ロンドンには数多くの美術館・博物館・ギャラリーがあります。
今回はその中から、写真に特化したギャラリーである『ザ・フォトグラファーズ・ギャラリー』をご紹介します。
この美術館は、写真が生まれた1800年代の実物作品から、時代の最先端をいくデジタル作品まで、多種多様な写真展示が行われているロンドン最大の写真ギャラリーです。
場所はリージェント・ストリートとオックスフォード・ストリートが交差するオックスフォード・サーカス駅から歩いてすぐ。ロンドンショッピング街の正に中心にあります。
建物は古いレンガ造りのビルをモダンな装いに最近改装したようで、ビシッとしていてとても格好いいです。角地にあるので、見逃すことはまずありません。
フロア毎に趣向の異なる展示が楽しめる
筆者が訪問した際の展示内容は以下のとおり。
THE EASTER RISING 1916 (イースター蜂起)
WOLF SUSCHITZKY’S LONDON (150年近く前のロンドン・ビンテージ写真)
Saul Leiter’s pioneering colour photography (1950年代アメリカのカラーフィルム)
ROSÂNGELA RENNÓ (ブラジル人アーティストによるウルグアイのインスタレーション)
それでは早速見ていきましょう。
2階ではおよそ百年前、1910年代に活躍した写真家が撮った、1916年のダブリンで起きた武装蜂起「イースター蜂起」にフォーカスしたアイルランドの光景が展示されています。1910年代アイルランドは、イギリスからの独立闘争が活発化した激動の時代。そのような世界史上の出来事も、しっかりとフィルムに収められていることに驚きます。教科書でチラッとしか見たことのない様な人々の写真が、非常にたくさん、イキイキと飾られている事には感動を禁じ得ません。
またそれ以外にも1850年代の非常に古い写真も数多く展示してあるのは、ロンドン最大級の写真ギャラリーならでは。
上の写真を見てお気づきでしょうか? 展示フロアの壁は一面緑色に塗装されています。これはこの特別展示のために、アイルランドを象徴する聖パトリックのシンボルカラー「緑」にちなみ、為されたデコレーションです。展示の方法にも気を使っている事がわかります。
さらに上のフロアには、1950年代アメリカの写真家Saul Leiterの作品がずらり。単なる写真だけでなく、コラージュ作品やペインティングも展示されており、そのバラエティは豊かです。ちょうど最近、1950年代ニューヨークを舞台とした映画『キャロル』を見たばかりの筆者には、実際の舞台を確認する良い機会となりました。カラー写真が本格的になりだした頃の、パイオニア的写真家の作品はどれも極めて鮮やかで美しいです。
「私は哲学は持ち合わせていないが、カメラなら持っている」- Saul Leiter
階段の踊場には写真家Saul Leiterの格言が。実に凝った作りのギャラリーで飽きることがありません。
スライド映写機を使った珍しい方法での展示
更に別のフロアでは、とても不思議な展示を行っていまいた。
一見、壁には一切写真が飾っておらず、部屋の中央にたくさんの機械が置いてあります。
人もいません。
この機械ですが、あまり見慣れない形状で昔のミシンのような?形をしています。かなり年季の入ったクラシックなモノである事が伺えます。機械の前には何やら注意書きが。
「機械には触らないで下さい。赤いボタンを押して下さい。」
ギャラリーの人もいないので、恐る恐る写真左にある赤い電源ボタンを押してみます。するとヴォオオオ!と大きな音。
そう、この機械はフィルムに光を当てて投影させるスライド映写機だったのです。今やほとんど使われなくなったスライド映写機ですが、このギャラリーでは過去の重要な出来事を映し出す資料として今でも大切に展示されています。
今回の展示で使用されたフィルムは、ウルグアイでの共産主義政党と市民の間で起きた動乱の様子を克明に写した大変貴重なものです。
複数のプロジェクターを同時に起動すると、このように情景的な雰囲気を味わえます。非常にセンスの良いインスタレーションだと感じました。写真を見るというよりも、過去の人々の思い出を追体験しているかのような錯覚に陥ります。
ちなみにですが、このプロジェクターはTOMITA EIKIというメーカーの製品のようです。
また、各フロアの隅には映像資料や関連書籍も置いてあり、自由に参照することが出来ます。写真家のバックグランドや撮影された時代の背景などのフォローがしっかりされているので、合わせて鑑賞することを強くオススメします。とは言っても、写真に言語はありません。様々な媒体で表現される写真を心ゆくまで、静かな環境で楽しめるのが本ギャラリー最大の特徴と言えるでしょう。
カフェやショップも充実!
このギャラリーには展示スペースの他にもスタジオやカフェ、ショップや写真作品の販売スペースもあります。
中でもカフェでは無料のトークショーやイベントが頻繁に開催されているようです。もちろんフリーwifiや写真関連書籍も置いてあり、じっくり居座る事もできます。さらにさらに、HPによると提供されるコーヒーはイタリアでも有名なLavazzaのコーヒーだそうです。筆者が訪れた際はエスプレッソが1.99ポンド、ラテは2.5ポンド、コーラは1.6ポンドとかなり良心的な価格でした。ショッピング街の中心部にあるにもかかわらず、比較的空いていたのでカフェだけ利用するのもアリですね。地下のショップには書籍から富士フィルムのフィルム、使い捨てカメラに写真家の作品などが販売されていました。
筆者は黒のトートバッグ(3ポンド)を購入。ハイセンスなお土産品ばかりです。
いかがだったでしょうか、ザ・フォトグラファーズ・ギャラリー。ロンドンの他の大規模美術館と違い、こじんまりとしているので落ち着いて鑑賞することが出来ます。筆者も記者の端くれとして日々写真撮影を行っていましたが、非常にレベルの高い写真を見ることで身が引き締まる思いがしたと共に、100年以上経っても全く色褪せない写真の持つ「訴求力」を身をもって再認識する事ができました。写真を見るのが好きな方、写真を撮るのが好きな方、双方にオススメのギャラリーです。
The Photographers’ Gallery
場所:16-18 Ramillies Street, W1F 7LW
入館料:3ポンドで全ての展示を鑑賞できます。
公式サイト:http://thephotographersgallery.org.uk/
※写真は全て筆者撮影
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