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 岡田斗司夫のニコ生では言えない話 第64号 2013/12/23
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【今週のコンテンツ】『叛逆の物語』は『ガンダム』と並ぶ92点、呪われし上級編
【今週の書き起こし】『劇場版魔法少女まどかマギカ[新編]叛逆の物語』を金払って観たから言いたいこと言うよ!3/3
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◆【今週のコンテンツ】『叛逆の物語』は『ガンダム』と並ぶ92点、呪われし上級編
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僕は無銘のマサフミ。ついに残ったのは君一人だね。
岡田斗司夫ゼミ「『魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』を金払って観たから言いたいこと言うよ!」から、最後はまどマギ上級編をお届けするよ。

この先、『叛逆の物語』の核心が語られることからは逃れられない。
まさか岡田斗司夫が『機動戦士ガンダム』と並べて評価するほどの作品が生まれるなんて、思いもしなかったよ。
『叛逆の物語』を観ないうちにネタバレを聞いてしまうなんて、一人残った君の願いは叶ったといえるのかい?

『叛逆の物語』の結末がハッピーエンドかアンハッピーエンドか、それは僕にも分からない。
どちらであろうとも全ては僕、いや、君と僕達が語り続けるためのエネルギーになるんだけどね。

もうすぐオオミソカの夜が来る。
さあ、僕と契約をして、『魔法少女まどか☆マギカ[新編]叛逆の物語』を観てよ!


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 でね、「ハッピーエンドか、アンハッピーエンドか?」っていうことまで、まとめて話しちゃうんだけども。
 ハッピーエンドかアンハッピーエンドかというのに関してはね、いろんな考え方があると思うよ。
 俺ね、実はわかんないんだ。

 あの、『カリオストロの城』ってさ、ハッピーエンドに見えるかアンハッピーエンドに見えるかって人それぞれだと思う。
 で、55歳の、中年を過ぎた、ややもう老年にさしかかったオッサンの俺としては、あれはアンハッピーエンドなんだよ。
 ルパンは最後、クラリスに手を出すこともキスすることもなく、「せっかく太陽の世界に出れたんじゃないか」って言って、責任も取らずに「いくらでも俺のこと好きになりなよ、困った時があったら来るかもよ」みたいなことを言って行っちまうんだよな。
 つまり、その女の子の中に永遠の刻印を残すことに成功するんだ。
 で、「今後、俺以上に好きになる相手というのは出来ないだろう」とわかった状態で、突き放して逃げてしまうので……っていうふうに見えちゃうので、これはアンハッピーエンドだなというふうにも言えると。
 でも、そういう恋愛をしたいっていうふうに女の人が思ってたらハッピーエンドかもわかんない。
 どっちとも言えるな。

 で、『ガンダム』のTV版は、そのガンダムという巨大ロボットの力とか、戦争っていうものの呪いから主人公・アムロが解放されて自由になる話だから、ハッピーエンドであって。
 そっから先の『ゼータ』や『ダブルゼータ』っていうのは、1回もハッピーエンドに成功してない。
 今に至るまで、ガンダムっていうのは……そのガンダムの力っていうのがどのようなメタファーであろうとも、そっからの解放というのがされてないから。

 で、『火垂るの墓』は、主人公のあの兄ちゃんが妹を死なせてしまって、繁栄の20世紀末の神戸を未だ見てるっていう地獄・煉獄の中で、生きることも死ぬことも出来ない。だからアンハッピーエンドっていうふうにも考えられるんだけども。
「節子、お前のことをいつまでも見守っていたい」という意味ではハッピーエンドと言えるかもしれない。
 つまり、「カリオストロの城がハッピーエンドだったら、同じようなロジックでハッピーエンドとも言えるんじゃないの?」っていうふうにも思えちゃう。
 だから俺、安易にハッピーとアンハッピーとに分類できないんだけどさ。

『風立ちぬ』も、全くその、前のニコ生で話した通りで、俺には火垂るの墓と構造が同じに見えるんだよね。
 どちらかというと、宮崎駿が高畑勲に対してアンサーを返したような作品だからさ。なので、最後に主人公が煉獄にいるのも同じなんだけども。
 ただ、そこで火垂るの墓と違うのは、火垂るの墓っていうのは「兄ちゃん、もういいの。節子は天国で幸せよーん」とか言って、兄ちゃんは「良かった!」って言って極楽行っちゃう話なんだけどさ。
 でも、風立ちぬの主人公の二郎君は、奥さんに「生きて!」って言われても、それにあんまり気づかずにカプローニさんと一緒に酒を飲んでしまうという、もう一回地獄に舞い戻ってしまうというボンクラぶりを示してくれたところで終わる(笑)
 つまり、あれはあれで「地獄でも良いんじゃないの?」と。宮崎駿にとっては「こっから先も、この世の中のピラミッド構造の上でアニメ作るんだぞ!」っていう決意宣言でもある。
 だから、すごいなんか、「宮崎駿はハッピーなんだろうけれど、アニメとしてはアンハッピーエンドやな」と思ってたな。


 じゃあですね、やっと結論部。
 まどマギってさ、ハッピーエンドなのかアンハッピーエンドなのかっていうふうに考えるじゃん。
 で、ほむらもそうなんだけども、ファンにしても、もう一度まどかと会えると考えて、また『まどマギ』のこと考えて、そしてさらに「この先、また続編の劇場とかビデオとかTVとかがあるんじゃないのかな?」って期待してしまうという意味では、もう一回、作品に“呪われる”わけだよね。
『機動戦士ガンダム』がガンダムという“力と呪い”からの解放の話であったかのように。

 僕らファンにとって『まどマギ』っていうのは、「すごく良いものを見た!」っていう感動という祝福であると同時に、「もっと見たい!」とか、「これを超える感動が現実ではないのか!」とか、「なんでこんなキャラが現実にいないのか!」っていう呪いを必ず受けるんだよ。
 ここがこのフィクションの恐ろしいところであってさ。
 だから、明治時代の教養人は、青年が小説を読むのを禁止したんだよね。「あんなものを青年のうちに読んじゃいかん!」と言ったぐらいで(笑)
 フィクションの恐ろしさっていうのは、それぐらいあるんだけれども。

 うーんとね、だからね、今回のまどマギは、僕にしてみればアンハッピーだよね。
 また『まどか☆マギカ』を見なきゃいけないし。なんかね、ガンダムを見た後でちゃんとまた見なきゃいけない『ゼータガンダム』みたいなもんだよな。そういうふうに思ってしまうし。
 エヴァも同じ構造だよな。

 皆さんにとっては、まどか☆マギカはハッピーエンドだったでしょうか? アンハッピーエンドだったでしょうか?
 ということで、劇場版まどか☆マギカ上級編を終わりたいと思います。お疲れさまでした。



 で、こんなにね、疲れる話になるんだよ(笑)
 上級編はね、ゼミだからね。これだっていう結論がなくて、「こう考える、こう考える、こう考える」。そして、「後はみんな、ブログで考えてくれ!」っていう言い方になっちゃうんだけども。