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オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン准教授らは、2013年に発表した「雇用の未来」という論文で、「10〜20年以内に(アメリカの)労働人口の約47%が機械に代替されるリスクがある」と主張しました。
このあたりから、「人工知能時代にも生き残る職業」だとか、「これからの時代に必要とされるスキル」なんて記事や書籍がやたら出てくるようになりました。
「自動化されない非定型的な仕事」とか、「クリエイティブな仕事」とか、「人間相手のコミュニケーションが必要な仕事」とか、そういう仕事は人工知能時代にも生き残るし、新しい仕事も次々と生まれる、だから心配ないんだという人もいます。
もちろん、人口のうち5%くらいの人は、何をやらせてもうまくやれるでしょう。
恐ろしく知能が高いとか、人を使うのがうまいとか、容姿や振る舞いがすごく魅力的だとか、そんな人はどんな時代でも好きなことをやって楽しく生きていけますし、仕事だっていくらでもあります。
でも、人口の9割以上は、可でもなく不可でもない普通の人たちです。
そういう普通の人たちは、クリエイティブ能力やコミュニケーション能力が少々あったところで、仕事がなくなってもまったく不思議ではありません。
例えば、学校の先生。同論文の「雇用の未来」だと、小学校の先生は機械に置き換えられにくい職業として挙げられています。
だけど、子供たちを1箇所に集めて、先生と言われる人たちが授業を行う、現在の教育システムがいつまでも続くと僕には思えないんです。
30年後には、確実にそのシステムは崩壊しているはずです。
人口減少が進んで、限界集落も増えてきている日本で、公教育を維持するために、政府がお金を出すとは考えにくい。
どのタイミングかはわかりませんが、ネット教育が主流になるでしょう。
こう言うと、「教育では、友達を作ったり、人間とのコミュニケーションが不可欠なんだ」と言いたくなるかもしれません。だけど、30年もあったら社会はがらりと変わってしまうものです。
今から10年後の2028年くらいにはその流れが誰の目にもはっきり見えるようになります。
運がいい人は、やらなくてもいい仕事を、必要な仕事であるかのようなフリをして続けようとはするでしょうけど。
これから起こるのは、「頭の悪いAI」と「頭のいい人間」の競争です。
頭の悪いAIは、技術の進歩によってどんどん賢くなっていく。
一昔前は音声認識なんて使い物になりませんでしたが、AI技術を活用した今のアプリなら、旅先の同時通訳くらい余裕でこなせるようになっています。
最先端のAIにしかできないようなことも、2年、3年すれば無料版のアプリでできるようになるんです。
というか、どんどんレベルが下がっていきます。
昔ならほとんどの人は毎日単純労働をしていましたが、今だと単純労働に耐えられる人は全体の2割くらいしかいないんじゃないでしょうか。
たいていの人は、より賢くなったわけではなくて、たんに単純労働に耐えられなくなっただけ。
僕にしても、もうスマホなしだと簡単な漢字すら書くことができません。
「今後、AIはどれくらい自然言語を解釈できるようになるのだろう?」という問いは、「今後、僕らはどれくらい漢字が書けなくなるのだろう?」という問いとセットになっている。
AIが進歩すればするほど、僕らはどんどん無能になっていく。
愚かな人間から順番に、賢い機械に仕事を奪われていく。
トップレベルの優秀な人間は、将来的にもAIより有能で居続けるかもしれませんが、彼らだって毎年2倍や3倍賢くなっていくわけではありません。
マラソンに喩えるなら、トップ集団にいるランナーのタイムがそんなに変わらない一方で、平均的なタイムはどんどん悪くなっていく。
後ろからは、AIのランナーが着実にタイムを縮めて追いついてくる。
その格差とは、所得や教育というより、未来に対する感度によって生じる「未来格差」です。
未来がどうなるのかを常に意識し、自分の行動に反映できるかどうか。
今安定しているからといって、何となく大企業に入って将来性のない仕事に就き、そこで20年、30年とキャリアを重ねてもしょうがない。
そんな勝ちの薄い目に一点掛けするより、いくつもの多様な仕事に関わって、収入源を複数持っていた方が、よほどリスク分散になります。
冒頭でオズボーン准教授の「雇用の未来」を取り上げましたが、あの中の「将来残る可能性の高い仕事リスト」から1つだけ仕事を選ぼうとしているような人は、これからかなり追い込まれていくことになるでしょう。
水が欲しければ、その辺から好きなだけ汲み上げて喉を潤うるおすことができました。
でも、これからはそうはいきません。
水はすごい勢いで干上がっているんです。
「どの水たまりが最後まで残りますか?」なんて、のんきなことを聞いている場合じゃない。
そんなこと誰にもわかるわけがないんですから。
足をできるだけたくさん生やし、1箇所だけじゃなく、何箇所もの水たまりに同時に足を浸けるようにしないといけません。
そうしないと、1つの水たまりが消えただけで死んでしまいます。
生き延びるため、僕たちは未来がどんな方向に向かっているのかを知らなければなりません。
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