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『アーマード・コア6』レビュー:ロボットカスタマイズを楽しむため巧妙に調整された高難易度
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『アーマード・コア6』レビュー:ロボットカスタマイズを楽しむため巧妙に調整された高難易度

2023-09-06 20:00
    かれこれ10年以上続編が発売されてこなかった「アーマード・コア」シリーズの最新作、『ARMORED CORE VI FIRES OF RUBICON(アーマード・コア6 ファイアーズ・オブ・ルビコン)』(以下アーマード・コア6)がとうとう発売された! 先行プレイ記事(https://getnews.jp/archives/3435336)で記載した通り、筆者ももちろん本作を購入した。

    先行プレイ時には本作の限られた部分しか触れられなかったので、あらためてじっくりと本作の内容を紹介したい。

    姿勢制御装置を巡る立ち回りがアツい! 『アーマード・コア6』

    『アーマード・コア6』は、フロムソフトウェアのロボット3Dアクション「アーマード・コア」シリーズの最新作。頭部や腕部、脚部といったパーツを組み合わせてロボットをカスタマイズする「アセンブル」要素と、ロボットを実際に操作し戦う3Dアクション要素が魅力となっている。

    最新作である『アーマード・コア6』ならではの要素は、先行プレイ記事でも触れた「スタッガー」をめぐる立ち回り。「スタッガー」とは、本作に登場する機体の姿勢制御装置がダウンした状態のことを指す。

    本作に登場する機体の多くは、姿勢制御装置がアクティブな状態だとダメージのほとんどを装置が緩和してしまう。このため、ダメージを与えるためにはまず姿勢制御装置をダウンさせる……「スタッガー」状態を発生させなければならない。

    では「スタッガー」はどうすると発生するのか? それには、姿勢制御装置へ衝撃を与え続ける……つまり、攻撃をヒットさせて「スタッガー」ゲージを満タンまで貯めればいい。ただし、普通に攻撃するだけでは効率よく衝撃を与えることができない。

    効率よく「スタッガー」を発生させるには、異なるタイプの攻撃を同時にヒットさせるだとか、より衝撃力の高い武器……主に接近戦用武器を使って攻撃するだとか、そういった立ち回りが求められる。ただ、姿勢制御装置へ与えた衝撃は時間経過とともに回復してしまう。つまり、制限時間があるということだ。

    しかし、「スタッガー」を狙ってもそう簡単には発生させられない。なぜなら、姿勢制御装置は主人公が乗りこむロボットの<アーマード・コア>にも搭載されている。このため的確に攻撃をヒットさせる前に、まず敵の攻撃を回避しなければならない。

    とはいえ、回避してばかりでは、敵の「スタッガー」ゲージが回復してしまう。これがなんとも難しい!

    こうした立ち回りを骨の髄まで思い知らせてくれるのが、最初のボスとしてプレイヤーの前に立ちはだかるヘリコプター。筆者は先行プレイの際にこのヘリコプターを倒すことができなかった。

    プレイに慣れないうちは、そもそも接近する最中にヘリコプターの攻撃を受けてしまい、こちらが「スタッガー」状態になって倒されていた。やがてプレイに慣れてきたものの、なかなかヘリコプターを「スタッガー」させられない……。そんなこんなで先行プレイ自体がタイムオーバーになってしまったという次第だ。

    本作購入後、再びヘリコプターと戦ってようやく勝つことができたものの、1時間ほどかかってしまった。発売にさきがけ一度プレイしていたというのにこの状況。本作を開発したフロムソフトウェアが他に『ダークソウル』や『SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE』といった、いわゆる「死にゲー」を手掛けていることから、本作も「死にゲー」なのかと思わざるを得ない高難易度だ。

    実際に筆者は先行プレイレポートで本作に対し「死にゲー的な歯ごたえ」と表現した。ただ、今回じっくりプレイしてみて、その印象は変化している。

    3Dアクションと並ぶ本作もうひとつの柱! 「アセンブル」

    どうして「死にゲー」の印象が変化したのか? その理由のひとつがロボットの<アーマード・コア>をカスタマイズする要素、「アセンブル」。ヘリコプターを倒した後に解放される機能なので、筆者は先行プレイ時に触れることができなかった機能だ。

    だがこの「アセンブル」こそが、フロムソフトウェアの他のゲームにない、本作ならではの魅力といえる。

    「アセンブル」は武器や頭部、腕部や脚部といった武装・パーツを交換し、ロボットの<アーマード・コア>を自由にカスタマイズできる機能だ。武器を変えれば攻撃性能が変化するし、脚部を変えれば移動性能が変化する。ただこれだけだと、たとえば『エルデンリング』で装備を変更するのと変わらない。

    そうした装備変更と「アセンブル」との違いは、単なるパラメーターの変化に留まらず、アクション性が大幅に変化する点だ。

    この点は、脚部を変更するとよくわかる。移動速度に優れる2脚、ジャンプ性能に優れる逆関節、ホバー性能を持つ4脚、硬直なしで移動しながら攻撃可能なタンク。異なるタイプの脚部を装備すると、アクション性そのものが別物に変化していく。

    「アセンブル」によって機体性能が大きく変化するため、「アセンブル」次第で攻略方法も大きく変わってくる。苦戦していた局面も「アセンブル」を変えれば楽にクリアできる……なんてことも当然のように起こり得るのだ。この点は、フロムソフトウェアのこれまでの「死にゲー」とは異なる点だろう。

    「アセンブル」は決して本作のサブ的要素などではない。アクション要素と並び立つ、メイン要素のひとつなのだ。

    そして、「アセンブル」の楽しさは性能的なカスタマイズに留まらない。見た目や設定を楽しむという点も、「アセンブル」の醍醐味といえる。

    本作の背景となるストーリーは、惑星ルビコンで発見された新資源「コーラル」をめぐって、様々な企業が利権を争っている……というもの。本作に登場するロボットの<アーマード・コア>のパーツは、こうした企業が作ったものであり、それぞれのパーツにどんな企業がどんなコンセプトで開発したのかが設定されている。

    つまり、単純に性能だけでカスタマイズするのではなく、各企業のカラーを踏まえてどうカスタマイズするか?という楽しみ方があるのだ。ガンプラを作る際、「このザクは●●基地所属で、かつてこんなパイロットが搭乗し、こういう戦い方をしたからこの部分の武装と塗装がカスタマイズされている」……なんて妄想しながら作っている筆者としてはもうたまらない。

    筆者のような人間にとっては、「架空企業の兵装を自由に組み合わせていく」という点が、ひとつの娯楽なのだ!

    ちなみに、本作の主人公である強化人間621は各企業からの依頼を引き受ける独立系の傭兵という立場なので、ストーリー的にも各企業の文化を知ることができる。なので、あの企業の担当者が気に入らないから、パーツも使わない……なんていうストーリーに基づくカスタマイズも楽しい。

    難しいが「死にゲー」という印象ではない!? 適切に管理された構成

    また本作の構成も、「死にゲー」という本作の印象を変えることとなった理由のひとつで、ステージ単位に区切られたミッションをクリアしていくというかたちになっている。

    ゲームはまずミッション選択画面から選んでスタート。敵をせん滅する、特定のオブジェクトを破壊する……といった目的を達成するとミッションクリアとなり、再び選択画面に戻ってくる。

    RPGのように区切りなく進行していくのではなく、ミッションが明確に区切られたかたちになっているのだ。区切りに到達すると機体パーツを購入するためのお金が得られる他、耐久力や弾薬といったリソースは全回復する。

    また、すべてのミッションが高難易度というわけではない。確かにボス戦は高難易度だが、ミッションによっては機動力を活かしてマップ内のオブジェクトをスピーディーに破壊していく、爽快感重視のものも存在する。

    さらに高難易度ミッションにおいても、ミッション内でチェックポイントや回復ポイントといった要素が用意されている。基本的に強力なボスの前には回復ポイントが用意されており、耐久力も弾薬もフル回復した状態で挑戦可能だ。仮に敗北したとしても、ボス直前のチェックポイントから再挑戦できるため、フロムソフトウェアのこれまでの「死にゲー」と比べると、印象は大分異なる。

    「アセンブル」を楽しむための高難易度!

    「死にゲー」という印象ではないものの、その一方で本作は間違いなく難易度が高い。その証拠に最初のヘリコプター以外にも、巨大採掘艦ストライダー、ジャガーノート、バルテウスと、「もうコイツ倒せないんじゃないか?」と心が折れそうになるボスが待ち受けている。ただそれでも、筆者の印象としては「死にゲー」ではない。

    ではどんな印象なのかといえば、それは「カスタマイズを楽しむために用意された高難易度」!

    「カスタマイズを楽しむために用意された高難易度」……なんじゃそら? と思うだろう。この言葉を説明するために、ゲーム以外の話で恐縮だが「ミニ四駆」を引き合いに出したい。モーターで動く四輪駆動車の模型……あの「ミニ四駆」だ。

    「ミニ四駆」は単純に組み立てるだけでも十分楽しめるのだが、複数人でコースを走らせ1位を競う……というレース的な楽しみ方も持っている。ただコースを走らせるといっても、ラジコンやドローンと違って「ミニ四駆」は操縦することができない。そもそもタイヤが左右に動かないため、スイッチを入れたら電池がなくなるまで直進しっぱなしとなる。

    そんなミニ四駆が一体どうやってコース通りに走るのか? 答えは単純で、コースに用意された「壁」がガイドとなって、ミニ四駆をコース通りに走らせる。

    では、直進しかしない車がコース通りに走るのに、どうして順位に差が生まれるのか? ここで関わってくるのが、「カスタマイズ」だ。

    ミニ四駆はモーターや電池、タイヤやボディといったパーツをカスタマイズすることができる。たとえば、「ミニ四駆」のスピードをアップさせたければ、高トルクのモーターやエネルギー密度の高い電池を使えばいい。だがそうなると、壁のガイドに沿って進む都合上、カーブでは高速で壁に激突してしまい、場合によってはコースアウトしてしまう。

    そこで「ミニ四駆」には「サイドローラー」というパーツが用意されている。文字通り、「ミニ四駆」のサイド(側面)に取り付けるローラーで、このローラーが壁と接触、回転することでコースアウトせずスムーズにカーブを曲がれるようになるのだ。ただ、ローラーを取り付ければその分「ミニ四駆」の重量は増し、速度が低下してしまう。

    だったら、「ミニ四駆」のボディを削って軽量化すればいい。だがそうすると、ちょっとした衝撃で壊れやすくなるので、衝撃吸収と補強を兼ねたバンパーを装備……いや、そうなるとまた重くなる……。

    こちらを立てればあちらが立たず! F1に代表されるモーターレースに共通する典型的ジレンマだ。

    しかも、「ミニ四駆」のカスタマイズに正解はない。コースの設計によって、どんなカスタマイズが正解になるのかは変わってくるからだ。

    だから、コースを攻略するには、セッティングを変えつつ何度もコースを走らせるしかない。だが、それが楽しい。「このセッティングではどうだろう?」「今度はうまく行くかな?」とあれこれ試すことこそ、「ミニ四駆」における「カスタマイズ」の楽しさなのだ。

    ここで本題である『アーマード・コア6』に話を戻そう。本作において「ミニ四駆」のコースに当たるものこそ、高難易度ボスだ。

    「ミニ四駆」ではコースを攻略するため、セッティングをあれこれ変えていく。これは言い換えれば、セッティングを変えない限り、ゴールインすることすらままならないということを示している。コースの難易度が高いからこそ、カスタマイズの必要性に迫られているのだ。

    本作のボスもそう。ボスが強いからこそ、「アセンブル」の必要性に迫られる。

    ただ本作の場合、「ミニ四駆」と違って、プレイヤーの操作テクニックが介入する。プレイヤーが一切操作できない「ミニ四駆」ではセッティングがすべて。

    しかし『アーマード・コア6』では攻略に向いていない「アセンブル」だとしても、プレイヤーの操作テクニックが卓越していればクリアできてしまう。なので「アセンブル」をいじらずに、操作テクニックの習熟によって攻略しようとするプレイヤーもいるだろう。

    もちろんそれはそれで楽しみ方のひとつ。ただ本作が「アセンブル」を前提として企画されているのであれば、当然、「アセンブル」の使用を前提としたつくりになるだろう。

    それはつまり、「アセンブル」せざるを得ない難易度に調整されるということ。

    そう、「カスタマイズを楽しむために用意された高難易度」とは、このことだ。本作は「死にゲー」ではない。「アセンブル」と「高難易度」によってカスタマイズの楽しさを与えてくれるゲームなのだ。

    ただ、本作はすべての人に自力で正解となるカスタマイズを探すよう強制してはいない。というのもアセンブルの内容をインターネットで共有できる機能が用意されているため、他のプレイヤーが生み出したアセンブルを使うことができるからだ。

    とはいえこの機能も、プレイしてみて自分の感覚に合わなければ、細かくセッティングを変更する結果になるだろう。そういう意味で共有機能は、決して「アセンブル」をゲームから除外してしまうような機能ではない。「アセンブル」に不慣れなプレイヤーであっても、「アセンブル」の入り口に立つことができる、補助輪的な機能といえるのではないだろうか。

    ちなみにこの原稿執筆時点で、筆者は本作をクリアしていない。現在進行中で、強敵相手に有効な「アセンブル」を探しまくっている。それが楽しい。

    本作は率直に言ってロボット3Dアクションの傑作だ。筆者の先行プレイレポートを見て、「ロボットものは好きだけど、難しそうだからちょっと……」と思った人も、「カスタマイズ」という点に着目して是非プレイしてみてほしい。また、フロムソフトウェアのこれまでの「死にゲー」が好きという人も、「カスタマイズ」という観点からプレイすることで、新たな面白さを発見できるのではないだろうか。

    さあ、621、仕事だ。

    文/田中一広

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