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「【『ジュラシック・パーク』と恐竜 2 】ジュラシック・パークがついた嘘」
この人は、1995年に『ジュマンジ』という映画を監督した時に、リアルな動物をCGで再現することに成功したんですよね。
それを見事に成功させた腕を見込まれて、『ジュラシック・パークⅢ』を作ることになりました。
あとは『キャプテン・アメリカ』の第1作の監督もやってます。
だから、渋いSF映画を作るのがすごく上手いんです。
あとは『アイアン・ジャイアント』のロボットのデザイナーでもあります。
そんな、すごい才能のある監督です。
まあ、次回作として『ナルニア国物語』の最新作を作ったら、もう監督を引退して、その後は田舎で犬と暮らすという、押井守みたいなことを言ってる人なんですけども。
こういう、四足の肉食恐竜って、すごく珍しいんですけども。
このスピノサウルスを選んだ理由というのがなかなか良くて。
ティラノサウルスって、だいたい10mくらいなんですけど、スピノサウルスは15mくらいあったんです。
なので、第2次大戦でイギリス軍の空爆にあって、ミュンヘン博物館ごと跡も欠片もなくなってしまいます。
実は、スピノサウルスの化石は、当時、ミュンヘン博物館にしかなかったので、地球上から証拠が一切 消えちゃったんですよね。
つまり、「存在は確認されているけれど、証拠となる化石は消滅している」ということで、『ジュラシック・パークⅢ』でスピノサウルスを扱うに当って、かなり好きにできたんですよ。
まあ、これが公開された当時、みんな 「なんか違うな」 とは思ったんですけども、化石も何も残っていないから、誰も文句が言えなかったんですよ。
では、何が嘘かと言うと「歯が剥き出し」なんですよね。
歯が剥き出しになっている復元図は、だいたい嘘だと思ってください。
これね、カッコいいからこうしちゃうんですよ。
ちゃんと “唇” というのがありますよね?
この唇というのは何のために付いているのかというと、「唾液がダラダラと外へ溢れないため」に付いてるんですよ。
人間が1日生きるのに必要な水分量が1.5Lですから、もし唇がなかったら、人間というのは摂取した水分を延々と垂れ流していくことになり、生き残れなくなってしまいます。
ティラノサウルスに関してもそれは同じはずなのに、ところが、ほとんどの復元図では、こう、牙を剥き出しにしちゃうんです。
なぜかというと、ワニが牙を剥き出しにしているからです。
でも、ワニというのは基本的に水中にいる動物だから、牙を剥き出しにしててもいいんですよ。
いつでも水分を補給できるから。
ところが、地上にいる爬虫類というのは歯を剥き出しにしていてはいけない。
そんなことはみんな知っているんですけど、この方がカッコいいから剥き出しにしちゃうんです。
そんなスピードは出せないんです。
つまり、人間が全力疾走するよりも、ちょっと遅いくらいの速度です。
正直言うと、この時代にティラノサウルスが食べていたであろう、トリケラトプスみたいな草食恐竜って、軒並みティラノサウルスよりもメチャクチャ速いんですよ。
なので、走って追いかけたとしても、絶対に追いつけないんですね。
つまり、物を立体視することが出来るんです。
そして、このフィギュアでは強そうに見せるために鼻梁の幅を広く作っているんですけど、実際はこの幅がもっと狭くて、脳がわりと巨大なんです。
脳が巨大で立体視も出来るということで、「かなり頭が良かったのではないのか?」 というのが、現代のティラノサウルス像なんです。
頭脳戦ですね、本当に。
まあ、戦っていたこと自体は本当なんですけども。
でも、映画なんかでよくあるように、お互い正面から対峙した場合、ほぼティラノには勝ち目がないんですよ。
というのも、トリケラトプスのような四足の草食恐竜って、さっきも言ったように、移動がメチャクチャ速いんですよ。
なので、正面からぶつかると、ほぼ確実に角で突き刺されて負けてしまうんですね。
でも、「ティラノサウルスがトリケラトプスを食った」という化石はいくらでも残っているんです。
では、どうやってティラノがトリケラトプスに勝つのかというと、さっきも言ったように、森の茂みの中からひょっこり出てきて、いきなり首の付根に噛み付くわけですね。
ティラノサウルスって、トリケラトプスの首の付根にある靭帯とか柔らかい腱が、もう大好きなんですよ。
その後、鼻の頭の辺りをガッと噛んで、ものすごい力で首を引きちぎります。
そして、その後で、胴体の方には見向きもせずに、ちぎり取った首の内側をガツガツと美味しく食べるということをよくやっていたみたいです。
この、首が引きちぎられたトリケラトプスの化石というのが、結構、見つかっているんですよね。
まあ、でも、こんな凄惨なシーンは、しばらくは映画ではやらないだろうなと思います(笑)。
まあ、全く音を出さなかったかというと「ブオォー」みたいな音は出したかもわからないんですけど。
少なくとも「ギャオォー!」なんて吠えることは、声帯自体がないのでありません。
あまりにも役に立ちそうもないから、昔は「この前足は、交尾をする時にメスが逃げないように捕まえるためなんじゃないか?」なんて言われてたんですよ。
でも、研究が進むに連れて、この前足についている爪が、かなり頑丈であることがわかってきた。
なので、今度は「これは、獲物の腹をナイフのように引き裂くためにあるんだ」と言われるようになりました。
ところが、獲物の腹を引き裂くにしては短すぎるんですよね。
これじゃあ、獲物には届かないだろう、と。
ティラノサウルスって夜、寝る時に腹ばいで寝るんですけども、「その姿勢から体を起こす時に、よっこらしょっと、体を支えるためだけに使ったらしい」というのが分かってきています。
つまり、「よっこらしょ」 と起き上がる時に、体重が前足の部分に掛かる。
この時にタイミングを間違えたから、鎖骨がボキボキ折れてしまった、ということです。
まあ、鎖骨に限らず、ティラノサウルスの化石というのは、だいたい、どこかを骨折しているんですよ。
こういう所からも、もう生物としては限界のサイズだったというのがわかりますね。
やっぱり、恐竜学者の人って “趣味人” が多いからなんですよ。
ここが、恐竜学というのが他の学問と一番違うところだと思うんですけども。
そんなふうに、子供の頃に憧れて入ってきてるもんだから、復元図を描く時も、やっぱり、ちょっとでもカッコよくしてしまうし、ちょっとでも 「みなさん、カッコいいでしょう?」 って感じにしちゃうそうなんですよね。
なんか、ここらへんの恐竜の嘘に関しては、「嘘をつく」 というよりは、「愛するあまり、ちょっと盛ってしまう」 みたいなところがあると思ってください。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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