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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「ポニョの母は夫が数千人!フジモトは永遠に苦しめられる男性像、と嬉しげに語る宮崎駿」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「ポニョの母は夫が数千人!フジモトは永遠に苦しめられる男性像、と嬉しげに語る宮崎駿」

2019-09-26 07:00

    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/09/26

     今日は、2019/09/08配信の岡田斗司夫ゼミ「宮崎駿を精神分析できるのが、『風立ちぬ』でも『もののけ姫』でも『千と千尋』でもなく、『ポニョ』である理由」からハイライトをお届けします。


     「ジブリがいっぱいCOLLECTION」から出てる『ポニョはこうして生まれた。~宮崎駿の思考過程~』というドキュメンタリーがあるんですよ。
    (パッケージを見せる)

    nico_190908_02644.jpg
    【画像】ポニョはこうして生まれた。パッケージ

     これ、2枚組なんですよね。2枚組で、1枚目が5時間47分あって、2枚目が6時間45分もあるんですよ。全部で、もう本当に12時間以上あって、メチャクチャ辛いんですけど。まあ、出来るだけ全部、見たは見たんですよ。
     全部見たら、やっぱり面白くて。例えば、一番初期の『ポニョ』のイメージは、『崖の上のいやいやえん』というタイトルなんですね。
    (パネルを見せる)

    nico_190908_02716.jpg
    【画像】ポニョ初期イメージ © Studio Ghibli・NDHDMT

     この時点で、わりとね最初っからフジモトのイメージが決まっていたことがわかります。宗介の方も、一応、それっぽいキャラは描いてあるんですけど。それよりも遥かに大きく、フジモトが描かれている。
     あと、ポニョが最初は魚ではなく、カエルのお姫様だった。つまり、グリム童話の『カエル王子』に近い話で、それを男女逆パターンにして「カエルの王女様が男の子にキスをしてもらうと人間になる」という話をやろうとしていたのがわかります。
     ただ、もう、このドキュメンタリーって全部で12時間以上あるので、途中で何を見ているのかわからなくなってくるんですよ。あまりにも情報が膨大なので。
     なので、今日はこのすごく長いドキュメンタリーの情報の全体構成を簡単に紹介しようと思います。

    ・・・

     というわけで、冒頭はなかなか混乱してたんですけど、作画監督の近藤さんの娘のフキちゃんという女の子をモデルにすると決めてから、一気に『ポニョ』は進みます。
    (パネルを見せる)

    nico_190908_02829.jpg
    【画像】フキちゃん

     これがフキちゃんなんですけど、「ポニョだよ、まさに!」って、宮崎さんが叫んでます。
     とにかく子供らしくない気の強さ。1歳になると哺乳瓶を自分の手で飲むのが当たり前なんですけど、実は、フキちゃんは、親に哺乳瓶を持ってもらわないと飲まないんですよ。
     オモチャとかは自分の手で掴む、気が強い女の子なんですけど。ところが、ご飯だけは下々の者、親に持たせて、それを気だるげに飲むという、メチャクチャワガママな少女だそうです。
     このフキちゃんの目が釣り上がっているのを見て、「これだ!」というふうにピンと来たわけですね、宮崎さんは。
     面白いのが、ピンときて、いきなりボードを描き始めるんですけど。ボードを描きながらですね、「おお、かわいいね。騙されないぞ、俺は!」って言うんですよね。
     つまり、「フキの可愛さに騙されないぞ! お前は大した女だ! 親の言うことなんか全然聞かずにワガママで、すごい女に違いない!」って(笑)。
     近藤さんは「いや、女の子だからって関係ないですよ。男の子も女の子も子供の頃はそんなもんですよ」って言うんですけど、宮崎さんは「いや、俺は騙されない、騙されないぞ!」と言って、そのまま、こういう絵が生まれたんですね。
    (パネルを見せる)

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    【画像】ポニョ © Studio Ghibli・NDHDMT

     それまでかわいく描いていた主人公の女の子の目を、ちょっとつり目にしたんですよね。「気が強く、欲しいものはなんでも欲しいと言う」という、まあ、強欲なキャラクター。「ただ、かわいいだけでなくワガママなヒロイン像が見えてきました」というふうにナレーションが言ってます。
     これで、キャラが決まったわけです。「このキャラクターが大津波に乗って、街を海に沈めてまで、自分の好きな男に会いに来る」というお話だということが、宮崎さんの中で一気にまとまったわけですね。

     プロットというかお話全体はそれまでに決まってたんですけど、「どんな子がそれをやるのか?」という部分については「そうか! これはフキみたいなワガママな女の子が、目をつり上げて他の迷惑とか顧みずに来る。そこがいいんだ! そこがかわいいんだけど、騙されないぞ俺は!」というふうに宮崎さんが自分自身に言いながら、作っていたんですね。
     このドキュメンタリーを見ると、本当に宮崎さんの思考過程が手に取るようにわかるんです。

    ・・・

     その中で迷っていたのが、「じゃあ、どうやって来るのか?」という部分。
    (パネルを見せる)

    nico_190908_03108.jpg
    【画像】海を走るポニョ3枚 © Studio Ghibli・NDHDMT

     これは有名な、僕も『ポニョ』の中で一番好きな、走りのシーンなんですけど。このポニョの走り方、やっぱりすごい上手いんですよ。

     具体的に言うと、「水を踏みしめるシーンでも、僅かに足が水に沈んでる」んですね。
     こういう水の上を走るところを描く時って、やっぱり、水面の上を走らせちゃうんですよ。でも、ここではそうじゃなくって。
     『もののけ姫』でシシ神が水の上を歩く時に、水の中に蹄が僅かに沈むじゃないですか。ここが宮崎駿の絵のイメージのすごいところだと思うんですけど。やっぱり、『ポニョ』も、ちょっと踏みしめて沈むんです。
     と、同時に、この3枚目の絵を見てください。これ、「両足とも浮いている」んですね。
     この走っている人間の両足が浮く絵というのは、これまでのジブリのリアリティのあるアニメでは、わりとやらなかったことなんですね。
     『未来少年コナン』とか『ルパン』ではやってるんですよ。コミカルだから。
     あと、『アルプスの少女ハイジ』でも、ハイジがオープニングでスキップしているシーンでは……これは宮崎さんの絵ではないんですけど、やってるんですね。
     そんなふうに、ある種「ファンタジーとしてだったらアリ」「ギャグとしてだったらアリ」なんですけど。リアリティを持ったジブリの作画で、両足とも空中に浮いているという、人間の走りではない描写というのは、これまで描かなかったんです。
     だけど、それを『ポニョ』ではあえて描いていったんですね。

    (パネルを見せる)

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    【画像】宮崎駿の説明

     これは「子供の走りって本当は重さがないんだよ」って、宮崎駿が一生懸命、作画監督の近藤さんに説明しているところなんですけど。
     「重力がないんですよ。だから、止めのポーズが入らなきゃダメだ。これまでのジブリの作画ではなくて、空中で一瞬、止めのポーズが入るような絵でなければダメだ。空中でヒョイと浮いている。この足をこんなふうに蹴上げないといけないんだ」と。
     ということで、宮崎さんはいきなり実演を始めます。「両足がなんか浮いているみたいな絵が入っていると思うんだけど」と言いいながら、何回も何回も、自分で空中で止まるような感じで試しているんですね。
     昔のマンガのようなアニメをこれで作ろうとしたわけですね。

    ・・・

     あと、ポニョの性格描写で、早いうちから決まったのが「宗介の持っているサンドイッチから、ハムだけを奪う」というシーンなんですね。
    (パネルを見せる)

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    【画像】ポニョとハム © Studio Ghibli・NDHDMT

     ピラニアのように奪うわけなんですけど、「ワガママで欲望に真っ直ぐなポニョ」を描いてます。
     一応、『天空の城ラピュタ』の頃から「シータのような女の子も、段々したたかになって、年をとったらドーラになる」というところまで、宮崎さんは描いてたんですけど。
     でも、「シータがどのようにドーラになるのか?」というのは描かれていなかったわけです。シータからドーラへというのは、やっぱり繋がらないんです。
     宗介を振り回すポニョを描くことで、「あのシータですら、子供の頃は、超ワガママな女の子だった」というのを描かないと、シータからドーラまでは行かないんですね。
     一番最初の原初の状態では、女の子というのは……後に10歳とか12歳くらいになったら、すごく思いやりがあって優しい子になる。だから、ポニョは映画の後半のクライマックス辺りで、自分の好きなものを赤ちゃんにあげて、ちょっと思いやりのある女の子に成長するんですよ。
     だけど、その前の状態は、もっともっとワガママなもの。これを描くことによって、後に大人になってからそういう本性が表に出てきて、ドーラみたいなものになって、それがさらに湯婆婆、銭婆みたいなものになるという、宮崎さんの中での一連の流れが完成するわけですね。
     宮崎さんは、『折り返し点1997〜2008』(岩波書店)というエッセイ集の中で、このようにポニョについて述べています。


    ポニョは女性原理の生粋の状態。抑えるすべてのものに反撥し、後先考えずにただちに行動し、ほしいものを手に入れるためにつき進みます。食べること、抱きしめること、追いかけることに何の迷いも配慮もありません。多産系で猥雑で、恋ならいくらでもしちゃうキャラクターですが、この映画では幼児のままで、出会う男性によってどんな女性に成長していくか決まるのでしょう。


     作画監督の近藤さんが一番わからなかったのは、フジモトなんですよ。
     「なんでこのフジモトというのは、グランマンマーレと結婚して、ずっと一緒にいるんですか?」と言うと、宮崎さんは「それはね、永遠の男性像です。女性に苦しめられるんですよ」と言ってるんですね。
     それを、美術監督の吉田さんが呆れて聞いてるんですよ。
    (パネルを見せる)

    nico_190908_03544.jpg
    【画像】美術監督 吉田昇

     この呆れた表情。宮崎さんが言った瞬間に、こんな呆れた顔をしてるんですけど。
     しかし、それにさらにかぶせるように、宮崎さんは「亭主は何千人っているんですよ」と。「グランマンマーレには実は何千人も亭主がいて、あの映画に出てきたフジモトは、その何千人のうちの1人に過ぎない。だから男はツラい。その男の永遠のツラさというのを表すキャラクターなんだよ」と言うんです。
     それを聞かされた作画監督の近藤さんも、美術監督の吉田さんも、呆れ果てるばかりなんですけども(笑)。
     この辺り、ドキュメンタリーのわりと見どころなんです。
     で、呆れ果てる2人に、宮崎さんは「僕らの常識で考えちゃいけないんですよ!」って、なんか決まったようなことを言って、「その日の打ち合わせはそれで終わりました」って、宮崎さんが2階に上がって行くシーンで終わるんですけど。不安そうな吉田さんと近藤さんがメチャクチャ可哀想でした(笑)。
     まあまあ、こんな感じで『ポニョ』の制作が始まったわけですね。

    ・・・

     ちょっと待ってね。少し一休みしないと、もたないもたない。

    「撮影はNHKの若手一人だった」(コメント)

     そうそう。NHKの荒川君という兄ちゃんが、1人でカメラを持って。それも「すごい小さいハンディカメラ1個だけだったら持ってていい」ということで、300日間、撮り続けた映像の集大成なんですよ。
     NHKでオンエアされたやつって、その中から、さらに1時間くらいに編集したやつを2つのスペシャルにしているんだけど。その中にも、茂木さんとかの語りとかが入ってて、正直、NHK版は面白くないんです。
     でも、このジブリが出している、全部で12時間以上あるやつは、本当にひたすら面白いんだよね。


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