ロック史の伝説的ミュージシャンの一人セックス・ピストルズのメンバー、シド・ヴィシャスについてのスレッド「シドがパンクのアイコンになってるのが理解できない。何で人気なの?」での激論が熱過ぎたので紹介したい。
まず何の根拠もなく「シド・ヴィシャスは凄い」と思っている人は多いかもしれない。例えば椎名林檎の「ここでキスして。」の歌詞に出てくる「現代のシド・ヴィシャスに手錠かけられるのは只あたしだけ」のシド・ヴィシャスだという、それだけで「凄い」と決め付けているアホも多い筈だ。
そこで出た疑問「そこそこベースがうまいなら分かるけど ド素人だし特にガキが「シド最高!!」とか言って笑える」と言う懐疑派の意見に、「シドは永遠の厨房の憧れ」「ハードコアの連中からも崇拝されてる」という曖昧回答。
技術論を語ると、パンクは技術至上主義が進んだロックへの反発から来たと言われているから、「音楽の技術・センスだけを見れば、ふさわしくないかもしれない でもパンクは音楽的な技術だけじゃない シドに関する本を昔読んだけどすごい人生だったようだね シドは生き様がパンクだと言ったほうがピッタリかもしれない」とこれは大分核心迫ったコメントだ。
さらには「生き様がパンク これしかとりえのない男 そりゃ多少なり過激な生き方はロックスターのデフォだからな でも演奏ができねえと話にならない」。演奏技術よりアティチュードだが、さすがに「演奏下手過ぎだろ」というのがシド否定派の意見だ。
垂直にぴょんぴょんジャンプするのをポゴダンスと言うが、それを最初にやったのはシドらしい。 シドいわく「ライブ会場にいる敵をつぶすためにジャンプして上から潰す!」のが理由。
テキサス州ダラスのライブで、胸に剃刀で「Gimme a Fix(一発くれ!)」と刻み、客から投げ込まれた物が顔面にぶち当たり鼻血まみれになりながらベースプレイをしている姿は有名。そのパンクのイメージを体現したようなステージング。
あるスタジオの屋上で自転車で柵のない屋上の端々をブレーキもかけず猛スピードで何周もかけ回り、スタジオのスタッフに「おい、やめろ!落ちて死ぬぞ!」と注意された際、 「それだけかよ!」と言い放った。
アメリカツアー中のダラスのパーキングエリアで、カウボーイが食事をしているシドに、「お前がシド・ヴィシャスか? へっ 笑えるぜ! そんなにタフだっていうならこれは出来るか?」と、 自分の手の平でタバコの火を消して見せた。 それを受けたシドは、ステーキの乗る皿の上に腕を出し、そいつを睨みながら平然と自分の腕にナイフを突き刺して見せ、 腕から滴る血がステーキに垂れているのもものともせずに、 ステーキを食い続け、カウボーイを逃げ出させている。
その後も否定派は「結局お前らはシドのベースの事は触れないで 生き方がどうのこうので言い訳しかできないのな 冷静に言うとキ●ガイのエアベーシスト 金爆と変わらない」とDISするが、演奏云々で最後まで語るのはやや分が悪い程、「類を見ない頭のおかしい人」というのはよーく判った筈だ。
ただ凄いを鵜呑みにしない姿勢は素晴らしい。オジサンたちが信望する「伝説を疑ってみる」というのは若者にとっては極めて重要な作業だと思う。とはいえやはりシド・ヴィシャスはロック史に残る奇人変人で、とんでもなく下手糞なパンクベーシストということだ。もしシド・ヴィシャスに興味があったら是非イギリス映画「シド・アンド・ナンシー」(1986年)を見て欲しいと思う。
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