教育のために奮闘する教師の実話を描いた三浦貴大主演『サムライフ』の監督は、本作が監督デビュー作の森谷雄だった。実は森谷監督、「天体観測」(02)、「33分探偵」シリーズ(08・09)、「深夜食堂」(09)、「コドモ警察」(12)、「みんな!エスパーだよ!」(13)などの大ヒットドラマを手掛ける敏腕プロデューサー。
そのハードワーカーズを絵に書いたような才人が自分でメガホンを握るにあたって、名プロデューサーだからこそ感じるプレッシャーがあったとか。超激務な男が過酷な映画監督業に身を投じて、最終的に得たモノとは――?
――『サムライフ』で映画を監督するにあたって、プロデュース経験が役に立ちましたか?
日頃プロデュースをしている時は、完全な品質保証をしなくてはいけないと、責任を持ってやっています。自分がかかわる以上は絶対に面白くないといけない。仮に納得しないモノを出して、あれこれ言われることもくやしい。それよりなにより、観ていただくかたが、音楽のほんのちょっとしたタイミングで感動することがあれば、編集のリズムの違いで感じかたが変わることもある。
そういうことを、いろいろな監督と一緒にディスカッションしながらやってきた。だから、今度は自分が監督する段になって、できなかったらダメじゃないかということは思いながらやっていたので、すごく追求してしまいましたけどね。動いてから1年間くらい集中していました。
――撮影中はトレビドラマの制作など、ほかの仕事も大量にこなしていたわけですよね?
そうですね。僕は会社をやっていて、プロデュース業、企画業もあって、いくつも並行していましたが、そのなかで撮影が始まりました。それは過酷と言うか、クランクインの時に自分がプロデュースしているドラマが同時にクランクインしたんです。それは長年、一緒にやっている福田雄一さんの作品で、「新解釈・日本史」(14)だったんですけど。
ムロツヨシさんも初主演で、とにかくごめんなさい、2週間だけ許してくれと、LINEして(笑)。だから『サムライフ』がクランクアップして、上田からすぐにその現場に行きました。それくらい気になっていて、でもこっちも集中しなければいけなかった。ヘンな話、社長業もあるので、社員の給与承認などもしなければいけない、月末の払い込みの承認作業もあるしで、とんでもない日々でしたね。
――ヘンな話、『サムライフ』の撮影のスケジュールを変更とか、調整はしなかったのですか?
でも、映画はタイミングだから、その期間を逃してしまったら、もうダメなんですよ。主演の三浦貴大君の出演も、タイミングの妙でした。『ぶどうのなみだ』(14)の撮影を、北海道の雪山でしていた時に、三浦さんの事務所の社長に直電して、三浦君しかいないとお願いしました。最初は2月に撮影したかったけれど、そこは別のオファーがあったそうで、一度暗礁に乗り上げた。でも、待とうよって。
――なるほど、三浦さんの体が空くタイミングを待ったわけですね。何か影響は出ましたか?
やがて1か月待てばスケジュールが調整できる事がわかって、3月の下旬にインしたんですけど、タイミングなんですよ。その年の2月、上田は大雪だったんです。2月だったら、この映画の映像は撮れなかった。風景が全部真っ白でしょう。だから映画って、タイミングなんですよ。まさしく、そういうことが起こった。
――まさしく映画製作は、奇跡の積み重ねですね! しかし今回、自分で監督業もこなしたことで、映像の仕事人としてパワーアップしましたね。仕事への姿勢も変わりそうです!
これからご一緒する監督さんたちは、面倒くさいなって思っているかもしれないですね(笑)。仮に、これくらいのリズム感で見せたいけれど、どうしても編集で切れないみたいなことが起こった時に、自分で監督もしたので、ある程度原因がわかるわけじゃないですか。
だから、これから目指す若い人たちは、この人、監督もやっているしな、って、嫌に思うかもしれない。でも全然、立場変われば人変わるで、むしろ、初めて撮ります、みたいな人でも、その人の狙いや、その人が大切にしたい点が瞬間的に理解できるようになったと思うので、やりやすいと思いますよ。プロデューサーとしてもアドバイスしやすいので、だから成長がありました。パワーアップですね(笑)。
https://youtu.be/BP3gMIzwx3U
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【ブルーレイ】¥5,000+税、【DVD】¥4,000+税
【特典映像】(予定)●未公開シーン●メイキング●舞台挨拶
【封入特典】(予定)ブックレット
発売元:アットムービー 販売元:ポニーキャニオン
(C) 2015 「サムライフ」製作委員会
http://samulife.ponycanyon.co.jp/
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