─────────────────────────────
「【『海賊の経済学』解説 1 】ジャック・スパロウのモデル “黒髭ティーチ” は本当の変人? 海賊たちの意外な真実」
なので、何の事か分からなくなっちゃうんだけど。
一応、「お宝をぎっしり積んだ船を襲って、男は殺して女はレ●●!」みたいなイメージがあるじゃん。
「何年も海の上を冒険して、陸に上がれば酒と博打と女の乱痴気騒ぎ」と、僕らの持ってる海賊のイメージというのは、大体こんな感じだと思うんですよ。
海賊が襲ったのは、ほとんどが小麦とか糸とか布とか食料品とか日用品とか、そんなものばかりを積んだ船を襲ってるんだよね。
その場で海賊にリクルートするのが普通だったそうなんだ。
なぜかというと、他の船の襲撃に成功した場合、“その船 自体” が一番の財産なわけなんだよ。
で、乗組員を殺したりすると、「奪ったその船を誰が動かすんだよ!?」という話になっちゃう。
なので、基本的には「船を襲ったら、その乗組員はリクルートする」というのが当たり前だったそうです。
さらには、「女はレ●●」というのも、トラブルの元になるので、手を出さない場合が多かったそうです。
さらに、船に乗る人は特に迷信深くなる傾向もあるので、「女はレ●●」みたいなイメージというのも、案外そうじゃなかったと書いてあります。
あと、これも僕らが持っているイメージなんだけど、「何年も海の上を冒険する」というのも違う。
ほとんどの海賊というのは、海の上にいるのはせいぜい数週間くらいで、ちょっと沖に出て海賊行為をして、すぐに帰って来るという、そういうことばっかりやってたそうです。
でも、正しいと言っても仕方がないんだよね。
水ってね、大体、船出して数日くらいで悪くなって、最終的には “緑色のドロドロしたもの” に変わってしまうから、飲めなくなるんだって。
飲み物としての選択肢が「弱い酒」と「強い酒」くらいしかない。
で、そうやって、毎日、酒ばっかり飲んでるもんだから、全員アル中になっちゃうんだ。
だから、この酒に関してはしょうがない。
次に、博打三昧について。これも、“陸でしか出来ないこと” だったから、仕方がなかったんだ。
なぜって、喧嘩の元になるからだよね。
喧嘩が起これば船が破損したり、火事が起こる確率が増える。
なので、博打をやるにしても、お金を賭けない「明日の掃除を誰がするか?」くらいのこと以外は、ほとんどの船で禁止されていた。
そして、女についても、当時の船というのには、基本的に女がいないから、陸に上がった時くらいはハメを外したくなるということですね。
まあ、本当に遠洋漁業と変わらないよね。
この60年間くらいが、いわゆる海賊の黄金期だったんだけど、この海賊を扱います。
それまでの海賊の大きい流れはこうなっています。
それを受け取った国家公認の海賊というのを私掠船と呼びます。
『マスター・アンド・コマンダー』という映画で戦っていたフランス船も私掠船です。
もちろん、国に帰れば英雄です。
しかし、「そこで略奪した財宝の中から一定の配分を王室に支払う」ということが義務になっていたそうです。
あとは、確か『モーレツ宇宙海賊』も私掠船という設定だったと思うんだけども(笑)。
まあ、今聞くと「本当かよ?」って話なんですけど。これが、当時発行された私掠許可証です。
たとえば、フランスが発行する許可証だったら「スペインとイギリスの船は襲ってもいい」とか、もしくは「ポルトガルの船を重点的に襲いなさい」みたいなことが書いてあります。
もちろん、さっきも言ったように「……ただし、襲って得た財宝は、必ず一定の割合を王室に納めなさい」というふうに書いてあるんですけど。
この割合は、だいたい2割とか3割だったと言われてます。
ここまで来ると、もう、ほとんど “戦争の外注化” と言ってもいいですね。
そういうことをやっていたのが私掠船という海賊です。
コルセアというのは、「宗教的な海賊」という意味で、たとえば “バルバリア海賊” というのがあります。
恐ろしいよね。
もちろん、彼らも地元に帰ったら英雄なんだけど。
それに対して、“マルタ海賊” というのもいた。
これは、地中海のマルタ島を本拠地にしていたキリスト教の海賊なんだよね。
こっちは主にイスラム教徒を襲うんだよ。
で、もちろん、地元に帰ったら英雄だ。
マルタ海賊に限らず、ロードス島騎士団など、当時の地中海はキリスト教海賊団というのがいっぱいいたそうなんだ。
俺、キリスト教がエグいというのは知ってたんだけど、ここまですごいとは思わなかったよ(笑)。
それに対して、“バッカニア” というのは、スペインによってジャマイカ島から追い出された島民たちによる、スペインへの復讐を目的にした海賊です。
この時期は、島民のみんなも、「ああ、イギリスの支配ね」って、それなりに平和に暮らしてたんだけど。
その後、スペインがイギリスに対して干渉して、「島の民を全部追い出せ!」というふうなことになり、ジャマイカ島からみんなが追い出されてしまった。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』と同じ時代です。
その他にも、そういうのとは全く関係なく「俺達はどこにも属さない」と言っているフリーの海賊も混在していた時代なんだ。
そんな時代、海賊として一番有名だったのが “黒髭” ことエドワード・ティーチ。
彼は『パイレーツ・オブ・カリビアン』のジャック・スパロウのモデルになったともいわれているオッサンなんだけども。
この肖像画、よく見ると、頭から伸びたおさげみたいなものから煙が出てるよね?
これ、何かと言うと “火縄” なんだ。
つまり、火縄銃の導火線を帽子の中に入れて、垂らしている。
しかも、この導火線が特注で、ものすごく煙が出るものなんだって。
他にも、髭の中に、硫黄とか大麻を入れて、もうもうと炊いていたそうなんだ。
襲った船の中を練り歩く時には、それら全部に火をつけて、本当に顔を火傷するかしないかのような状態で、恐れられていたそうです。
胸の辺りを見ると、ピストルがいっぱい付いています。
これ、6丁も下げてるんだよね。
『パイレーツ・オブ・カリビアン』の第1作をチャンスがあったら見てみてください。
ジャック・スパロウが、「さあ、これから戦いだ!」という時に、ピストルをいっぱい胸に取り付けるシーンがあるんだけど、これはエドワード・ティーチがモデルだからだよね。
なぜ、6丁も持っているのかと言うと、当時の銃は “先詰め式” で、基本的に1発しか撃てないから。
つまり、船内で戦闘する時に、6発撃つために6丁もの拳銃を持っているんです。
「その際、海に捨てられた胴体部分だけの死体が、船の周りを3周泳いだ」っていう伝説があるんだって(笑)。
まあ、これは嘘だと思うんだけども。
それくらいビビられてたような人です。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
番組内で取り扱う質問はコチラまで!