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今回はNATROMさんのブログ『NATROMの日記』からご寄稿いただきました。
肝臓洗浄(レバーフラッシュ/肝臓デトックス)は本当か?(NATROMの日記)

「肝臓洗浄」とは肝臓や胆のうにある胆石を排出させ、肝機能の改善など効果をうたう民間療法です。「レバーフラッシュ」とか「肝臓デトックス」とか呼ばれることもあります。肝臓洗浄にはいろんなやり方があるようですが、典型的には空腹時にオリーブオイル、グレープフルーツジュース、エプソムソルト(硫酸マグネシウム)、水を特定の手順で飲みます。その後体から出てきた排泄物(要するにウンコ)をザルで濾すと、大小さまざまな緑色の「胆石」が大量に得られるというのです。”liver flush”(レバーフラッシュ)で画像検索*1すると写真を見ることができます。

*1:「liver flushの画像結果」 『google』
https://www.google.co.jp/search?q=liver+flush&source=lnms&tbm=isch&sa=X&ved=0ahUKEwiPorursY3LAhULFJQKHf3UDLEQ_AUIBygB&biw=1206&bih=675

残念ながら肝臓洗浄はインチキです。確かに胆道は十二指腸に開口していますので、小さな胆石であれば胆道から腸管を通って排泄されることはあります。しかし、肝臓洗浄で出てくるような2-3 cmもの「胆石」は通常は胆道を通りません。また、一度にこれほど大量の「胆石」が排泄されることはありません。もし肝臓洗浄がインチキでないとしたら、それを医学的に証明するのは簡単です。肝臓洗浄によって出てきた「胆石」を調べて、本当に胆石であると示せばよいのです。あるいは、肝臓洗浄前後で腹部エコーで胆石が減るかどうかを比較すればいいのです。しかし、肝臓洗浄にはそのような医学的証拠はありません。

肝臓洗浄が神話に過ぎないことを証明した論文もありますのでご紹介します*1。

*2:「Sies CW and Brooker J, Could these be gallstones?, Lancet. 2005 Apr 16-22;365(9468):1388.」 『NCBI』
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15836886

ニュージーランドのワイカト病院に、脂っこいものを食べた後に右上腹部が痛む40歳の女性が紹介されてきました。腹部エコー検査を行ったところ、径1-2 mmの胆のう内胆石が認められました。症状も年齢性別も胆石症としては典型的です。ただ、この患者さんには一つだけ特別な点がありました。この患者さんは最近「肝臓洗浄」を行ったのです。そして直腸を通過した(要するにウンコに混じっていた)緑色の「胆石」を持参して医師に見せました。

医師たちがその「胆石」を調べたところ、本物の胆石にはあるはずの結晶構造がなく、また、本物の胆石の構成成分であるコレステロールやビリルビンやカルシウムを含みませんでした。また、この患者さんが肝臓洗浄に使ったのと等量のオレイン酸(オリーブオイルの主成分)とレモンジュースに少量の水酸化カリウムを加えると、「胆石」と似たような白い球状の物体ができました。つまり、肝臓洗浄後に排泄物に混じって出てきた「胆石」は、本物の胆石ではなく、肝臓洗浄に使ったオリーブオイルとレモンジュースがお腹の中で消化液と混じって固まってできたのです。緑色だけは胆汁由来なのでしょう。この患者さんの本物の胆石は、普通に手術で除去されました。論文には、肝臓洗浄による「胆石」と、本物の胆石(コレステロール胆石)の写真が載っています。

本物の胆石を見たことがなくても、ちょっとだけ頭を使えば肝臓洗浄がインチキであることがわかります。そんなに簡単に胆石を取り除くことができるのなら、なぜ病院で肝臓洗浄をしないのでしょうか?手術せずに胆石を取り除ける可能性が少しでもあるなら、多くの医師が試してみるはずです。実際のところ、肝臓洗浄はインチキであることが明白過ぎるので、まともな医療従事者は相手にしていません。

執筆: この記事はNATROMさんのブログ『NATROMの日記』からご寄稿いただきました。

寄稿いただいた記事は2016年03月07日時点のものです。

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