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テリー伊藤が語る、テレビ向きなヒール(悪役)岡本夏生のスゴさ
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テリー伊藤が語る、テレビ向きなヒール(悪役)岡本夏生のスゴさ

2014-10-02 17:00
    Filed under: AOL限定, チームブルー

    2014年秋。「放送作家」という仕事を夢見る人がいれば...もうその段階で才能はない。ましてや、AMラジオ番組の常連ハガキ(メール)職人から、得体の知れない職業をめざすなんて愚の骨頂。辛辣な言い方だが、これが本音。

    俺からの遺言だ。

    『作家』と『放送作家』。
    同じような響きですが、根本的にまったくの異業種。
    その違いを開口一番、俺(柳田)に叩きこんでくれたのが伊藤輝夫だった。

    「柳田さぁ、おめぇさぁ、岡本夏生って知ってるか?」

    「...はい。知っています!」

    俺の口調は極めて穏やかだったと思うのだが、その瞬間...空気が崩れ始めた。

    「...じゃよぉ、おめぇよぉ~!岡本の"アソコ"って見たことあんのかよぉ?」

    「岡本の"アレ??"...ないですけど」

    あまりにも突飛な"ことば"に思わず、笑ってしまった俺。
    その瞬間、伊藤はブチ切れた。

    麻薬が切れたベトナム兵のような錯乱状態。
    どこを見ているか予測がつかない斜視が完全に俺をとらえた。
    激昂しながら、俺の顔面30センチの距離。

    てめぇ~よぉ~~!それでもよぉ~放送作家志望かよぉ!
    オンナのよぉ、アレをよぉ、想像するだけならよぉ、家の中に引き籠って、
    チ×コしごきながらよぉ、小説書いてりゃいいんだよぉ~!」

    「... ... ...」
    何のことを、なぜこれほどまでキレられているのか?さっぱり見当がつかない。

    だが、伊藤の血走った眼球が俺をとらえて離さない。
    「ほほほほほぉ、放・放・放そうぉ、さ、さ、さ、作家ぁ~。テレビのよぉ、
    作家って言うのはよぉ~~ぉぉぉ!土方のオヤジや家を建てる大工と同じでよぉ~、現場の空気を吸いながら、図面に線を引いていかなきゃ意味ねぇんだよ

    ...言葉は乱暴。否、乱暴を超えた"凶暴"そのものであったが、納得できた。
    そんな俺の表情をすばやく感じとった伊藤の表情は一気に穏やかになった。

    「岡本夏生ってさぁ~、アイツ、かなりの馬鹿だと思うんだよなぁ...。
    でもよぉ~、アイツ、すげぇ~ イイんだよぉなぁ~。テレビ向きなんだよなぁ~!岡本ってさぁ、土台"ヒール(悪役)"なんだよなぁ...!プロレスのアブドラザ・ブッチャーと同じでよぉ、ヒール役ってさぁ、己自身を語ってチ×コ見せた瞬間、頭がイイ文化人に落ちこぼれてしまうんだよなぁ...」

    これぞ伊藤輝夫の凄味。
    モノごとの肝を、即効で鷲掴みする演出能力の高さであった。

    そんな伊藤との何気ないやりとりを頭の中で何度も再生しながら、俺は目的地に向かっていた。「全国ネットのテレビ番組で、整形手術をOKしてくれる女」を探し求めながら、新宿の外れにある雑居ビルの一室をめざした。

    東京のど真ん中で、何ものでもない透明人間の俺が、めざすのはテレビマンだ。
    ただひたすら、お茶の間を唖然とさせる事に生き甲斐を感じたいだけだ。

    「柳田君さぁ、○○美容クリニックに直接連絡すれば、宣伝料と引き換えにさ、 タダ同然で"整形手術"を公開してもいい"実験モニター"がいるハズだから、一度連絡して話を聞きに行ったらどうかなぁ...?」そう教えてくれたのは、俺より年下の先輩AD(アシスタントディレクター)だった。

    「ありがとうございます!」
    ...だが、その助言にヨダレを垂らしながら尻尾を振るほど、俺は軟ではない。
    とはいえ、家の中に引き籠り、迫る時間に逃げ込む大胆さもない弱い男だ。

    「おっ!柳田さん、久しぶり!マジで東京に出て来たんかいなぁ...。
    まぁ、あがり!あがり!(部屋に入れの意味)狭いトコやけど、言うても新宿は目と鼻の先や。...なんや?今日は背広も着んと汚い格好して?」

    雑居ビルの住人は、俺を温かく出迎えてくれた。
    ワンルームの居間に置かれた場違いなガラステーブル。
    住人は、冷蔵庫からアイスコーヒーを取り出しながら絶妙の間合いを計る。

    「で、ズバリなんの用ですか?」

    「......」

    「カネか?...女か?」

    「...オンナです。」

    「...夕方から、俺、仕事やでぇ。...いきなり、オンナって!
    ついに、柳田さんも水商売?それとも風俗?AV男優の道に入るんか?」

    「いやいや、僕が? ぜんぜん、違いますよ!」

    「なんやねんな(笑)?...ハッキリ言うてくれなワシ、わからんわ」

    「実は、明日の朝までに"テレビで美容整形手術をしてくれる女"を
    探してるんですが...。できれば、ムチャ不細工!幸薄そうな感じ1名!」


    「...いきなりやなぁ~アハハ!」
    眠らない不夜城。
    90年代初頭の新宿の外れには、鮫よりも獰猛な野生人が生息していた。

    (つづく)

    文/柳田光司


    【著者プロフィール】
    1968年生まれ。本業は『放送作家』
    現在『あの頃の、昭和館』という映像・音声ブログを配信中
    その中の音声コンテンツ『現代漫才論(仮)』では企画~出演~編集もやっています。
    これまで、いろいろ照れがあり...何ひとつ外に出していませんでしたが...。
    今はもう、そんな自分がアホらしくなり 精力的にアウトプットしていきます。
    Twitterアカウントは@anokoro_no
    https://twitter.com/anokoro_no
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