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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2016/10/28
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おはよう! 岡田斗司夫です。
今日は週刊アスキー『岡田斗司夫の ま、金ならあるし』の記事から、セレクトしてお届けします。

最初からの一気読みはこちらです→http://goo.gl/L10s6c

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◆岡田斗司夫の最終ビジネス(13)
  

 本番前日、リハーサルではじめて、大阪フィルハーモニーにSF音楽を演奏させる企画の欠点が露見した。

 クラシック業界では、演奏するときに「原曲の解釈」が問題になる。
 だから一流の指揮者、一流の演奏者は「いったいモーツァルトはどんな心象風景で作曲し たか?」「新世界アメリカから故郷ボヘミアへ、どんな想いを込めて、ドヴォルザークは『新世界より』を作曲したか?」と悩むのだ。

 譜面どおりに演奏するより、いかに曲を解釈し、表現するか。
 それが優れたプロの演奏だ。

 ところが、大阪フィルハーモニーは気軽に受けたこの仕事の難易度を知らなかった。
 クラシックコンサートでも、まさか聴衆の一人ひとりが演奏する曲の全てを知ってるわけじゃない。
 大半は「ちょっと上品なお出かけ」と思って来ているヌルい客層だ。

 しかしSF大会の参加者は違う。
 
 ゴジラにしてもスターウォーズにしても、楽譜の隅々まで、それどころか映画のシーンやジョン・ウィリアムスの指揮っぷりまで暗記している。
 音一つ狂ってもわかる。
 いわゆる猛者ツワモノばかりだ。

 いわば客席を埋め尽くすモーツァルトやドヴォルザーク本人の群れに向かって演奏しなければいけない。

 しかも大フィルは肝心のSFについて、ウルトラセブンやゴジラについてなにも知らないから、楽曲解釈も自信なさげだ。
 最初はNHKプロデューサーが指揮者に自分のイメージを伝えていたけど、あんまり遠いからついつい僕が口を出すことになる。

 「え~と、ゴジラは原始のジャングルみたいなイメージで・・・」
 「違います。最初は東京湾です。東京湾の底、日本人が忘れたはずの戦争の記憶から、ゴジラが姿を現すシーンです。この最初の和音で、観客をドキっとさせなきゃダメです」
 
 僕の声はリハーサル会場に響いた。

 「続いての小節はゴジラの足音です。体重数万トンの巨大生物がかちどき橋を押し倒し、銀座の街を歩いて行く。その足音です!」
 「ゴジラって昔の恐竜じゃないの?」
 「違います!ゴジラは人類の悪行そのもの、戦争がイメージなんです。もうすっかり戦争を忘れて繁栄する東京に、巨大な怪物が上陸する。核兵器で全身が醜い ケロイド火傷で覆われた巨大生物が、贖罪を求めて来るんです。まるで東京大空襲を再現するかのように、見渡す限り火の海になる。人間の原罪をゴジラは問い 詰めに上陸するんです。もっと神話的イメージでお願いします!」

 オタクに好きなことをしゃべらせてはいけない。
 僕は夢中になって楽曲解釈を語り、楽団員たちは呆れ果てた。
 
 問題のウルトラセブンのリハに入ると、僕の指摘はさらに細かくなった。

 「曲の入り、そこのラッパの人たちが揃ってない。もっと強くできませんか?」と指までさした。
 「あぁ、ホルンね」と横でプロデューサーが小さな声で訂正する。

 気がつくと、僕は指揮者の後ろに仁王立ちして直接、楽団員にリテークを出していた。

 「あんまり練習すると、かえって疲れて本番でうまくできないから」というプロデューサーの意見にも聞く耳もたず、リハは4時間ぶっ続けで行われた。

 大阪フィルハーモニーを雇うためのウン百万円が高かったかどうか、それはわからない。
 でも、演奏させられた楽団メンバーの日給が割りに合わなかったことだけは確かだろう。

 さて次回、忘れていた?
 ようやっと表題・究極ビジネスの話だ。

以上、『岡田斗司夫の ま、金ならあるし』よりお届けしました。


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