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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/01/22
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今回は、ニコ生ゼミ1月14日(#213)から、ハイライトをお届けいたします。

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 SFとしての『ラピュタ』・前編


 『2001年宇宙の旅』の原作を書いたイギリスのSF作家のアーサー・C・クラークという人が書いた、『未来のプロフィル』というノンフィクション本の中に、“クラークの3法則”というのが出てくるんですね。

 この話は、まず「レオナルド・ダ・ヴィンチやアルキメデス、ガリレオ・ガリレイにヘリコプターや自動車を見せたらどうなるだろうか?」という書き出しから始まります。

 これは、未来予測がどれくらい難しいかという事の例え話なんですけど。


 「昔の人が書いた設計図を見たら、現代人の使っている機械は、はるか昔に予想されていた」みたいな話がよくありますよね。

 これについて、「だから、想像力というのはすごいんだ!」って言う人もいれば、「正しいように見えるけど、全部 間違えている。こういうものは当てにならない」と言う人もいるんですけど。

 クラークは、こういった未来予測というものに一貫した法則というのを見出して、それを提唱してるんです。

・・・

 ダ・ヴィンチやアルキメデス、ガリレオ・ガリレイという、大昔の偉大な学者たちを連れてきて、現代のヘリコプターや自動車を見せたらどうなるか?

 これについて、クラークは「おそらく、彼らは、すぐにそれらの原理を理解する。これらについては、全く悩まないだろう」と言っています。

 なぜかというと、ガソリンエンジンにしても飛行機にしても、それらに使われている物理的な概念自体は、彼らが生きていた当時の理論の延長線上にあるから。

 それを応用したものに関しては、理解することはそんなに難しくはないんですね。


 では、テレビやコンピュータや原子炉を見せたらどうなるか?

 これについては、「彼らは電子や電流という先進的な思考の枠組みは持っていない。これらについては理解できないか、時間が掛かるだろう」と書いてるんですね。

 その最も簡単な例は“原子爆弾”です。

 原子爆弾というのは、極端に言えば「ウランの塊2つをくっつけたら爆発する」というだけのものです。

 だけど、「これをくっつけたら、石炭でいうと2万トン分くらいのすごい爆発力が生まれます」ということを19世紀末の科学者に話したとすると、その科学者はすごく呆れたような感じで、ゆっくりと「君は熱エネルギーの法則を知っているのかね?」と答えるはずです。

 そして、僕らが知っているよりもはるかに詳しい物理の法則や化学反応なんかを丁寧に解説しながら、「2つの金属をくっつけただけで、熱エネルギーが発生するというのは、どんなにありえないことか」と説明してくれるはずです。

 核反応というのは、それくらい、それを知らない時代の人にとって思考のフレーム外のことなんです。

 だから、「理解できないはずだ」と言ってるんですね。

・・・

 これらをまとめて、クラークは3つの未来予測に関する法則を打ち立てました。

 3つ目だけが、かなり有名なんですけど。


 クラークの3法則

 1.高名で年輩の科学者が「可能である」と言った場合、その主張はほぼ間違いない。また、「不可能である」と言った場合、その主張はまず間違っている。

 2.可能性の限界を測る唯一の方法は、「不可能である」とされるまでやってみることである。

 3.十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない。


 これ、2番目はちょっとわかりにくいですよね。

 どういうことかというと、クラークは、テレパシーとか念力のようなオカルト的なものであっても、それが絶対に存在しないということを科学実験を繰り返して証明しない限り、科学者たる者は「存在しない」と言ってはいけないと書いているんですね。

・・・

 『天空の城ラピュタ』というのは、実は、この3つ目の「十分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」という理論を上手く使ったSF作品なんです。


 具体的に言えば、ドーラ達が使うメカというのは、あの時代でもかなり先端的な技術によって作られているんですよ。

 でも、あくまでもそれは説明可能なものなんです。パズーが見ても理解できる程度のレベルのもの。

 しかし、天空の城に行ってから目にするラピュタ文明によって作られたメカというのは、説明不可能なものが多い。

 『ラピュタ』という作品は、これらの技術レベルの違う機械を、対比させているんです。

 つまり、石炭による蒸気機関、ドーラ達が使っている石油の内燃機関、そして、実は2つの層に分かれているラピュタの超科学。

 こういったそれぞれレベルの違うテクノロジーを見せることで、宮崎駿は、すごく奥深くて面白いSF的な世界を作り上げているんですよ。

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