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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「赤字救済委員会」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「赤字救済委員会」

2016-09-23 06:00
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    岡田斗司夫のニコ生では言えない話
     岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2016/09/23
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    おはよう! 岡田斗司夫です。
    今日は週刊アスキー『岡田斗司夫の ま、金ならあるし』の記事から、セレクトしてお届けします。

    最初からの一気読みはこちらです→http://goo.gl/L10s6c

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    ◆岡田斗司夫の最終ビジネス(8)
     
     「DAICONⅢの赤字埋めのため、オープニングアニメ(五分)を売ります!特典映像あり。VHS一万三千円、ベータ一万二千円。お申込は赤字救済委員会まで」

     SF専門誌に告知を出したものの、僕は心配でしかたなかった。
     
     たった五分の、素人が作ったアニメが一万円以上。
     どう考えても無理がある。
     だから一分程度のおまけアニメを作った。
     解散したアニメスタッフをもう一度集めて、終わったはずの夏が過ぎても、またアニメを作ったのだ。

     完成したフィルムをビデオにテレシネして、次に「相性の良いビデオデッキ」を探した。
     ビデオテープのダビングは、もちろん手作業だ。

     そんなに注文も来るはずないので、自宅のデッキを二台、繋げてやるつもりだった。
     しかし、一万円以上取る商品なんだから妥協はいけない。
     
     とりあえずビデオデッキを持ってるスタッフは一度僕の家にデッキを預けて、ダビングの相性を診断することになった。
     結果、最高の組み合わせが選ばれ、その夜からダビング作業を開始した。

     それにしても、もう何百回このアニメを見ただろうか?
     大会当日や打ち上げで、スタッフの慰労会で、そしてテレシネ起こしでと、数限りなく見たはずだ。
     
     でも僕たちは深夜のダビング作業中、ビデオにラベルテープを貼る手を休めて、わずか五分のアニメに魅入った。
     セリフひとつない五分の映像は、いつ見ても見飽きなかった。

     時に一九八一年の秋、『うる星やつら』のTVアニメがはじまり、『機動戦士ガンダム』の劇場版が公開されていた。
     アニメブームと言われた時代だ。
     
     俺たちの作ったアニメも、ガンダムに負けてない!
     そう信じて、僕たちはダビングとラベル貼りを繰り返した。

     雑誌の告知は、応募して二ヶ月以上たって、ようやっと掲載された。
     はたして申し込みは来るのか?

     支払いを待ってもらう限界はとうにすぎ、子供の頃からお年玉を貯めた僕の貯金も底を尽き、いろんな方面に借用書を書いて、ついにサラ金に手を出しかけた直前、郵便箱に三通、封筒が入っていた。
     もちろん宛名は「DAICONⅢ赤字救済委員会様」。

     携帯電話なんか、まさにSFだった時代だ。
     僕は封筒をひっつかんで、南海高野線~国鉄環状線~近鉄と乗り継いで、近畿大学前喫茶店の二階へ駆け込んだ。
     
     「売れました!三本です!」

     開封したうちの一通は、二万五千円の定額小為替といっしょに、ベータとVHSの各一本を申し込んでいた。
     合計で四本、売れたわけだ。
     アイスコーヒーやカルピスで乾杯し、自宅に帰ったらさらに二通、遅便で届いていた。

     翌日は十通、その翌日は十二通。
     週末までに合計五十通で、五十三本の売り上げ。
     
     翌週はさらにペースが上がった。
     
     週の前半で合計八十七本。
     ついに売り上げは百万を超えた。

     しかし週末には配達が途絶え、土曜には一通の申し込みもなかった。
     僕たちも「そこまで甘くないか」と苦笑いした。

     二週目の月曜、いきなり五十通以上が届いた。
     翌火曜にも三十通。
     水曜、ついに売り上げは二百本・二百四十万円を超え、赤字問題は胡散霧消してしまった。

     しかし現金入りの郵便は止まらない。
     第二週目の週末、三百本を超えた。

     ここで一時、勢いは衰えたけど、オープニングアニメが紹介されたアニメ専門誌が発売された。
     念のため、そこにも赤字救済委員会の告知を載せていた。

     また毎日、数十通の現金封筒が届きだした。
     
     五百万、六百万。
     連日僕は定額小為替を現金化し、現金書留を開封し続けた。

     最終的に、DAICONⅢオープニングアニメは六百本以上を売った。
     合計で七百万は超えていたはずだ。

     赤字分と利息を払ったあと、余ってしまった四百万円以上の札束。
     これ、いったいどうすればいいんだろう?

     楽しいような、ちょっと怖いような薄笑いで、僕たちは顔を見合わせた。


    以上、『岡田斗司夫の ま、金ならあるし』よりお届けしました。


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