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1月30日に封切られるやいなや、公開2日で興行収入3億円突破。シリーズ最高の勢いをみせる『さらば あぶない刑事』。現在も劇場には多くの人が訪れており、まだまだ“あぶデカ”旋風は続いています。

この『さらば あぶない刑事』は、あぶデカ世代の人はもちろん、10代、20代の若い世代が絶賛しているのも印象的。Twitter等、ネット上を検索すると「とにかくカッコ良くて面白い!」「2人が体を張っててすごかった」「ダンディすぎる!」と言った、興奮の声が。

この映画の面白さの秘訣、なぜ『あぶない刑事』という物語は人を惹き付けるのか。今回は、シリーズ一作目から脚本を担当し、本作でも脚本を務めた柏原寛司さんに色々とお話を伺ってきました。

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お話は、柏原さんがオーナーのカフェ「三日月座」(人形町)にて。『あぶない刑事』ポスター等が飾られていました。見ているだけで楽しい!

―本作で大人気シリーズがいよいよファイナル、となりましたが、『さらば あぶない刑事』を制作するに至ったきっかけはどんな事だったのでしょうか?

柏原:セントラル・アーツの黒澤さんが「やろう」と決断したことで動き出しました。講談社のDVDマガジン(『あぶない刑事 全事件簿DVDマガジン』)が売れた事でいい流れは出来ていたと思いますが。それで、やるからにはこれまでのキャストを全員出そうと。実は2年前に自分で密かに映画用のプロットをつくっていたんです。それだと鷹山と大下が横浜で起きた事件の犯人を追って函館へ行く、という、ほぼ2人だけのハードボイルドだったんですが、それは棄てて今回の話をつくった訳です。

―あれだけのキャストをもう一度揃えるというのは考えるだけでとてつもない苦労だなと思ってしまいます。

柏原:全員揃える所が一番大切で、大変でしたね。吉井役の山西道広さんはもう俳優業を引退されていて、逗子でおでん屋さんを営まれてるという事だったので、会いに行ってお話をして。そうしたらちょうど閉店するタイミングだったので、その店は撮影に使えませんでしたが、おでん屋さんの設定をそのまま活かして出演していただきました。

―「タカとユージ、2人の定年退職」という設定もすごいと思いました。

柏原:映画『黄色いリボン』(1949)をやりたいなと思ったんです。映画の中で騎兵隊を辞めるギリギリまで「俺はお前らの隊長だ」というシーンがあって。『黄色いリボン』だからまともな最後だけど、『あぶない刑事』だから、定年退職日の前日の23時59分まで拳銃を握っているっていうお話に。

―人気シリーズの「ラスト」とか「ファイナル」というと、どうしても感動路線に行く事が多いと思うのですが、本作はそういった演出が無い所が痛快ですよね。

柏原:感動なんて一切無い(笑)。最後まで手に負えない2人って感じだね。あぶデカは「プログラム・ピクチャー」だから、お客が待っている所は外さない方が良い。例えば「寅さん」だったら必ずヒロインにフラれるというシーンがある、そういった定番は外しちゃいけない。普段は薫と馬鹿やってるし、最後はアクション、ガンシーンがたくさん出て来る。

あぶデカシリーズって昭和と平成にまたがっていますけど、ファンの間では昭和に放映されていた話が特に人気があって、今回の映画はそのテイストに寄せたというのがありますね。映画でも昭和の3本『あぶない刑事』『またまたあぶない刑事』『もっともあぶない刑事』が好きという人が多いんですよね。平成の作品も面白いのですが、ハードボイルドテイストが濃い方が楽しめるのかもしれませんね。

―館さん、柴田さんはお話について何か意見をおっしゃる事はありましたか?

柏原:柴田さんとは準備稿ができたあとに会って色々アイデアを出してもらいました。館さんとは決定稿ができたあとに会いました。基本的に女がらみのシーンが多いので、タカをどう格好良く見せるかという部分で意見を言ってくれて、実際にほとんど採用していますね。柴田さんは相変わらずコミカルな部分について色々考えてきてくれて。柴田さんは『カルテット! 人生のオペラハウス』(2012年)という映画を持ってきて、「これを参考にしたい」と言ってきて、あまりにも作品の毛色が違うから、どこを参考にしようと思ったけど、人間の心情、タカとユージの友情について描きたいという事でした。

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―なるほど。これが最後というのが悲しく感じるほど、タカとユージの友情は健在! という感じでしたものね。浅野さんのハデハデな衣装も変わらない愛らしさでした。

柏原:浅野さんが薫をやる時に、昔みたいな芝居がしにくくなるんですよ。年齢の問題もあるし。それで余計に“ハネる”んですよ。あのハイテンションは一種の照れ隠しなんですよね。

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―また、仲村トオルさんがあのメンバーに入ると若手の雰囲気になってしまう所も、すごく面白いですよね。

柏原:あれはすごいよね(笑)。後、トオルはすごく頭が良くて気を遣えるので、2人の先輩をたてるのが上手ですよね。すぐにあぶデカの雰囲気になる。

―吉川晃司さん、菜々緒さんというゲスト俳優の存在もとても新鮮ですね。

柏原:吉川さんの役に関しては、ワルもリアリティのあるワルにしてあげたいというのがあって、一昨年の秋にロスに行った時に犯罪集団について調べて、それをモデルにしているんですね。吉川さんもすごく気合いが入っていて、撮影入る前に事故ってしまったから、それじゃあ役を最初から杖をついている人物にしようと。それが逆に凄みがあって良かったと思いますね。

菜々緒さんは館さんと実年齢が離れすぎているから最初はどおかな、と思ったけど2人で並ぶとしっくりきたんだよね。館さんも菜々緒さんとのシーンには色々アイデアを持ってきてくれて、館さんがやりたいと言って入れたところもあります。男と女が並んで「あ、これは恋愛するな」って周りから見て分かる時ってあるじゃない? それがこの2人にはありましたよね。

―柏原さんはあぶデカをはじめ、様々なドラマの脚本を手掛けたり監督をしてきて、刑事ドラマの流行の移り変わりを感じる事はありますか?

柏原:振り子みたいなもんですね。どっちかに振れる時は振れる。世の中がアクション映画に振れている時のピークがあぶデカだったと思います。日テレの火曜21時のアクションドラマがあって、『西武警察』があって、最後のとどめが『あぶない刑事』だったと。その前にはシリアスな『七人の刑事』といった社会派のものがあったわけです。

―一つのブームがあって、その次は反対側にブームが来ると。

柏原:アクションブームが終わった後は、『踊る大捜査線』や『相棒』といったリアル路線で、警察内部の事を描く作品が増えたりと。それがまた少し飽きられてきて、またアクションドラマに人気が戻りつつあるのかな、とは感じますね。ただ、日本はアクションの撮影がしづらいんですよね。今回のあぶデカも横浜ではアクションが撮れないから、アクションに関しては四日市や諏訪など他の場所で撮っているんですよ。だから『96時間』シリーズ(リーアム・ニーソン主演)みたいな映画は日本では撮れない(笑)。でも、アクション映画ってある意味反社会的なものなんで、そうやって規制が激しくなるど作る方は燃えるんだよね。

―だからこそ、こうして今あぶデカに注目が集まり、多くの人が「待ってました!」と映画を楽しみにしていたのかもしれませんね。今回記事を掲載させていただく「ガジェット通信」というサイトでも、『さらば あぶない刑事』関連のニュースは非常に反響が大きかったです。

柏原:子供の頃にあぶデカを観て育った人達が今映画館の支配人になったりしていて、宣伝にとても協力的でしたね。後は、街中に広告を出したり、館さん柴田さんをはじめ、皆さんがたくさんイベントに出たり、映画を宣伝してくれて。街で若い子が「あ、『あぶない刑事(けいじ)』だ!」と言ってたりすると、おかしくて笑っちゃったりする事もあったんだけど、それだけたくさんの人に注目してもらえて、「最後にもう一本あぶデカの映画が撮りたい」という願いが叶えられて、思う通りの作品が作れて本当に良かったです。

―今日は楽しいお話をどうもありがとうございました!

【柏原寛司さんプロフィール】
芸術学部在学中、東宝撮影所にアルバイトとして入り、子供向け番組『クレクレタコラ』の脚本と現場(助監督)を経験。その後、1974年には『傷だらけの天使』で脚本家として本格的にデビューを果たし、以降TVドラマを中心に活躍。代表作として『俺たちの勲章』『大都会』『大追跡』『探偵物語』『プロハンター』『西部警察』『あぶない刑事』等、テレビにおけるアクション作品の脚本を手がけ、1997年に藤竜也、宇崎竜童主演『猫の息子』で初監督。その後、監督作品としてビデオ作品『ガンブレス~死ぬにはもってこいの夜~』(1998年)、『練鑑ブラザーズ ゲッタマネー!』(2001年)、『STRAIGHT TO HEAVEN~天国へまっしぐら~』(2008年)を手掛ける。また映画の脚本作品としては、『あぶない刑事』シリーズ、『平成ゴジラ』シリーズ、『ルパン三世』シリーズの執筆や『名探偵コナン』劇場版の製作にも携わるようになった。

人形町 三日月座
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