岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/07/29
今日は、2019/07/14配信の岡田斗司夫ゼミ「『進撃の巨人』特集〜実在した巨人・考古学スキャンダルと「ウォール・ローゼから外を見ると何が見えるのか問題」」からハイライトをお届けします。
【画像】スタジオから
あと、今日は、去年の映像を見せたいんですけど。
金曜ロードショーで、先週、『未来のミライ』をやったので、その映像を見ていただきたいと思います。
『未来のミライ』の公開直後、2018年7月22日、岡田斗司夫は『未来のミライ』をどう評価していたか?
7分くらいの映像ですので、ちょっと見てみてください。
それではよろしくお願いします。
(録画映像開始)
噂通りというか、『未来のミライ』という作品は、僕にとってはあんまり、映画館で見ている時には面白くなかったんですね。
よく「育児経験をしていない人が見てもわからない。子育てをしたことがある人間が見れば面白い」とか言われているんですけど、そんなことも全然ないんですよね。僕は育児経験者ですから。
そういう意味では、エピソードとか表現が、あまりにもありきたりというか凡庸なんですよ。
例えば、「下の子が生まれると上の子供が赤ちゃんぽくなっちゃう」とか、「父親の育児は実は役に立たない」とか。
「こんなネタでは、育児雑誌でマンガを連載しても持たないよ」みたいな、雑談レベルの話なんです。
だけど、もう、作画はメチャクチャいいんですよ。
なんか、「メッチャ良い声の人が普通のことを話している感じ」とでもいうんですかね?
「メッチャ良い声だから聞いてられるんですけど、聞いても聞いても普通のことしか話してくれない」というのが、劇場で見た時の正直な感想だったんです。
だから、すごくビックリしたんですよ。
細田アニメって、もうちょっと何かあるような感じがしてたんですけど、どこにも新しさもカッコよさもなかったんです。
ただ、見終わってから半日くらい経って「ああこういうことか」って、なにがやりたかったのかが、ちょっとわかったような気がするんです。
この部分はネタバレになりますので、こいつを出しておきますね。
(ネタバレ警報のプラモデルを出す)
この『未来のミライ』というのは、細田版の『千と千尋の神隠し』なんですよ。
『千と千尋の神隠し』というのは、「千尋という女の子が異世界に行って、いろんな人のしがらみとか呪いとかを解除してあげる」という話なんです。主人公が呪いにかかったようなていなんですけども、実は、他人にかけられたいろんな呪いを解除してあげたことで、最後には親の呪いも解除して帰っていくというような話なんですね。
ポイントがあるとすると、「千尋が異世界に行くことになった理由もルールもない」というところなんですよ。迷ってたらとりあえず着いちゃったという。これ、今回の『未来のミライ』と似てるんです。
『未来のミライ』というのは、この『千と千尋の神隠し』を逆変換した作品なんですね。
例えば、「異世界に行く」のではなく、「向こうの世界が来る」。あとは、『千と千尋』の舞台となる湯屋は縦にすごく長い建物なんですけど、『未来のミライ』では、斜めに階段がある高さのある構造の個人住宅として、ちょっと置き換えてます。
何より、『未来のミライ』というのは、「血縁関係にある人達が過去や未来からやって来て、主人公の男の子と交流したり話し合うことによって呪いとかコンプレックスから解放される」という話なんですね。
そういうふうに見ると、何が作りたかったのかというのがわかりやすいんです。
例えば、ひいひいじいちゃんという一番イケメンのヤツがいるんですけど、こいつがオートバイを修理しているところに、くんちゃんという主人公の男の子が実体化するんです。
ひいひいじいちゃんには「戦争で足を痛めた」というコンプレックスがあったんですけど、この男の子を馬とかバイクに乗せてガーッと走る。すると、くんちゃんが「お父さん」って言うんですね。これは、くんちゃんの勘違いなんですけど、そう言われた時、ひいひいじいちゃんは絶妙な顔をするんです。
これ、どういうことかというと、くんちゃんから「お父さん」と言ってもらったことによって、ようやっと「自分もやっぱり、こんなふうにお父さんと呼んでほしいんだ」と気がついたということなんです。
そして、その結果「自分は足が不自由だから、もう一生、結婚は出来ない」というコンプレックスがあったところから、「あ、俺、本当は子供が欲しいんだ。じゃあ、気になっていたあの女の子に、思い切ってプロポーズしよう」ということになる。
たぶん、くんちゃんが現れなければ、あそこで血筋は途絶えていたわけですね。
あとは、くんちゃんのお母さんが「本当は弟と仲が良かったよ」と説明するシーンがあるんですけど、劇中には仲が良かったようなシーンが全然ないんですね。
ということは、「仲が良かったと思いたかった」というふうに解釈することもできる。現にお母さんの家に行った時にも、弟は全然出てこないんですよ。
たぶん、お母さんには「もっと弟と思い切り遊びたかった」というコンプレックスがあったんですよね。
このコンプレックスという言葉は、ここでは劣等感だけではなくて、いろんな思いがこんがらがって、ほどけなくなっているという、心理学的な使い方でコンプレックスという言葉を使ってますけども。そんなお母さんのコンプレックスを解放してあげているんです。
他にも、高校生になった自分自身も出てくるんです。
たぶん、家出みたいなことを考えて、駅にずっと座っていて、電車が来た。その時に幼い自分が電車に乗ってしまう。
結果、「もう、こんな家は出ていこう。こんな町を離れよう」と思っていた高校生の自分は、東京駅に行ってくれることになって、そこで自分探しをすることになった。
これによって、高校生になったくんちゃんは、そんなことをしなくて済むというわけですね。
星野源が声優を演じた父親だけは、ちょっと複雑なんですよ。
お父さんは、「子供の頃、自転車に乗れず諦める」ということになっていたんですけど、大人になってから諦めずに自転車に乗る自分の息子の頑張りを見て、「過去の自分の、自転車に乗れなかった。ダメだったんだという、あの悩みには意味があったんだ。今、自分の息子を見ることで癒やされているんだ」と気がつく。
つまり、いろんな出来事の交差点にこの主人公の男の子はいるんですね。
こういうふうに作っていると、「この映画は『千と千尋の神隠し』ですよ」っていうのがバレないんですよ。
でも、バレないんだけど、面白くはないんですよね(笑)。
じゃあ、これはもう外しますね。
(ネタバレ警報のプラモデルをどける)
まあ、いろいろ話したんですけども。
この「バレなきゃいい」っていう細田さんの作り方が……何と言えばいいんだろうな? そこそこ難しいことをやろうとしてるんですけども、エピソードが弱いんじゃないかと思うんですよね。
こういう言い方も失礼ですけども、たぶん、もうちょっと素直に「何が元ネタで、実はどの作品に思い入れがあって、俺だったらそれをこう作るんだ!」っていうことを言い切っちゃった方が、もうちょっと良かったような気がするんですけどね。
(録画映像終了)
はい、見ていただきました。
『未来のミライ』について、映画をパッと見た時の感想を、出来るだけ早く言ったのが、今の映像なんですけど。
まあ、「ハッキリ言うなあ」と、我ながら思います。「この頃の俺には怖いものがなかったんだな」というか(笑)。
と言いつつ、ついさっきも『エヴァ』の劇場版の予告について、色々言っちゃったんですけど。
自分のFacebookを見てたら……Facebookって、やっぱり直接の知り合いが多いんですよ。そういう直接の知り合いの『エヴァ』の予告編に関する評を見たら、もう、みんな、メチャクチャ褒めてるんですよね(笑)。
なんかもう、この、胃の辺りが苦しくて。「俺はこんなふうには褒めれない」と思うから、Facebookでは絶対に沈黙を守るようにして、直の知り合いには聞かれないようにということで、ここで話したんですけど。
今回、YouTubeライブのコメントまで見ているんですけど。こう、3つのコメントを見てると、みんななかなか『未来のミライ』に関して冷たくて(笑)。
「ああ、やっぱり、この番組を見るような人は、みんな僕と同じように、軽いサイコパス気味の人が多いのかな?」と、失礼ながら思ったりしています。
ちなみに、映像の中に映っていた巨大なロボットのオモチャは、アメリカ製の、巨大なリモコンで動くロボットだったんですけど。
さて、こう語った翌週、「いや、でもこの作品は、見る必要ないとまで言うこともないな」ということで、「じゃあ、どの部分が面白いのか? どの部分が評価できるのか?」と、もう少し話した映像があります。
次の映像は10分くらいありますので、さっき「30分毎にトイレタイムを入れる」って言いましたけど、既に見たことがある人は遠慮なくトイレに行ってください。この映像が終わったら、また30分タイマー作動させますので。
では、「ミライちゃんのお家はお金持ちなんだよ」という話を、去年の7月29日「アニメ回 夏の重大ニュース」の回より、お届けします。
それでは、始めてください。
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