僕は1982年にフロリダでカルーセル・オブ・プログレスを見て、大ショックを受けました。
それで翌年のダイコン4では、なんとかディズニーと同じくストーリーに挑戦しようとオープニングアニメを作ったんですけども。
開始二ヶ月で「あ、これは無理だ」と分かって、ダイコン3と同じPVの5分のアニメになりました。
元々は20分ぐらいのストーリーをやって、あれを僕らにとっての『ファンタジア』か、または『眠れる森の美女』になるはずだったんですけども(笑)。
もう一回、PVを作ることになってしまいました。
だからダイコン4では、一応 舞台の上に巨大な宇宙船を、実物大とか10分の1の縮尺でズラーッと並べて、その周りを司会者が歩き回りながら解説するっていう宇宙船講座っていうのもやって。
これもですね、ウォルト・ディズニーのやり方っていうのを、すごく意識したんですよ。
で、アマチュアのイベントとしては、こういう規模とか企画というよりは、「何を見せようとしているのか?」っていう部分で、わりと上手くいったと思うんですけども。
でも、それでもカルーセル・オブ・プログレスには勝てる訳がないと。
会場内で通用する通貨として “クレジット” というのを発行して、換金して、お金として使えるようにしたんですよ。
これは僕らがダイコン4でやった4年後にウォルト・ディズニー・スタジオも やり始めてですね。
何か “ディズニーダラー” っていうのを発行して、「あ、これでやっと一つだけウォルト・ディズニーに三年分 勝つことが出来た」って思ったんですけども(笑)。
まぁ、当たり前なんですけども、そこだけなんですよ。
全然 届かないんですよ。
背中すら見えない。
だから初めての映画『オネアミスの翼 王立宇宙軍』を作ったときは、とにかく主人公とかキャラクターのセリフっていうのは、批評的に受け止められるようにするのを目的で作りました。
たとえば、「宇宙を目指した若者が、知り合いになった女の子にフラれる」というだけの話で。
でも、彼は歴史には残るけど、その女の子にとっては何の意味もないと。
科学の進歩、技術の進歩っていうのは、人の世界を広げるけど、個人の世界は決して広がらない。
そういうのを、オネアミスの翼って映画では描いたんです。
これが僕の中でのカルーセル・オブ・プログレスへの解答なんですけども。
やっぱりお客さんは、それでは感動してくれないわけですよね。
高畑勲 映画と同じようなモンで(笑)。
戦闘シーンもあるし、「アニメだから、熱いセリフがあるはずだ」と思って。
シロツグっていう主人公が、「俺たちは やるんだ!」という所で、お客さんも、バンダイ側のプロデューサーも、アニメーターも、全員、感動しようと待ち構えていてさ(笑)。
僕と、監督の山賀だけが「いや、ここは感動するシーンじゃないよ。 せつなさを味わうんだよ」って思ってるんですけども。
何か、そういう意識で作ってるから、やっぱり感動的な作品にならなくて、文句を言われてしまいました。
なので僕は、いまだにそのカルーセル・オブ・プログレスに、何とか追いつこうとしているんですよ。
だから、この岡田斗司夫のニコ生ゼミっていうのは、僕にとって、アメリカABCテレビでウォルト・ディズニーがやっていた『ディズニーランド』って番組のリメイクなんです。
リメイクっていうか、何とか近づけないかと。
これは『ディズニーランド』のVHSテープが入っていた箱にも描かれているんですけども。
トゥモローランド。
アドベンチャーランド。
フロンティアランド。
ファンタジーランド。
このような四つの世界をディズニーが紹介するって話でですね、毎回毎回30分番組で お話が進むんです。
それで僕も、まぁ、同じようにですね。
アニメとか漫画の世界。
映画やSFの世界。
海賊とか人類学とか、まぁ一応、心理学とかの学問の世界ですね。
あと中世キリスト教とか、シカゴのギャングとかの、歴史の世界っていう。
そんな四つの世界とかを、何かウォルトと同じような感じで説明して、ウォルト・ディズニーと同じような書斎っぽいセットを組んでですね(笑)。
出来るだけ楽しい雰囲気でやろうと思って、これを一人で考えているんですね。
よく「ブレインとか作家は いないんですか?」って聞かれるんですけども、こんな内容はブレインや作家がいたら出来ないんですよ。
まぁ、たった一人で作ってるんですけども。
このニコ生ゼミの番組自体が、僕にとっては今だに諦められない「このままではウォルト・ディズニーに負けてしまう!」っていう挑戦なんですよ(笑)。
で、世の中 面白いもので、同じように「ディズニーに勝ちたい」と考えているヤツが他にもいます。
現在、絶賛 炎上中のキングコングの西野君ですね。
キングコングの西野君がですね、「美術館を作る。 ついては寄付をよこせ」って叫んで大炎上しているんですけども(笑)。
実はアイツもディズニーがやりたいと。
これはブログの一部なんですけども。
「僕が作る『えんとつ町のぺプル美術館』は “美術館” とは名ばかりで、実際に “えんとつ町” を建設して、その間をローラーの滑り台で滑走する超体験型の美術館にするつもりだ。」と。
こんなもん、要するに、やろうとしているのは『カリブ海の海賊』ですよ(笑)。
これはミニチュアや実物大で “えんとつ町” を作って。
まぁ、実物大は一部でしょうね。
それで奥の方はミニチュアで “えんとつ町” を作って、その間をダークライド方式でサーッと走ると。
だから、どちらかというとユニバーサル・スタジオ・ジャパンの『スパイダーマン』に近いようなものを考えているんだと思います。
でも、僕が今やっている事が1950年代のウォルト・ディズニーの番組を何とか超えようとしているのと同じようにですね。
この形式でやっても、ウォルト・ディズニーが1960年代の前半で作ったものを再現するだけにしかならないんですよ。
西野君には申し訳ないんだけどもね。