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スチャダラパーをこれから聴くリスナーのための超入門編ベスト5
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スチャダラパーをこれから聴くリスナーのための超入門編ベスト5

2015-05-05 22:00
    Filed under: カルチャー, 音楽

    今年、1stアルバム「スチャダラ大作戦」のリリースから25周年を迎えるスチャダラパー。
    オリジナル・アルバムだけでも今年1月リリースの「1212」で12枚目のリリースを重ね、客演も含めれば尋常じゃない数の楽曲をもつスチャダラの中から5曲をチョイスするとは......非常に乱暴なのは分かっていますが、それでも、これからスチャダラパーを聴く為の、超入門編な5曲を選びました!

    ・「今夜はブギー・バック (smooth rap) featuring 小沢健二」


    小沢健二とのタッグで生み出されたこの曲は、スチャダラパーの大定番にして、最大のヒット曲。オザケンによるサビの流麗なヴォーカルは、誰もが耳にしたことがあるはず。J-POPとして享受されたこの曲だが、深く太すぎるキックの音色やシンプルなループ・トラック、そして「って俺って何にも言ってねーっ」というリリックがまさしくその通りな、意味性をほぼ剥奪したナンセンスと言ってもいい歌詞の内容など、実はJ-POPとしては常識はずれな構造を持っている。しかし逆に言えば、それなのにとてつもなく格好いいと思わせるこの曲の「強度」こそが、未だにこの曲が愛される理由だろう。宇多田ヒカルやKREVAなど、数々のアーティストにカバーされている。
    スチャダラパーの他にTOKYO NO.1 SOUL SET、脱線3、かせきさいだぁなどで結成されていたクルー:LB NATIONが集結した「GET UP AND DANCE」などもお聴き逃しなく。また、他アーティストへの参加曲は客演ベスト「CAN YOU COLLABORATE?~best collaboration songs&music clips~」に多く纏められている。


    ・「ついてる男'94春"」


    「その発想があったか!」というセンスオブワンダーの提示は、やはりスチャダラパーのお家芸。様々なインタビューでも語られている通り、「ダウンタウンなどのコントのようなセンスを、ラップで作るには」というアクロバティックな制作思考法は、数々のスチャダラならではの世界を生み出してきた(そもそも、「スチャダラ」というワード自体、宮沢章夫、シティボーイズ、竹中直人らが構成していたコント・ユニット:ラジカル・ガジベリビンバ・システムの舞台タイトルからのインスパイア)。
    その中でも、「普通の人」と「ついてる男」の見方でどう変わるのかを描いた「ついてる男'94春」は、そういったスチャダラパー的思考法の白眉といえるだろう。例えば、「うっかり犬のフンを踏んでしまった時、普通の人は『ブルー入る』が、ついてる男は『超幸ウン』と捉える」という視点の切り替えが、「電車の乗り遅れ」「家の災難」など、様々なシチュエーションで例証される。そういった「ズレ」の方法論は「後者-THE LATTER-」や、近いところでは木村カエラとの「Hey! Hey! Alright」など、スチャダラパーならではの「オモロ」な世界観で現れる。


    ・「4ch FUNK」


    Bose/ANIの2本のマイク、DJ SHINCOのスクラッチ、笹沼位吉のベースという、4つのサウンド接続(4チャンネル)のみで作られた「4ch FUNK」。その意味でも、恐ろしくシンプルな構成で組み立てられた曲。だが、丁寧かつファンキーに奏でられるベースと、そこに併せて刻まれるスクラッチとブレイクビーツ、そしてタイトな2MCのユニゾン・ラップと、シンプルイズベストとは正しくこの曲の事であり、ヒップホップマナーに基づいた一曲。そういったBボーイ性は「B-BOYブンガク」などから推し進められてきたが(原初的には「クラッカーMC'S」か?)、この曲が収録されたアルバム「fun-keyLP」(98年リリース)からより顕著に。9th Creation 「Much Too Much」をベースに、ドラム・ブレイクの2枚使いが完璧な「転が...」、「YO」という入りが格好良すぎる「CHECK THE WORD」など、これ以降のスチャダラパーのタフな路線を提示するような佳曲ばかりのアルバム。"Let It Flow Again feat.ロボ宙"など、ソリッドなスチャダラパーは「強い」。


    ・「Shadows Of The Empire」


    スチャダラパーといえばBose氏が90年台にはTV「ポンキッキーズ」のMCを手がけるなど、キャッチーな雰囲気を醸し出していた。が、デビュー作「スチャダラ大作戦」(89年リリース)での、当時の流行だったビートパンクに対するディス曲「ヒートハングSuckers」や、「タワーリングナンセンス」(91年リリース)収録の国際派気取りを揶揄した「ボーズ Bar -「Yo! 国際Hah!」 の巻-」など、初期作から辛辣なリリックやプロテスト性が多かったのもスチャダラパーの事実。そして「The 9th Sense」(04年リリース)から、そういった辛口なリリックが社会性を帯びた形で強く表現されてきた。
    ただ、初期の曲と異なるのは、一曲をまるまる一つのテーマで分かりやすく切り取るのではなく、曲の中に様々な事象を混ぜながら、結論らしきものを浮かび上がらせる(結論を押し付けないのも特徴)。そういったある種の現代批評は「Shadows Of The Empire」やアルバム「CON10PO」収録の「ジャカジャ~ン」、「11」収録の「Antenna of the Empire」、そしてニューアルバム「1212」の随所に見て取れる。


    ・「ザ・ベスト」


    スチャダラパーの最新作となるアルバム「1212」。清水ミチコやチャットモンチーといった客演も含めて、非常にカラフルな充実作となって完成している。そして同時に「Shadows Of The Empire」の稿でも書いたとおり、震災以降の日本や原発問題、政治状況など、社会批評性が随所に現れている。しかし、そう書くと非常にシリアスな作品に感じられるかもしれないが、そうではなく聴かせるのがのがスチャダラパーの手腕だろう。例えば、「ゲームボーイズ」(91年)の続編である「ゲームボーイズ2」では、ゲームの移り変わりを一つのテーマにしているが、そこに自衛権の問題が挟まれたり、風見しんご「涙のtake a chance」のオマージュとも言える「哀しみ turn it up」では、そういったファニーな原点でありつつも、歌詞にはデモの光景が織り込まれるなど、まさに「スチャダラパーの視点から見た<今>」が、ポップな形に内包されながら切り取られる。
    そして、そのアルバムの中の一曲である「ザ・ベスト」。今を切り取ったアルバムの中で、この曲は過去に対する憧憬を歌いながらも、それは「人工甘味料効いた過去」だとしっかりと切り捨て、「今が最高」「今も最高」「今に最高」とメッセージする。25年経ってもそう言えるタフさに感動させられる。

    ......もちろんリスナーの方にとっては、「この曲入ってないじゃん!」「あの曲を抜かすなんて!」は山ほどあるかと思いますが、これから聴き始める方で、この原稿でちょっとでもご興味持っていただけると幸いです。ちなみに、「ザ・ベスト」以外の4曲はベスト「THE BEST OF スチャダラパー 1990〜2010」に全て収録されております!

    スチャダラパー "中庸平凡パンチ" (Official Music Video)


    ■公式サイト
    スチャダラパー 公式サイト
    http://schadaraparr.net/

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