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「大論争を読んだガンダムの元ネタ『宇宙の戦士』」
1959年ですね。
昭和34年。
『ALWAYS 三丁目の夕日』の1年後に書いた作品です。
その頃にしたら先駆的な作品ですね。
この表紙に書いてあるのがパワードスーツ。
人間が着て、中の動きが何十倍にも増幅されるスーツ。
すべて人間の動きを何倍にも拡大することができる。
聴力、耳の力にしても視力にしても、何倍にも拡大された。
これは最近のSF映画では当たり前のように使われているんですけど、それを初めて小説の中で体系的に書いた、「兵器として集団運用したら戦争はどんなふうになるのか?」ということを書いたSF小説なんですね。
『宇宙の戦士』『スターシップ・トゥルーパーズ』というのが原題なんですけど、宇宙の歩兵っていうんでしょうね、トゥルーパーズ。
アメリカが核兵器を持つことに関して、一番盛り上がったのが1958年『宇宙の戦士』の執筆当時ですね。
アイゼンハワー大統領に色んな団体、学校から婦人団体から「核兵器を放棄しましょう」とか「使うのやめましょう」という署名が殺到してた時代でもあります。
アメリカ自体が、戦争という行為に疲れてた時代なんでしょうね。
朝鮮戦争もあり、第一次大戦でヨーロッパが「もう戦争は嫌だ」、と思ったのと同時に、第二次大戦でアメリカは勝ったんですけど、国が経済的にも すごい疲弊して若い人の労働力が奪われると。
もう戦争はこりごりだと。
やっと核兵器なりなんなりをもって、地球最後の戦争を終わらせたという実感があったんで、反戦気分もかなりあった時代です。
これは子供向けの小説なんです。
“ジュブナイル” っていわれる、青少年向けって言うんですけど、どちらかというと中学生高校生を対象にしたハインラインの一連の作品のひとつです。
相手に軍隊へ行くことの正しさ、戦争をする正しさを語ってるんですね。
ラノベの元祖みたいなものですね。
『宇宙の戦士』のかなり最初の部分。
主人公がもうすぐ高校を卒業する。
その中で道徳哲学の時間というのがある。
あまり聞いたことがない言葉ですけど、これはもちろんハインラインの造語です。
道徳哲学という授業があって、それはいっさいテストとかない。
聴いてるだけで いい授業。
その道徳哲学の授業は元軍人の先生が来て、子供たち学生たちに怖い考えというのを教える。
たとえば公民権に関して読み聞かせたりとか、憲法の権利に関して読み聞かせたりとか。
そういうような、わりと過激な授業をするんですけど、最後の授業で学生たちに自由に質問をさせるんですね。
これよく聞く考えですよね。
基本的に今の現代の日本でも、反戦の話とか自衛隊の話とかすると、「暴力では最終的に何も解決しない」というのは、すごくよく聞く考え方です。
「解決する」とは言ってないんですね。
最終的な決着というのは。
「歴史上最も多くのことを決着づけてきた。 これに反対するっていうのは、最悪の希望的観測にすぎない。 この事実から目を背けようとする民族、種族は、その命と自由という高い代償を支払わされる」と言いました。
「暴力でしか解決しない」とは言ってないんですね。
「暴力によって、歴史上だいたいのことは決着がついてきた」と。
「この事から目を背けるな」と。
「暴力で何も解決しない」というのはそのとおりなんですけど、それを言いだしたら話し合いでも何も解決しないし、金でも解決しない。
だから勝者と敗者というのがあって、敗者は恨みを残すと。
それはもう一回繰り返しますけど、話し合いであっても金であっても合理的な解決法であっても、成田闘争とかを見てもわかるとおり、どんなに話し合いをつくそうとも、どうしようとも、解決はしないんですよね。
ただ決着があるだけ。
で、暴力が歴史上最も多くのことを決着させてきた。
そのことから目を背けてはいけないという授業。
ここまでは別に、暴力主義でもなんでもないんですけど、ハインラインがこれを書いた1959年のアメリカでは、これを学校の先生が生徒に言ってるってだけで、すごいスキャンダラスな内容だったんですね。
つまりこれって非武装中立とか非武装による平和、軍を捨てるっていうことを望むのであれば、暴力による決着っていうのが最も単純で最もありがちなんだから、非暴力による決着を望むのならば、暴力によるより何倍も ものすごい手間やコストや時間がかかるっていうことを覚悟しておけ、っていう事なんですね。
そういう お話 にもなるんですよ。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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