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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『平成狸合戦ぽんぽこ』解説 2 】 宮崎駿が試写会で涙した本当の理由」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『平成狸合戦ぽんぽこ』解説 2 】 宮崎駿が試写会で涙した本当の理由」

2019-04-17 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/04/17
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    今回は、ニコ生ゼミ04月07日(#276)から、ハイライトをお届けいたします。

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     【『平成狸合戦ぽんぽこ』解説 2 】 宮崎駿が試写会で涙した本当の理由

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     前回の最後にちょっと言ったんだけど、押井守がこんなふうに批判してるんだよ。
     
     「なぜ、『平成狸合戦ぽんぽこ』は自然保護がテーマなのに、自然を美しく描かないのか?」って。

     この理由も、今の話に照らし合わせてみると分かるんだ。


     「自然を過剰に美しく描く」というのは、高畑に言わせれば “人工甘味料” なんだよね。

     ちゃんと描いたら、それだけで自然というのは美しいし、それを美しいとわからないなら、そいつの見方が悪いということになるから。

     宮崎駿がやってるみたいな、たとえば、木や苔の上を伝う雫を描いて、それでもって美しく見せたり、もしくはシシ神が地面を踏んだらそこから花が咲く。「それが美しいと言っても、そんなシーン、実際にないじゃん」と。

     それは “人口の美しさ” であって、自然の美しさではない。

     それで自然を美しいと思った子供が、自然に行ったらどう思うのか?

     「ジブリみたいじゃないじゃん。もっとジブリみたいなところはないの? もっとジブリみたいな綺麗なところはないの?」と、世界の絶景みたいなところに行って、「うわー、まるでジブリみたいだね!」と喜ぶようになってしまう。

     果たしてこれが「自然は美しい」と言っていることになるのか、と。

     そんなふうに、もう本当に本質的な大批判をするんだ。


     しょうがないんだよ。

     高畑勲というのは、別に宮崎駿だけじゃなく、自分が以前に作った物をも全否定して、「常に “新しいもの” を作りたい」と考える作家だから。

     それに対して、宮崎駿というのは、常に自分がやってきたことを半分否定しながらも、「もっと “すごいもの” を作ろう!」と、上に乗っける型の作家だから、やっぱり違うんだよね。


     ちゃんと描けば自然は美しいんだから、普通に描くだけでいい。

     それをセルの動きや水滴でもって、もっと美しく見せようというのは、かえって自然本来の美しさを幻滅させてしまう。

     「まるでジブリの世界みたいに美しい」というのは、決して褒め言葉ではないよ。

     「我々が大衆に嘘の美しさというのを与えすぎたから、みんなジブリとの比較でしか自然を語れなくなってしまった」ということになるんだ。


     共産主義者的に言えば「宗教はアヘン」なんだけど、今や「ファンタジーはアヘンであって、今、アニメを作る者は、そんなアヘン中毒から観客を救い出すべきだ」というふうに高畑さんは言っている。

     もちろん、これは、ジブリのお財布を支えてきた、ジブリをちゃんと稼がせて、高畑さんに飯を食わせ、作品を作らせてあげていた宮崎駿の仕事を全否定してるようなものなんだけども(笑)。

    ・・・

     ……ところがですね。

     なぜ宮崎駿が泣いたのかというと、僕が思うに「この全否定が嬉しかったから」なんだよ。

     「やっと高畑さんが戻って来てくれた!」と。


     『紅の豚』を作ってしまった後、宮崎駿はマルクス主義者としては「そういうのはな、人間同士でやんな。俺はファンタジーで構わないよ」なんて、ちょっとキザに逃げてたところがあるんだよね。

     しかし、そんなふうに「そういうのは人間同士でやんな」とポルコ・ロッソのカッコいいセリフで逃げようとした宮崎駿を、高畑勲は「おい、ちょっ待てよ!」と、キムタクみたいに呼び止めたわけだよ(笑)。


     「俺たちが真剣にアニメを作ったって、所詮、客にとってはデートや家族で楽しむことしかしない。みんな心が綺麗になるファンタジーばっかり見たがる。イコールみんな無限にアヘンを欲しがる。……それでも俺とお前は、ちゃんとしたアニメを作らないとダメだろ!?」と、説教をしてくれたわけだよね。

     だからもう、宮崎駿にしてみたら「自分のことなんて怒ってもくれない」と思っていた高畑勲が、こんなにも正面切って全否定してくれて、きちんと説教してくれたわけだ。

     だから、宮崎駿は、おいおい泣いちゃったと、僕はそうだと思ってるんだけども。


     だからね、心を入れ替えて『もののけ姫』が作れるわけだよ。

     でなかったら、ポルコ・ロッソを作った後に『もののけ姫』には行かないよ。

     あれは、本当に、高畑勲に大説教されて、ちょっと心を入れ替えたから出来たものなんだよ。


     でも、鈴木敏夫って、そこら辺の宮崎駿の心の機微というのが案外わからない人だから、『ジブリの教科書』でこんなふうに言ってるんだよ。

    ――――――

     あの狸の登場人物達は、実は東映動画の歴史でもあるんですよ。

     それぞれのキャラクターが誰かということがわかるように作ってあるんですよ。

     あのなかに出てきた権太、あれは宮さんだよね。

     特攻隊で死んじゃうんですけどね。で、正吉は自分だしね。


     映画が完成した日のことは、忘れもしませんけども、高畑さんと宮さんとぼくで並んで観てたら、最初から最後まで泣いてたのは宮さんですよ。

     だって、自分たちの青春が描かれてたから。

     高畑さんはそういうの得意ですよね。

    ――――――

     いや、あのね、それもあったかもわからないけどね、それだけでは宮崎駿は泣かないんだよ。

    ・・・

     『平成狸合戦ぽんぽこ』っていうのは、ファンタジーを否定した珍しい作品なんだ。

     『ブレードランナー』を見て「いつかこんな未来が来る」って思う人はいるんだ。

     つまり『ブレードランナー』というのは、ファンタジーを“信じさせる”方向に出来ているんだけど。


     でも、『平成狸合戦ぽんぽこ』を見て、「昔は狸って喋って化けたんだよ」とか、「実は、隠してるだけで、人間の中にも狸が住んでるんだよ」なんて言い出す人はいない。

     つまり『ぽんぽこ』というのは、ファンタジーとして成立してないんだ。

     あの中に描かれている世界というのは僕らにとって「あるべきもの」とか「いいもの」、「憧れるもの」に入らない。どちらかというと、「変なもの」になっているんだよね。


     そんな、どちらも「人間でないものが、人間に憧れて、人間を憎んで、人間に近づき過ぎた故に滅ぼされる」という姿を描いたコインの裏表。

     『ブレードランナー』と『平成狸合戦ぽんぽこ』は、そんな作品じゃないかというふうに思います。

     今日は「『ぽんぽこ』って、実は『ブレードランナー』なんだぜ」ということだけ、覚えて帰ってくれたら結構です(笑)。

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