岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/09/06
今日は、2019/08/18配信の岡田斗司夫ゼミ「終戦記念『シン・ゴジラ』特集、「ゴジラと核兵器」全編無料公開!」からハイライトをお届けします。
『シン・ウルトラマン』のクライマックス予想
はい、お疲れさまでした。長かったですね(笑)。
まあまあ、普段は無料版と限定版と、こんなふうに内容がピッタリくっついて、ギッチリあるわけじゃなくて、無料版の方がグタグタで限定版の方がちゃんとしている場合もあるし、逆に、最近は無料版の方でレジュメを作ってる時に力尽きて、限定版の方がグタグタになる時もあるんですけども。
だいたいはこんな感じで、ちょっと言いにくい話とか、ちょっと難しい話、あとは「この話題を一般公開するのはマズいかな?」という話は、限定版の方に回していると思ってください。
・・・
では、ここからは、お待たせしました、『シン・ウルトラマン』の話です。
『シン・ウルトラマン』が正式に発表されました。正直「やっと認めやがったな」という感じなんですけど。
では、なぜ、ここで『シン・ウルトラマン』なのかというと、実は『ウルトラマン』の海外版の制作権というのは中国に奪われてしまっているので、円谷プロとしては、まあ、困っていると。
あとは、『エヴァンゲリオン』の新劇場版とか、そういうシリーズ以外に安定的な収入がない庵野秀明の会社スタジオカラーのお家事情というのがあるんですよ。
そこら辺は、2019年の3月10日版のニコ生の無料部分で話していますので、その辺に興味のある人は、2019年3月10日版のニコ生ゼミを見てください。だいたい、頭から12分30秒くらいのところで、「なぜ、今『シン・ウルトラマン』なのか?」について、今言った、円谷プロとスタジオカラーのお家事情の2つを説明していますので。
今回の『シン・ウルトラマン』に関して、実は僕は、キャスティングについては、あんまり興味がないんですよ。「誰が出るのか?」というのは、個人的に興味なくて。
僕が見ているポイントは、どちらかと言うと、スタジオカラーが出した声明文ですね。
ここでのポイントは2つです。
まずは1つ目。「樋口真嗣監督率いる樋口組に庵野秀明が脚本・企画として参加」について。つまり、庵野秀明は監督じゃないんですよ。監督はあくまでも樋口真嗣であって、庵野秀明は企画・脚本で参加するだけ……というふうに言ってるわけです。
そして2つ目。「脚本の検討稿は2019年2月5日に脱稿済み」というところ。つまり、もう完成している、と。そして「庵野は『シン・エヴァンゲリオン』劇場版の完成後、樋口組に本格的に合流する予定」と。
これが、公式の発表なんですよ。このステートメントだけ見てると、『シン・ウルトラマン』って、まるで樋口映画のように見えるんですね。「庵野君は、あくまで、ちょっと手伝うだけ」みたいに見えるんですけど。
いや、でも、違う。
だって、「脚本は2019年2月に出来ている」んだったら、後で合流する必要なんてないわけですよ。本当に「企画・脚本としての参加のみ」なんだったら、もう、庵野君の仕事は終わっているわけですよね。
つまり、これは「『シン・エヴァンゲリオン』公開までは樋口班に下ごしらえをコツコツやらせておいて、『エヴァ』が完成してから、一気に撮影を進める」というやり方なんじゃないかと思います。
それと同時に、この声明は「『エヴァ』をやらずに、あんなことばっかりやりやがって!」という、ファンの方々からのキツーいメッセージが、マジでボディブローのように効いてるんだろうな、と(笑)。
たぶんね、エゴサーチをしてるんですよ。やっぱりみんな、エゴサーチしてるから、案外、そういった声が腹にドンドン効いてるんだと思います。
なので、その作家の作品を楽しみたいなら、あまりそういうことをバンバン言うのはやめた方がいいんじゃないかなと思うんですけども。
・・・
今、報道でも「庵野秀明は学生時代にも『ウルトラマン』を題材にした実写映画を撮っていて~」みたいに、『帰ってきたウルトラマン』という自主制作映画の、映像の一部であったり、写真であったりがよく紹介されています。
ご存知の通り、庵野秀明が学生時代に作ったその映画、『帰ってきたウルトラマン』という自主映画の脚本を描いたのは僕、岡田斗司夫なんですね。
この時、庵野秀明と「絶対にやろう」と言っていたのが、クライマックスを3つ作るということだったんです。
1つ目のクライマックスは、「映画の中で核兵器を使用するという」シチュエーション。この、核兵器を使用するかどうかという決断を、第1のすごく大きい山場として持ってくるということでした。
絵面的な見せ場は他にもあるんですよ。「怪獣が登場する」とか。でも、そうじゃなくて、ドラマ的な見せ場はまず核兵器の使用を決断するということだったんですね。
で、2つ目が、「ウルトラマンと言いながらも、庵野秀明が素顔のままでビルを壊してバーンと出て来る」ということ。
これも、絵面的なクライマックスであると同時に、ドラマ的なクライマックスの1つでもあったんですよ。
というのは、ウルトラマンと言いながら、どう見ても人間の顔をしたヤツが出てきた時に、見ているみんなは、一瞬だけ、もう、冷めるわけですよね。「真面目に映画を作ってると思ってたけど、ここで笑かすつもりなのか?」ってなるんですよ。
だけど、これはもう、絶対に、クライマックスでやると決めていたんです。
そして、3番目のクライマックスは、「最後、怪獣と戦っているうちに、見ている人間から『これは庵野秀明という人間の顔そのままだ』という気持ちを、徐々に徐々に忘れさせること」。
いつの間にか、本物のウルトラマンを見ている気持ちにさせるということが、第3のドラマ的なクライマックスだ、と。
これを、自主映画の時に徹底的にやったんですね。
この内、「核兵器を出す」というのは、もう『シン・ゴジラ』でやったから、『シン・ウルトラマン』ではやらないと思うんですよ。
でも、第2、第3のクライマックス、つまり「素顔のままで出る」というのと、「素顔であることを忘れる」というのは、『シン・ウルトラマン』でもやるんじゃないかと思うんですよね。
・・・
そう思うのは、庵野秀明という人は、すごく『ウルトラマン』が好きで、『宇宙戦艦ヤマト』が好きで、『ガンダム』が好きでっていうのと同じくらい、そういう作品に関連したものも色々と好きな人だから、なんですよ。
(本を見せる)
これは、石川賢が描いた『ウルトラマンタロウ』をコミックにしたものなんですけど。こういうのも、やっぱり、当時のオタク達、ファン達というのは、すごく熱心に読んでたんですよね。
そうやって、こういう関連作品の中の面白い部分を、自分の中の「俺ガンダム」とか「俺ウルトラマン」に、どんどん入れるということをやってたんですよ。
僕が、「ああ、これはすごいな!」と思って、当時のマニアの間でよく言ってたのが、ここなんですけど。
(パネルを見せる)
石川賢版の『ウルトラマンタロウ』では、「ウルトラ一族は、遥か昔に地球に来ていた」と。そして「マントを着て出て来たと思ったら、マスクを取る。すると、その下には人間の素顔がある。その素顔から発せられた光によって、類人猿たちを進化させ、人類へ導く」というようなシーンがあるんですね。
僕ね、これをやるんじゃないかなと思ってるんですよ。
庵野秀明がウルトラマンを撮るからには、絶対に素顔のウルトラマンをやりたいはず。
しかし、だからといって、自主映画でやった時みたいに、「ちょっとビックリさせてやろう」というネタでやるのはマズい。
だったら、この石川賢の「マスクを取ったら中から老人が出てきた」というのを……これは、すごいショックだったんですよ。「僕らがウルトラマンの顔だと思っていたものは仮面であって、その下に人間がいる」というのは。
実はこれ、『エヴァンゲリオン』でもそうなんですよね。これは、庵野秀明がずっと追いかけている映像的なテーマでもあるんですよ。
こういうことが、『シン・ウルトラマン』にあるんじゃないかと思います。
もうちょっと状況が整理されてきて、僕の方がもっと語れるようになってきたら、『シン・ウルトラマン』に関して、もう少し色々と語ってみたいと思います。
・・・
では、一般放送はここまで。ここから先は限定放送に切り替えます。
限定の方では、もうちょっと『シン・ウルトラマン』の話をしようと思うんですけども。
次回のニコ生は8月20日、『ガルマ散る』解説の後編をやります。
8月25日の日曜日は、たぶん……「たぶん」ですよ? 『崖の上のポニョ』をやると思います。
それでは、限定放送に切り替えてください。
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