【ファミカセクロニクル~愛すべきクソゲー列伝~】
『燃えろ!!プロ野球』(1987年/ジャレコ)


スポーツ、それも野球といえば、ファミコン全盛期の80年代半ばには"リアル"においても少年たちの間で大人気。それだけにこの時代には、秀作野球ゲーが数多く登場したが、そうした秀作揃いの中で、セールス面では大ヒットを記録したものの、あまりに強烈すぎる中身から「クソゲー」どこか「バカゲー」の扱いを受けることとなってしまった作品がある。

そう、当時のファミコン少年ならばその多くがプレイした経験があるだろう、初代『燃えろ!!プロ野球』(1987年/ジャレコ)だ。


今でもネット上などで、しばしば「バントでホームラン」などと揶揄されるように、その謎めいた仕様(というかバグ要素)から、珍プレー続出のゲームであり、クソゲーの代名詞と化している感すらあるこのゲーム。やはり特筆すべきは、不安を感じさせるそのゲーム性である。

たとえば、このゲームにおける「バントでホームラン」現象について言うと、各チームに1人ずつ配置されている強打者設定のバッターの場合、なぜかバント(彼らはバント用グラフィックが存在しないため、ハーフスイング状態)でもホームランになりそうな強い打球が飛ぶという珍現象が存在しているが、このほかにも、コントローラーをいじると野手が一斉に(しかも微妙に)動いてしまうために、ベースカバーに入るはずの選手があらぬところを徘徊し、結果として誰もボールを取らずにファウルゾーンへと(そして、場合によっては外野の彼方まで)転がってしまうという、あまりにシビアなヘボ野球要素があったり、ファウルを打った後にはどこに投げてもストライクと判定されてしまうなど、もはや単なるバグとしか思えないような謎仕様のてんこもりとなっていたのだ。

そのため、少年たちが興じていた草野球では、この謎仕様に影響されて、ファウルの後は絶対にストライクになると信じて疑わないピュアな子供たちによって引き起こされる珍プレーが続出するという二次被害まで発生。あの時代、「リアルを知る派」と「燃え!!プロ準拠派」で意見がぶつかり、ちょっとしたケンカにまで発展することさえ少なくなかった。こうした経緯から、本ゲームは、結果として多くの子供たちにとって、大恥を書いた記憶や、友との壮絶なバトルによるほろ苦い記憶と共に、いつまでもその胸に刻まれる伝説のクソ野球ゲーとなったのである。

とはいえ、この『燃えろ!!プロ野球』、音声合成チップの採用によって「ストライク」「バッターアウト」といった声が聞こえる演出のほか、一部の外国人選手などは、この時代にして既に本人を彷彿とさせる風貌やフォームのグラフィックが用意されていたり、デッドボールを巡る乱闘や、投手交代時にリリーフカーで投手が登場する姿、さらには投手がホームランを打たれてマウンドで打ちひしがれるといったリアクションまでもが存在したり、それらがオーロラビジョンに映し出されたり、なんとも先進的な試みが多数盛り込まれるなど、後年の野球ゲームに大きな影響を与える要素が存在していたことも事実。

そうした意味で言えば、このゲームは単なるクソゲーではなく、結果として惜しくも名作になり損ねてしまった迷作と言えるのかもしれない。

文・新劇シルバー



■参照リンク
http://d-mebius.com/moeprops/


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