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岡田斗司夫のニコ生では言えない話 第54号 2013/10/14
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【今週のコンテンツ】電子書籍は食えない作家が落ちる最後の墓場なのか?
【今週の書き起こし】電子出版シンポジウム(鈴木みそ・小飼弾・岡田斗司夫)パート1
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◆【今週のコンテンツ】電子書籍は食えない作家が落ちる最後の墓場なのか?
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引っ越しの時に「別れがこんなにもつらいのなら、もう本なんて買うものか」と泣きながら本を大量に捨てた佐藤家清です。
今回は全4回に渡ってお届けする2013年8月10日に行われた出版シンポジウム「電子出版ノススメ〜鈴木みそ×小飼弾×岡田斗司夫〜」の第2回目になります。
なぜ、作家や出版業界が電子書籍に乗り気ではないのか、紙に固執する理由、また電子書籍の弱点などなど、話題は深いところへ向かっていきます!
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<岡田>
漫画家が、鈴木さんの後にワーっと続くように、電子書籍に行かない理由として一つ考えられるのが……文字の方の作家も、小説家やノンフィクションライターも、案外、電子に来ないじゃないですか?
<鈴木>
そうですねえ。
<岡田>
それらはやっぱり同じ理由で、「“出版される”というのがトロフィーだから」という意識があるからだと思うんですよ。
紙の本として出版されることが、あたかもトロフィーワイフみたいに扱われているのと同じように。
僕が同年代の物書きの人と話すとき、「電子出版を出すほど落ちぶれたくない!」みたいな話が、いまだに出るんですよ。
今、“いまだに”って言ったのは、2013年の夏になっても、まだ出てくるからなんですよ。
<小飼>
いやあ、でも、それを言ってたら、webでロハ(※只=タダ)で流していた文章をラノベ化したら……700万部だったけな? そんな話もあるのにねえ。
<岡田>
そういうのは、「世の中が間違ってる!」というふうに思ってるんですよ、きっと。
その人たちにしてみれば、「紙の本でしかやりたくない!」、というのは、もう「負けるとわかってる太平洋戦争をやり続けるしかない!」っていうのに似たようなモンかなぁと、僕も最近思うようになってきたんですけども(笑)
<山路>
紙のというと、“同人誌”ではダメなんですか?
<岡田>
やっぱりそういう人たちは、出版社から紙の本で出してもらってナンボなので。
電子で、たくさんのひとに読まれるといっても、あんまり気がすすまないんじゃないかな?
まあ、もちろん周りから悪いことばっかり吹き込まれてるかもわかんないんだけども。
「そうすると、ダビングされるのは防げない!」みたいな。「いや、“ダビング”って、その用語使うの?」とか思ったりするんだけど (笑)
作家にしても漫画家にしてもなんでもそうなんだけども、電子出版をするっていうことは、いわゆる一流出版社の銘がつかなくなる、箔がつかなくなると思っちゃってて。
それで手を出さない人ってのが結構いますよ。
<鈴木>
僕も「食い詰めてはじめた」みたいなことを強調したから、そういう部分で、余計に印象が悪かったのかもしれませんね。
「ああ、あれはもう“食えなくなったときに行く最後の墓場”だ」みたいな。
そんな話になっていくのかな?」
(中略)
<岡田>
僕は今、大学で学生を教えてるんですよ。その中では文学部のやつらもいるんですね。
その文学部の人らが、もうホントに5〜6年前から毎年毎年、聞いてくるのが……あの、詩を書いてる人が多いんですよ。ポエム。
で、「どうやったら詩集を出せるのか?」と。「先生は自費出版ってどう思いますか?」って。毎年10人くらい相談に来るんですね。
毎年毎年、「絶対やめろ!」と言うんですけども、10人のうち7人は、やっぱり自費出版で出しちゃうんですよ。
<小飼>
読んでもらいたいだけであれば、ブログを作ってそこに放り込んでおけばいいのに。
面白ければ紹介しますよ。
<岡田>
いや、そうなんですけど。
それをね、どんなに言っても駄目なんですよ。
<鈴木>
紙が欲しいんですか?
<岡田>
紙が欲しいっていうかですね。
たくさんの人に見てもらえるからブログでやって、「そこで人気が出るくらい面白いものだったら、ちゃんと紙でも出るよ」って言ったら、それって“自由競争”の波にさらされるということになるんですよね。
<鈴木>
ああ、自信がないんですね。
<岡田>
はい。
つまり、「どっか特定のプロデューサーに贔屓してもらってデビューするんだったらアリなんだけども、自分の顔写真をさらして美人コンテストに出るのはイヤだ」みたいな心理が働いちゃう。
<小飼>
でも、紙にするだけで読んでもらえるものなのかな?
いや、だって、それ系のベストセラーって、僕、ホント『サラダ記念日』ぐらいしか思い思い浮かびませんよ。
<岡田>
そうなんですよね。
でも、詩を書いて食っていきたいっていう人達の絶対数は、あまり変わらないですよ、昔から。
<岡田>
とにかく、自費出版でもいいから1冊でも本を出してしまえば、そういう自由に市場に参加してくる素人と自分たちとの間の段階が1段上がれるんじゃないかって思っちゃうんですよね。
なので自費出版に行くんだろうけど。
(中略)
<岡田>
でも、実は自費出版であろうと別に新潮社とか講談社から出ようと同じじゃないですか。
<鈴木>
同じですね。
<岡田>
「そんな変わらない」という事がわかんないんですね。
だから、詩集を出す学生がいる一方で、相変わらず作家になりたいというと、出版社に持ち込む人が多いんですけども。
自費出版で自分で出そうという人本当に少ない。
<山路>
大手出版の事でちょっと言うならば、大出版社に比べて、小さな出版社とか自費出版だと“パブリシティ”って言う意味で相当に不利で。
それがあんまり評価に繋がらないって事がやっぱりあるんじゃないんですかね。
<岡田>
あります、あります。
あの、営業の上手い大出版社だったら、大したことない本でも1万7千ぐらい刷ってくれて。
イコール、書店で“面を出す”って言うんですけども、表紙が見えるように平台に置いてくれるっていうのはあるし、小さい出版社だったらそれが出来ないっていうのがあるんですけども。
でも、電子出版だとそれないじゃないですか。
もう本当に、その本の人気とか、タイトルのインパクトとかでAmazonの上位にちょっと入れちゃうから。
そしたら本当に売れちゃうってのがあるんですよ。
<鈴木>
でも、そこに入らないってこともあるんだよね。永遠に。
<岡田>
永遠に?
<鈴木>
誰にも見つけてもらえないまま、恐怖の電子在庫の山に埋もれるっていう問題が。
<小飼>
ちょっと待って。“電子在庫”って、それ、なんですか?
<鈴木>
いや、実際の書店の場合、山のように本があっても、まだどこに何があるのかわかるような陳列の仕方はありますけど、電子ってあんまり見せるところが少なくて。
自分で作家を検索すれば良いんですけど、ほとんどの場合、ランダムに扱われて。
つまりね、書店における“表紙”っていうものがほとんどないんですよ。
そうすると、1回も話題にならない本は、作ったけども、自分ともう1人ぐらいしかダウンロードしないで、そのまま終り。
<岡田>
既にブログで人気があるヤツしか電子出版って出してもしょうがないですよね。
<鈴木>
そう。だから僕もこうやって、いろんな事で自分自身の名前を出して、顔を出して、面白い事を書いて。
そっから名前を知ってもらうような、こういう働きかけ、本来漫画家の仕事じゃない宣伝みたいな事を、どんどん1人で考えてやらなくてはいけないという事で。
そういう事にはなりますよね。
(中略)
<岡田>
紙の出版社の人達って、まず紙の本が最大に売れるように考えちゃう。
で、たぶんそれは、「その出版社の中でも電子書籍を扱ってる人達っていうのが、出版社の中で2軍の人らだからなのかな?」っていうのが最近の観測結果だったんですね。
つまり、「俺たちが紙でさんざん稼いだ後、残り物でチャーハンでも作ってろ!」みたいな形で電子書籍の方が動いてるように見えちゃうんですよ。
<小飼>
いや、でもそれってメディアの変遷がある時には必ず発生してたじゃないですか?
まあ、新聞にとってのテレビもそうですし。小説に対する漫画の時もそうだったですし。
だけど、今はかつて2軍だったところが主戦力を担ってるわけじゃないですか。
<岡田>
でも、昔の“出版が偉い時代”だったら、例えば、小説家の単行本は「一番最初にハードカバーで出て、次に新書で出て、次に文庫で出て、最後に全集になる」っていう流れがあって。
電子書籍ってのは、今現在の流れの中でかなり後ろの方に位置付けられてるような気がするんですよね。
<小飼>
まあ、確かに。
<岡田>
なので、本当に欲しい本はなかなか電子書籍が出ないと。だから、しょうがないから紙で買っちゃうと。
でも、「電子書籍だったら持ち歩けるのにな」ていうふうに思うので。
僕なんか自分の本は出来るだけ発売と同時に電子書籍にしたいと思ってるんですけども。
これってそんなに変な事なんですかね?
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