芸人と一言で言っても、コントに強い人、一発芸で通す人、漫才で勝負する人など様々なタイプがある。特徴や性質はいずれかに偏っていることが多く、オールジャンルでカバーできる芸人は、ほんの一握りといえよう。その才能を持つのが、フリーペーパー『honto+』に端を発した『クリエイターズ・ファイル』で一大ムーブメントを巻き起こした秋山竜次(ロバート)だ。架空のクリエイターを自由自在に扮し、見るものの度肝を抜いた秋山が、8月に台本なしのエンターテインメントショー『THE EMPTY STAGE』に出演するというので、話を聞きに行ってみた。
――今回、『即興』をテーマにした「One-Man Talk Show(一人喋りショー)」にご出演されるわけですが、本年2月にも同じ公演に出演されていますよね?
出ました。普通のお笑いライブと違って、「BENOA銀座店」というシャレた場所でやるからか、お客さんもドレスアップして来られるんです。「どうお酒に合うトークをしてくださるの?」という圧を勝手に感じたので、ちょっと緊張しましたよ。話そうと思っていたことを最初の10分で話し終わってしまい、後半10分くらい「やべ、まじどうしようかな」ってなって。そのときに絞り出す感じとか、ワクワクするんですけどね。
――ピンチではなく、ワクワクという表現なんですね。
そうですね。基本的にはそんなに用意はしていないんです。何となくお客さんにお題をもらうこともありますし、横にピアノの方がいらしてずっとムーディなBGMを流してくれているんで、音楽に合わせてちょっと軽く歌ったりとかもありですから。本当はお面とか音楽とか用意したいんですけど、この公演ではやってはいけないルールなので。8月だから、肌の焼け具合もいいと思うんですけどねえ。誰かお客さんがお面を持っていれば、やってもいいってことにならないかなあ?
――体物まねですよね(笑)。実際にお会いすると秋山さん、思った以上に黒いので本家より黒いのでは、と思いました。
いや、それが梅宮(辰夫)さんはもっと黒いんですよ。いつも相手にならないくらいの黒さなんですよ。沈着しちゃってるんでしょうね。ニュージーランドで、しょっちゅう釣りをやっている人とは訳が違いますね。
――秋山さんは体物まねの一発芸もできますし、もともとはコントで名を馳せていますよね。一方で、『IPPONグランプリ』では2度優勝もしていて大喜利にも強いと、まさにお笑い能力がオールマイティなのですが、特に強い分野は何ですか?
いやいやいやいや。うーん、強いて得意なことを言えば、扮することでしょうかねえ。コントやネタでキャラクターに入ってやることが一番得意です。結局『IPPONグランプリ』も普通に答えているわけじゃなくて、キャラに扮した言い方が多いですし、フリートークでも何かに扮したいと思うので。
――『クリエイターズ・ファイル』なんて、まさに扮することの代表格だと思うのですが。
ああ、今本当に知られているのでありがたいですね。1年以上前からやっていて、「誰が見てんだ!?」って思いながらやってましたけど(笑)。何せ知られてよかったです。知られずに、ただやり続けて終わるのは地獄ですからね。あと2カ月待って話題にならなければ限界がきて、自分から「おおおおい!世間の皆さま、聞いてください!まじやってるんです」って叫んでいたでしょうね。
――『クリエイターズ・ファイル』においては、全部台本なしでやっているんですよね?
そうです、そうです。質問されたことにずっと答えるだけのルールです。ひたすら2~3時間ずうっと答えていて、その中で出た面白いものを公開しているだけなので。何となく「こういう人はこんなことを言いそうだな」っていう決めつけで全部やっています。実際会ったこともないですしね。ただ、衣装を着たいからそのキャラクターを選ぶだけのときもあるんです。そうなると、まあ...苦戦しますね。
――中でも苦戦した回を挙げるなら?
第3回でやった湯どころ旅館「銀風の塔」グループCEOの大垣節子です。ただ着物が着たくて選んだだけなので、しゃべりながら何も出てこないし、最後すっからかんでした。でもね、困って困ってずっと言い続けていると、たまに名(迷)言が出るときがあるんですよ。その瞬間が気持ちよくて仕方ないです。大垣節子の場合で言えば、「あえてお客さんとの間に距離感を置くようにしてる」「また来ようと思うんじゃなくて、来たくないと思わせる」みたいな。そんなこと、あり得ないですけどね(笑)。
――そうして時々でブームを作り出していますが、時流を読むことも得意なんですか?
いえいえいえいえ、全く!俺、何も読めていないですよ。正直TwitterとかSNSとか?、まったくやっていないですし、未だにガラケーですし。『クリエイターズ・ファイル』に関しても、芸歴の浅い頃からずっとああいうことはやっていました。自分ら(ロバート)のネタもそうですけど、面白そうだなっていうやつは、ずっとネタ帳の隅に何年間も残っていたりして。想いがあるものはどこかに出してあげたいという気持ちで、ずっととっています。
――そのスタンスも含め、天才と評されることも多いです。
なんかそうおっしゃっていただけますけど、いやあ、全然...。最近では「あ、面白いと思ってもらえている」ということが素直にうれしいです。本っっっ当に好きでやっていることなので、伝わっていることが本望というか。ただ、番組でネタをやった次の日に、街とかで何も言われないと「あんま面白くなかったんだ...」とは思っています(笑)。
――そんな一面もあるのですね。貴重なお話をたくさんありがとうございました。そういえば本日は『THE EMPTY STAGE』のインタビューでしたので、AOL読者に向けてメッセージをお願いします。
おお、よくイメージされる若い女の子がキャーキャー言うようなお笑いライブじゃないので、何なら本当に一番来ていただきたいし、楽しんでもらえる世代のライブかもしれないです。大人の方がちょっとエレガントに銀座の夜で笑いたいなっていう1日があってもいいんじゃないでしょうか。即興感を楽しんでもらえるように頑張りますので、ぜひ会社で気になっている若いおねえちゃんを連れて来てください。一緒に一夜を過ごしましょう。
(取材・文・写真:赤山恭子)
『THE EMPTY STAGE 2016 SUMMER』は8月1日(月)~14日(日)まで、BENOA銀座店にて公演。
THE EMPTY STAGE 2016 SUMMER
公演日程:2016年8月1日(月)~14日(日)
公演場所:BENOA銀座店
公演時間 : <平日>19:30開演 <土日祝>13:00開演 / 17:00開演
チケット : 前売り:3900円/当日:4300円 ※飲食メニューあり(別途1オーダー制)※整理番号付自由席
■参照リンク
『THE EMPTY STAGE 2016 SUMMER』公式サイト
http://the-empty-stage.jp/