main-10-1024x576.jpgおもしろい。しかし、課題もある…。新世代のゲームハードがリリースされた直後や、インディゲームシーンなどにおいてはこうした粗削りな作品が多く見られる。粗削りな感覚は受け入れがたいという人もいるだろう。しかし、「クセ」の強さが魅力に感じるという人もいる。筆者も、どちらかといえば「クセ」を魅力に感じる人間だ。そんな筆者が「クセ」を魅力に感じた作品。それが、『METAL MAX Xeno Reborn(メタルマックスゼノ リボーン)』だ。 1-1024x576.jpg

戦車を相棒に荒廃した未来を生き抜くRPG『METAL MAX(メタルマックス)』

『METAL MAX(メタルマックス)』シリーズは、ファミコン時代から続く息の長いRPGシリーズだ。ただ、誰もが知る人気シリーズというわけではないように思う。そもそも『METAL MAX(メタルマックス)』シリーズが目指しているのは王道ではなく、異端。初代『METAL MAX』がリリースされたのは1991年5月。

その前年の1990年には『ドラゴンクエスト4』『ファイナルファンタジー3』『女神転生2』といった今でも続く人気RPGが発売されており、初代『METAL MAX』発売の2か月後、1991年7月には「ファイナルファンタジー4」が発売。家庭用ゲームにおいてRPGが人気ジャンルとしての地位を固めたと言っていい状況だった。

こうした中でリリースされた初代『METAL MAX』のキャッチフレーズが、「竜退治はもう飽きた!」。RPGといえば、イコール、ファンタジーといっていい当時の状況に対し、明確に異論を唱えるキャッチフレーズだ。

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実際、初代『METAL MAX』はその内容も異端だった。世界が崩壊した後の荒野を舞台に、主人公は戦車に乗って戦うという設定。そして、他のRPGが、ゲームの中でいかにストーリーを語るかという方向性にシフトしていったのに対し、初代『METAL MAX』は自由度の高さを打ち出していた。

ストーリーに縛られず自由に世界を探索、賞金首となっているボスたちと戦いつつ、荒野の暮らしを謳歌する…。2020年現在から振り返ってみれば、初代『METAL MAX』は2Dコマンドバトル型RPGという形で表現されたオープンワールドゲームといってもいいだろう。当時としては異端。だからこそ、粗削りな魅力に溢れた作品だった。

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「Xeno(ゼノ)=異物」というタイトルに相応しい先制射撃システム

本作『METAL MAX Xeno Reborn』は、そんな『METAL MAX(メタルマックス)』シリーズの最新作で、前作『METAL MAX Xeno(メタルマックスゼノ)』のリメイク作だ。タイトルにある「Xeno(ゼノ)=異物」という言葉の通り、ナンバリングを継承した作品ではなく、別系統の作品。ただし、基本的な内容は『METAL MAX』シリーズの伝統に従っている。

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主人公は戦車(=クルマ)に乗り、崩壊後の荒野を探索。敵と戦いながら、戦車強化用の素材を集め、戦車を強化していく。崩壊後の荒野には「WANTED」と呼ばれる強力な賞金首モンスターが存在し、これらを倒すことも目的のひとつだ。大きなストーリーの流れはあり、目的地も提示されるものの、自由度は高く、様々なサブクエストも存在している。

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また、機械と生命体が融合した独特なモンスターデザインも、これまでのシリーズ同様。ただ、そんな中でこれまでのシリーズにない、まさに「Xeno(ゼノ)=異物」なゲームシステムも用意されている。

それが先制射撃システムだ。

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本作のバトルシステムはこれまでと同様、コマンドバトルが採用されているが、バトル時以外でも敵を攻撃することができる。これが先制射撃。また、バトル中も自由に移動することができ、敵から一定以上離れればバトルを離脱できる。

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先制射撃を使えば、離れた場所から一方的に敵を倒すことができる。よくよく考えれば、「戦車」がテーマの本作のバトルシステムとして、これは非常に自然だ。

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また、バトル中の自由移動についても、本作の世界観とマッチしている。本シリーズは敵キャラクターの配置についても特徴的で、初期レベルでは到底勝てない敵が、ごくごく序盤から登場する。見方によってはゲームバランスが壊れているということになるのだろう。

しかし、強い敵から逃げつつ生き抜いていくというゲームプレイは、世界崩壊後の荒野を生き抜いている感じを強く体験させてくれる。いわば、サバイブ感。

そしてこのサバイブ感を高めているのが、バトル中の自由移動だ。自由に動き、敵と距離を取って逃げるという行為はとてもスリリング。強敵から見事逃げおおせた際には「フー、生き抜いたぜ」というサバイブ感を強く味わえる。

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ただ、その一方で先制射撃システムが足を引っ張っている部分もある。というのも、手間が多いのだ。先制射撃を行うには、まず、コマンドメニューを開き、その上で「攻撃」を選択。画面が射撃モードへ移行するので、ここで敵をターゲッティングして射撃を行う。

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これの何が手間かというと、敵1体ずつに対してこれを行わなければならないところ。本作は、敵の姿がすべてフィールド上で見えるシンボルエンカウント方式。敵は視界を持っており、敵の視界にい続けると、ENCOUNTゲージがアップ。ゲージが満タンになるとバトルに突入する。

なので、敵の視界外から先制射撃で叩いていくのが基本。見える敵すべてに先制射撃を行っていくことになる。この時、敵が大量にいれば、当然、その分コマンド入力が発生。敵から反撃を受けるというスリルがない中、コマンド入力を繰り返すことになるので、とても作業感が強い。

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これについては、先制射撃ボタンを用意してもよかったのではないか…。プレイを開始して数時間はそう思ったのだけど、よくよく考えると、そう単純なものでもない。ボタン一発で射撃可能にしてしまうと、本作のゲーム的な比重が「コマンドバトル」から「射撃モード」へとズレてしまう。それはあまりよろしくない。

「射撃モード」の比重があまりに高くなってしまうと、『World of Tanks』のような戦車モノTPSと変わりなくなってしまうからだ。「Xeno(ゼノ)=異物」ではあっても『METAL MAX』である以上、「コマンドバトル」であることは重要だろう。そう考えると、これはなかなかに悩ましい。恐らく開発サイドも、相当試行錯誤してこの形にしたのだと思う。

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もうひとつ、個人的には気になった点が、コマンド入力という形式なので、射程範囲が確実に分かってしまうこと。

先制射撃可能かどうかは戦車が装備している兵器の射程範囲に依存している。なので、先制射撃のためには、射程範囲内まで近づかなければらない。一方、敵に近づくということは敵の視界に入ってENCOUNTゲージをアップする危険性を伴うということでもある。

なので、どこまで近づいて撃つかというチキンレースのようなスリルが発生してもおかしくはない。ただ、コマンドを表示すれば、撃たずとも射程範囲内に入ったことが理解できてしまう。これについては、射程範囲外からでも撃つことができ、撃つことで敵に気づかれバトルに入ってしまう…といった形の方がよかったのではないかと感じた。

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…と、ここまで先制射撃システムの良かった点と気になった点について書いたが、まとめると、個人的には「だからいいのだ」と思う。完成度高くまとまっているのではなく、粗削り。「もっとこういうシステムもあったのでは…?」という未来の可能性も持ちつつ、おもしろさも味わえる。これもまた魅力なのだ。

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オレは蘇る! そして死力を尽くしてお前を超える! 育成とバトルの魅力

ちなみに筆者が『METAL MAX』シリーズをプレイするのは、スーパーファミコン『メタルマックス2』以来。なので、かなりのブランクが開いている。そんなブランクを吹き飛ばすほど「これがやりたかったんだよ!」と感動させてくれたのが、本作のバトルと育成だ。

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本作において戦車はSPというパラメーターを持っている。SPはダメージを受けることで減っていくが、0になっても戦車が死ぬことはない。SP0は装甲がなくなったことを意味し、SP0の状態でダメージを受けると、ダメージによって戦車の装備が破壊されていくという形になっている。なので、SPが0になっても戦車が完全に破壊されるまで戦車の中に籠もって戦うことが可能だ。

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サラっと書いたが、この仕様がアツい…! 強大なボスとの戦闘においては、SPが0になり、次々装備が破壊されていく中、ボス打倒を目指した行動を繰り返していく。ボロボロになりながらも戦う…。これ、アツいでしょ?

テレビアニメ『マジンガーZ』の最終回でロケットパンチもミサイルも効かず、ボロボロになりながら戦うマジンガーZ…。あるいは、コミック版『ゲッターロボ』で、ドロドロに溶けるゲッターロボと共に戦った巴武蔵…。

「死ぬかもしれない…いや、死ぬ。でも…でもやるんだよ!」こうした、滅びの美学ともいうべきアツさが、『METAL MAX』のバトルにはあるのだ。ファミコン時代からこの仕様、大好きだった。たまんねえぜ。

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さらに輪をかけてたまらないのが、リベンジのアツさを感じさせてくれる育成バランスだ。先に書いた通り本作には、その時点でのレベルでは到底勝てない敵が当たり前のように登場する。なので、こうした強敵とのバトルは後回し。先を急ぐことになる。

本作において象徴的なのは、「WANTED」として最初に出会うことになる、「デスデリバラー」だろう。「デスデリバラー」遭遇時点のプレイヤーは、倒すために必要となる対空兵器を持っていない。このため、ナビゲーションを担当するNPC「ポM(ポエム)」から、振り切って先に進むことを提言される。

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こんな風に、強敵を振り切って逃げる、あるいは迂回して逃げる…といった展開は本作につきもので頻繁に登場する。
そして迂回して逃げた後に待ち受けているのは、素材アイテム。先に進んで素材アイテムをゲットすることで、より強力な戦車向け装備が手に入る。

戦車を強力な装備でカスタマイズし、かつて逃げた敵にリベンジ! というわけだ。この部分がよくできており、ただ能力値的に強くなるというだけでなく、装備の名前や特性などから「この装備って、前に勝てなかったあの敵に効くんじゃないか…?」と推測できるものになっている。強敵からスリリングに逃げ、逃げた後で強くなってリベンジ! シンプルな流れだが、この流れは非常におもしろい。

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挑戦を評価したい! 今後のシリーズ作にも期待

最後にまとめると、本作は確かに、粗を持った作品だ。その代表格が先制射撃だと筆者は思う。しかし、粗と同時に強い魅力も持っている。ボスとのバトルや育成は紛れもなくアツいし、そもそも先制射撃にしても、粗だけでなくおもしろさを有した試みなのだ。

せっかくゲームを遊ぶのなら粗がなく完成度の高い作品をプレイしたいという人に手放しでオススメすることはできないが、問題はあれど挑戦心に満ちた、トガッた作品をプレイしたいという人であれば、プレイする価値はあるだろう。本シリーズは今後、リメイクではなく完全新作となる『METAL MAX Xeno Reborn 2(メタルマックスゼノ リボーン2)』『コードゼロ』が予定されているという。

こうした今後の作品ではきっと、今回の挑戦結果を踏まえたシステム改善が行われることだろう。「Xeno(ゼノ)=異物」という言葉に相応しい今回の挑戦が、今後の作品でどう改善・進化していくのか。その結果が楽しみだ。

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メタルマックスゼノ リボーン ReBORN TO BE WILD 戦車と犬と人間のRPG再誕|The New Generation of METAL MAX SERIES|新世代メタルマックスシリーズ ポータルサイト:
http://metalmaxxeno.com/mmxr/[リンク]

文/田中一広

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