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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「子供を産む女性漫画家は少ない? 『ど根性ガエルの娘』の転換点“第14話”」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「子供を産む女性漫画家は少ない? 『ど根性ガエルの娘』の転換点“第14話”」

2017-12-03 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2017/12/03
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    今回の記事はニコ生ゼミ11/19(#205)よりハイライトでお送りします。


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     「子供を産む女性漫画家は少ない? 『ど根性ガエルの娘』の転換点“第14話”」


      『ど根性ガエルの娘』って、よく「家族の物語」とかって言われるんだけども、絶対に家族の物語じゃないと思う。
     なぜなら、語り手の“ゆうこ”が家族を作るつもりが無いからなんですよ。


     僕がビックリしたのが、15話の一つ前の14話なんですね。

     14話は、すごいです。


     まず、絶叫している母親のシーンから始まって、「うわぁぁぁ」ってなってる。
     それで大月悠祐子31歳。

     「だーかーらぁぁぁ!産めって言ってるでしょォォォ!」ってふうに母親が怒鳴ってる。


     それで次のページに行くと、「あんたがお母さんの言うことを聞いてすぐに作らないからッッ!」

     「どーすんのよ、そんな年になっちゃってッ!」
     「もう産めないじゃない!」

     「産んでよ、孫を、私にちょうだいよ」

     かなり怖いシーンです。


     それで次のページ。

     「・・・あのね、お母さん」
     「私とお母さんは、別の人間なの」って、冷静に説得してる。

     「お母さんが赤ちゃんが欲しくても、私は欲しくないの」

     
     なんでかって言うと、「私、こわいの」と。

     「私には、お父さんとお母さんの血が流れていて、同じようなことをするんじゃないかって」

     「私は自分の子供に、自分と同じ思いはさせたくない・・・!」って。


     すごい残酷な言葉ですね。
     
     おそらく、子供が親に言う一番 残酷な言葉なんですけども。


     「だから、産まない」

     「どうしても赤ちゃんが欲しいなら、私に産ませようとするんじゃなくて」
     「自分で産んで・・・」って言い切って。


     それで「お母さんは、私が子供の頃からずっと・・・私をゴミ箱みたいに扱っていた」と。

     「何か辛い事があったら、私に投げてよこした」

     「でも、それにつき合うのはやめた」

     「私はもう、この家を出るよ」っていうね。


     これが14話。

     僕が思っている、このマンガの転換点で、一番すごい所なんですけども。


     (中略)


     何で主人公が「産まない」と言い切るのか。

     これを描くのは勇気がいったと思うんですけども、自分が母親に向けている視線が、一方的で残酷だって気が付いてるからですね。


     この人は「もし子供を作っちゃったら、自分が子供を同じような目に合わせるのが怖いから」と言ってる。

     それと同時に、「子供が大人になった時に、私と同じ事をしたらどうしよう?」って思うからなんですよね。
     

     つまり、人間と言うのは子供を作って、それが代々代々 受け継がれている限り、どんなに親にひどい事をしても、それは親になったらいずれ返ってくるものがある。

     なので“文明”というのは成立してるんですよ。

     
     それが人間社会というか、人間の面白さ、みたいなもんなんですけども。

     この人は、ここを一方的に絶つって言ってるんですね。


     つまり、「福祉だけもらって、義務を返さない」って言ったら、一方的になっちゃうかも分からないけども(笑)。


     別に、子供を産んでない事に関して、あれこれ言うつもりは無いんです。


     けども後で、子供に、自分みたいに一方的にアレコレ言われるのが、めちゃくちゃ怖いんですね。


     このマンガの中では、“作者”っていうのは、全能者なんですよ。

     すべてを思い通りに描けるんです。 


     けども、その子供が大きくなってから、「いや、マンガではああ描いてるけども、実は私の母の“ゆうこ”は、こんな人だった」という事が、やっぱり凄く恐ろしい。

     なので、この流れを断ち切りたいんですね。

     ・・・
     
     田中圭一さんの『ペンと箸』っていうマンガでも、すごく面白い指摘があってですね。

     「女性漫画家には子供がいない」っていう事を描いてるんですね。


     女性漫画家にも、もっとインタビューをしたかったと。

     男性漫画家には子供がいて、その子供から「お父さんは、どんな人でしたか?」ってインタビューが出来る。

     だけど、女性漫画家で子供を産んでいる人は凄く少ない。

     なので、メチャクチャ苦労したと。


     そういう事を書いてるんです。


     僕は思うんですけども、全能者としてマンガを描いてしまうと、後で子供が作れなくなっちゃうんじゃないかと。

     こう言うのは変なんですけどね。


     女性漫画家で子供がいるのって、西原理恵子とか、東村アキコとか、強い女ばっかりなんですよ(笑)。


     「あの時、私は、こう感じていたの! わかって!」って言うタイプは、子供を作らないんですよね。

     「あの時、私は、こう考えていたの! わかって!」っていうのを、後で自分の子供に言われちゃうから。


     なので、自分のところで止めようとするのが無意識に働くんじゃないかと僕は思うんです。


     僕は男ですから、この女性理解は一方的で、すごく歪んでいるかもしれない。

     けども、なんとなくそういうふうに見えちゃうんですよね。


     “家族”っていうのは血がつながって行くから、終わらない関係なんですよね。

     終わらない関係であって、「その家族が、本当はどんな家族か?」というのは、常に中途半端で、そのときだけの価値判断にしかならないんですよ。


     あるときは、「幸せな家族ですね。」

     あるときは、「俺の家族は地獄だった。」

     あるときは、「いや、家族がやっと再生したよ。」と。

     そう言うんですけども、それらはすべて過程の段階であって、結論が永遠に出ないのが“家族”なんですよね。

     常に変わっていく、常に変わっていく、と。


     なので、もし主人公の“ゆうこ”が子供を作っちゃったら、それが自分が思ってる「私はこんな人生だった」というのを全部、自分の子供にひっくり返されちゃう可能性があるから。

     なので、「子供を産まない」っていう結論があるんじゃないかな。


     そういうふうに、僕は読んじゃったんですね。

     本当に、邪推かもしれないけどね。

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