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『OV監督』(フジテレビ)は昨年12月に放送されたパイロット版を経て、今年4月からレギュラー化された番組。千原ジュニア、劇団ひとり、バカリズムというレギュラー陣と数人のゲストが毎回あるテーマに沿った「OV」=おもしろVTRを制作し、3人の審査員がその回の優秀作品=MOVを決めるというものだ。


5月19日深夜の放送の回のテーマは「クレーム」。
ゲストのオリエンタルラジオ中田、ずん飯尾、平成ノブシコブシ徳井、そしてレギュラーの千原ジュニアがOVを持ち寄った。
その中でも、千原ジュニアの作品は「これは凄い」「『OV監督』で一番の出来」「おもしろいし、世間に対して訴えてる」「ジュニアさんが久々に牙をむいた感じ」と他の出演者が口々に絶賛するものだった。
これまでこの番組の千原ジュニアの作品は自分の母親を使ったり、あえてハズした感じのものが多かった。だが、ジュニア本人も「こんなにちゃんと取り組んだの初めてです」と言うように、真正面から作られたジュニアらしい切り口の力作だった。

『ロストライフ』というドラマという設定で幸せそうな家族の光景が映し出される。
会社帰りの父親を出迎えに行く娘。父親の姿を見つけると駆け出す娘だが、そこに走ってきたトラックに父親の目の前で轢かれてしまう。
「まなみ!」
絶叫する父親。娘を救おうと駆け寄ろうとするが、目の前の信号は「赤」。父親は律儀にそれが「青」になるのを待っている。
ようやく血まみれで重傷を負った娘を抱きかかえると、父親は急いで自分の車の助手席に娘を座らせる。もちろんシートベルトをしっかり装着して。
さらに、父親は乗車前の点検も怠らない。発車前は指差し確認だ。
娘は見るからに重体。一刻を争う。しかし、法定速度は絶対だ。「まなみ、しっかりしろ!」と呼びかけながらも父親は40キロのノロノロ運転で病院へ急ぐ。
そこに母親からケータイに電話が。もちろん父親はいったん車を止めて電話に出るのだった―――。

ここまででも道路交通法を皮肉りつつ、ルールの遵守や「正しさ」を過剰に求める風潮への痛烈な風刺になっている。
だが、ジュニアのOVはこれだけでは終わらない。そのオチにはさらなる強烈なアンチテーゼが描かれていた。

実際の映像は現在、『OV監督』の公式ホームページで公開されているので是非見て欲しい。
審査員の茂木健一郎も「今のVは視聴者が試される。これを見て笑える人もいるだろうけど、またこれでクレームが来るかも」と激賞。
番組史上初の審査員全員一致でのMOVに輝いた。
わずか5分35秒の映像だが、それは今の世間の風潮に対するジュニア流のクレームだった。

文=てれびのスキマ(http://d.hatena.ne.jp/LittleBoy/)

【参照リンク】
・『OV監督』公式サイト
http://www.fujitv.co.jp/ov_kantoku/ 

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