"映画の検閲"がニュースのヘッドラインを飾るとき、それは例えば中国が西洋の映画に対し自国の許容範囲かどうかを判断する、そんなケースが多かったりするもの。ところが今回、人気アニメ映画『怪盗グルーのミニオン危機一髪』の"中国での上映禁止"よりもびっくりなのが、イライジャ・ウッドの新作ホラー・サスペンス『マニアック』(日本では6月に公開済み)が"ニュージーランドで上映禁止"になったこと。これはなぜだろうか?
<The Hollywood Reporter>によると、ニュージーランドの検閲機関フィルム・文献分類管理局は7月24日、『マニアック』の同国内での一般上映を認めないと発表。これは同時に、本作のDVDがニュージーランドで発売されないことも意味している。しかしながら、間もなく開催されるニュージーランド国際映画祭などでの上映は許可されるそうだ。同国で映画祭だけでしか上映されない作品が出たのは、サンフランシスコの名所・ゴールデンゲートブリッジにおける"本物の自殺シーン"を収めたドキュメンタリー、『ザ・ブリッジ』(2006年)以来だ。
昨年のカンヌ国際映画祭のプレミア上映作『マニアック』は、1980年の同名作品のリメイク。『ヒルズ・ハブ・アイズ』『ピラニア3D』の監督アレクサンドル・アジャとグレゴリー・ラヴァスールが脚本を担当し、地下駐車場が舞台のスリラー『P2』のフランク・カルフンが監督を務めた。主演のイライジャ・ウッドは本作で、偶然ながらニュージーランドで制作された『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズで演じた愛らしいキャラ・フロドとは全く異なる"連続殺人鬼という裏の顔を持つマネキンショップのオーナー"を、ものすごく楽しそうに演じている。
「この映画に対する考えとして、俳優のイライジャ・ウッドによる常軌を逸した行動が"憂慮すべきもの以上"という点があります。不適切な人物にとっては大変危険性があるのです。ここで言う"人物"とは、映画祭に行かない人たち(つまり一般の観客)を指します」
映画祭のプログラマーであるアント・ティプソン氏によるこのコメントは、『マニアック』には映画祭に行く人よりもむしろ、一般の観客による暴力を誘発する可能性があることを示唆している。これに対し、隣国オーストラリアで『マニアック』の配給を行なったモンスター・ピクチャーズのニール・フォーリー氏は次のように反論した。
「この映画の上映を映画祭以外で禁止するのは、ニュージーランドの成人の観客の持つ知性に対する侮辱だ。それに、映画の海賊版が出回る格好の要因ともなる」
まあ確かに、フロド殺人鬼バージョンがナイフで女性の頭皮を剥ぎまくるという狂ったお話なのでエグくならないはずもなく、実際オリジナル版でもかなり精神をヤラれたという人が多い、いわくつきの作品ではある。そんな本作に対する海外の反応は真っ二つに。
・上映禁止賛成派
「ニュージーランドよ、よくやった。女性や子供の99%がこういったマニアック(変態)に苦しめられるのを見るのに、ニュージーランドの行動は称賛されるべきだと思う。映画に出てきた俳優たちは恥を知れ。こんな映画、監督や脚本家連中の個人的な妄想の垂れ流しに過ぎない」
「こういった作品をどうして作るのか、そもそも理解できない。上映禁止になってよかった」
・上映禁止反対派
「何なんだこれ? どうして政府が決めるんだ。観客が見る/見ないの選択をするのが一番じゃないか。(上映禁止は)バカげてるよ」
「18禁になる映画には理由がある。大人は何を見るか、自分の頭で決められる。自分がカッとなりやすい性格なら、見ないほうがいい。それほどシンプルな問題ってこと! 自分が見るか見ないかの前に、他人が勝手に"これはNG"と決めるほうが嫌だ。僕はホラー映画が好きだし、この映画を実際に見て心がかき乱されたけど、良くできた作品だとも思った。これこそがリメイクのあるべきやり方だってね。1980年のオリジナル作品とは、良い意味で違うんだ。それに僕は見たからといって、誰も殺したりしないよ!」
実はホラー・マニアだというイライジャの怪演はもちろん、オリジナルにはなかった新たな解釈や映像美、特殊メイクも素晴らしい! と噂の『マニアック』は現在、アメリカで限定公開中。以下は年齢認証が必要なレッドバンドトレイラーなので、心臓の弱い方は視聴をご遠慮ください!
ちょっとダリオ・アルジェント作品ぽい雰囲気がゾクゾクする!
映画『マニアック』公式サイト
http://www.maniacthemovie.com/
【参照リンク】
・New Zealand Bans Elijah Wood Movie Maniac
http://www.cinemablend.com/new/Zealand-Bans-Elijah-Wood-Movie-Maniac-38701.html
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