴られ弁償させられた。
問題は、どれくらいの赤字か、だ。
まず出費。
予想より80万円も多い。
大会参加者千二百人のうち、なんと二百名近くが参加費を払っていなかった。
ゲストの作家さんや出版関係者、その家族や友人・取り巻きみたいな人たちが、いわゆる顔パスで入場したのだ。
予想外の出費と売り上げ不足で赤字合計は二百万円となった。
大会グッズは評判も良く売り切れになったので、利益が三十万ほど出た。
それでも百七十万のマイナスだ。
百七十万円を学生たちがバイトで返すのは不可能だ。
もうそれしか手はない。
なにも一般売りするわけじゃない。
SF専門誌に告知を出して「今年のSF大会は大赤字を出してしまいました。助けると思ってみなさん寄付をお願いします」と土下座すれば、カンパに応じてくれるんじゃないか?
そう考えただけだった。
なんかいけそうな気がする。
でも、たった五分のアニメをビデオにダビングして、はたしていくらで売ればいいんだ?
千円?
二千円?
たしかにそんな値段ならひんしゅくも買わないし、カンパと笑って許してもらえるだろう。
僕は思いきった金額を提案した。
たちまち、猛反対の嵐だ。
しかし引き下がるわけにはいかない。
喫茶店の紙ナプキンを裏返し、ボールペンで試算を殴り書きした。
赤字回収まで千七百本売ること。
赤字回収は百六十本程度で可能。
僕は数字を示しながら説明した。
「映像特典をつけて、一万二千円で売りましょう」
「俺たちの評判は最悪になるぞ」
「がめつい大阪人がエグい商売してる、と言われるぞ」
SFショーでも実際にバイトして金を返したのは、僕を含めて二人きりだったくせに。
手を汚さずに口だけを出すな!
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