ALS(筋委縮性側索硬化症)といっても、あまり耳慣れない病気だと思います。
実際のところ、大多数の人がこの病気に縁がないまま生涯を終えますが、罹患してしまった方にとっては生活に深刻な影響を及ぼします。
意識ははっきりあるものの、身体を動かすための神経組織が徐々に麻痺し、脳が筋肉に与える命令が伝わらなくなるため、歩いたりすることはもちろん、寝返りを打つことも困難になります。病状が進展すると発生も難しくなるため、眼球を動かして意思表示を行う方法で、ご家族や医療従事者に意志を伝えなければなりません。
実は、筋委縮側索硬化症(ALS)自体、かなり前からその存在が知られていました。しかしながら、治療法はおろか、なぜ発症するかについてもほとんどといっていいほど分かっていませんでした。
慶応大学の研究チームは、ips細胞(人工多能性幹細胞)とゲノム編集という技術を使って、ALSと同様の細胞を人工的に作成。チームはFUSと呼ばれる筋委縮側索硬化症の患者に見られる遺伝子に着目。
患者の細胞の提供を受け、ips細胞に変化させ、神経細胞に分化させて観察したところ、異常な個所にタンパク質の塊を作って、神経細胞が死んでしまう状態を確認。
また健康な人の細胞をips細胞化し、FUS細胞にゲノム編集技術を使って、ALS患者と同じような異常を生じさせたところ、やはり遺伝子が作るタンパク質が異常な場所で塊を作り、神経細胞が死んでしまうことが確認されました。
慶応義塾大学の岡野栄之教授らは、FUS遺伝子の異常がALS発症の原因と特定し、米科学雑誌『ステム・セル・リポーツ』に発表しました。
病気の存在は知られていたものの、対症療法も満足にないまま相当な年月が過ぎていますが、もし治療薬の開発に成功したら医学界の大発見になるのは間違いありません。
※写真はイメージ 足成より http://www.ashinari.com/2013/02/28-376733.php
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(執筆者: 松沢直樹) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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