東南アジアやインドなどで、客席をはみ出し乗客で溢れんばかりの状態の列車を目にしたことがあるだろう。中には手すりにぶら下がった状態のまま目的地にたどり着こうとする、なんて光景も珍しくない。だが南アフリカの若者たちの間ではこれがスリルあふれるアドベンチャーと化し、いま深刻な社会問題となっている。
"トレイン・サーフィン(train surfing)"と呼ばれる遊びを収めた短編映画『Staff Riding』では、若者たちが走行中の列車を舞台に危険なパフォーマンスに挑む様子を紹介している。
(※「Staff Riding」=現地のスラングで「列車でのサーフィン」という意味)
南アフリカの首都ヨハネスブルグ郊外にあるタウンシップ(居住区)、カトレホン(Kathlehong)を走る列車。その上に乗り、自由自在に体を動かす若い男性。少しでもバランスを崩したら電線に当たり感電死してしまう危険もあるが、彼はそんなことはちっとも気にしていないかのように、ひょうひょうと踊り続ける。
多くの"ライダー"は25歳以下の男性で、運動神経が比較的良いほうだとは思われるが、この行為が危険なことに変わりはない。重傷を負う者や命を落とす者も出ており、現地でもこのトレイン・サーフィンを止めさせる動きが出てきたところだという。
列車は南アフリカのタウンシップからタウンシップへと走り、経済的に貧しい区域と国の各地域を結んでいる。カトレホンは悪名高いアパルトヘイトの時代、1945年に黒人居住区として出来た貧しい工業地帯で、現在も失業率は高く人々の表情も決して明るくはない。
「トレイン・サーフィンには死の危険があることはわかっているが、その一方で自己表現の場やスポーツになっている」と語る青年。「誰かを殴ったり、金品を奪うよりも、その怒りをなんとか鎮めたいと思うだろ?」という彼は実際に友達を失くしており、列車から転落して体が真っ二つになった...なんて話も耳にしたそうだ。
もう1人の青年は、実際に腕を失っている。「僕は友達と楽しくやるのが大好きで、あまり怒らないほうだよ。将来は広告関係の仕事をしたいと思ってる。クリエイティブな面があると思うんだ」と淡々と語るように、この映像からは受け入れがたい現実となんとか折り合いをつけようとする若者たちの姿も見え隠れする。
なお、この作品はワールド・プレス・フォトのマルチメディアコンテストで最優秀賞に輝いている。
【参照リンク】
・Train Surfing Is A Dangerous New Trend In South Africa
http://www.buzzfeed.com/lukebailey/train-surfing-is-a-dangerous-new-trend-in-south-africa
・South Africa's Risk-Loving Train Surfers - Mark Byrnes - The Atlantic Cities
http://www.theatlanticcities.com/arts-and-lifestyle/2014/03/south-africas-risk-loving-train-surfers/8750/
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