キャラクター描写や音声取り込みなど、多彩な演出が可能となった現在のゲーム界とは違い、限られた容量の中で、原作の良さとゲームとしての完成度を同時に求めたファミコン時代の漫画・アニメを原作にしたソフトは、ご多分にもれず代表的な鬼門のひとつであった。その代表格とも言えるのが、この『北斗の拳』(1986年/東映動画)である。
原作となった漫画や、地上波で放送されたテレビアニメについては、もはや説明不要だろう。そうした同漫画・アニメが大ヒットした時代に登場したこのゲームは、開発こそ、ある意味、"本職"と言えるショウエイシステムが手がけているとはいえ、発売もとはどうしても"畑違い"感が否めない東映動画。
この時点で察するべきなのだが、その内容はというと、まともなのは世紀末感漂う背景やBGM、そして、『北斗の拳』において象徴的なケンシロウの「服が破れるシーン」や「あべし」の際の演出だけという、なんともおそるべき出来栄えで、入るべき入り口にもなかなか入れない操作性の悪さや、もはやチートでしか対応できなさそうなレベルの敵の出現パターンなど、「ゲーム」という点においては随所にそのほころびが出まくっていると言わざるを得ないクソゲーとなっている。
実際のところ、少年時代の筆者もこのゲームをまんまと買ってしまい、難易度の高さに半泣きで放り出すもまたプレイ、ということを繰り返していたが、その理不尽なほどに強烈な攻撃を放ってくる敵キャラたちですら、時を経てプレイしてみると、なかなか新鮮なものを感じてしまうことも事実。原作ファンは是非とも再挑戦していただきたいソフトだ。
文・新劇シルバー