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FF14プロデューサー吉田直樹&ひろゆき対談(後編)
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FF14プロデューサー吉田直樹&ひろゆき対談(後編)

2013-01-05 04:31
    吉田直樹氏×ひろゆき氏対談

    前編に引き続き『ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア』(以下、FF14)のプロデューサー兼ディレクターの吉田直樹氏とニコニコ動画管理人のひろゆき氏の対談を掲載する。前編ではFF14を通しての仕事や考え方にも広がったが、ここからはどんな話になるのか。後半のスタートは日本だけではなく、世界を見据えたひろゆき氏の質問からだ。

    吉田直樹氏×ひろゆき氏対談(前編)に関しては、こちらをご覧下さい。


    ■アメリカが獲れないと話にならない

    ひろゆき:吉田さんの中で売り上げっていうのは世界と日本ってどれくらいの比率を想定しているんですか?

    吉田:やっぱり半々ですね。MMORPGというジャンル自体がアメリカ発祥のジャンルで、プレイヤーの最大勢力もアメリカなので、そこが獲れないとそもそも話にならないと思っています。日本でMMORPGというジャンルが、もう一段メジャーになる為には、いくつかの壁があると思っています。1つは言葉の壁。ドラクエ10に抜かれるまで、日本の最大課金者数記録を持つMMORPGは『ファイナルファンタジーXI』(以下、FF11)だったんです。その前はUltima Online。ドラクエ10の課金者数が40万アカウントを超えたと公式発表していて、仮にドラクエ10をやってくれている方が100%FF14をやってくれたとしても40万人。一方、世界を見ると『World of Warcraft』(以下、WoW)が全世界で1200万アカウントを記録していますが、WoWの日本人ユーザーの最大時は1万8000~2万5000くらい。最新のMMORPGに『GuildWars2』っていう作品があるんですが、あっというまに全世界で200万セールスして、当面のライバルだなと思うくらい挑戦的な意欲作で、すごく良く出来ているんですが、それでも日本人は1000人に満たないくらいしかいないんです。本当にそれくらい言語の壁は厚い。

    それともう1つは資金面。投資文化じゃないですか海外って。MMOって下手したら数十億かかるビジネスなので、ゲームを作るにしても投資家達から資金を集めて、出資を募ってやるから海外はばんばん新しいMMOがプロジェクトとして立ち上がりやすい。その分だけ初期回収に苦戦すると「続けられなくなる」「ギブアップが早い」というリスクはあります。逆に日本では、ゲームは今もなお一社単独でゲームって作っているじゃないですか。そこにそれだけの巨額投資をするって考え方が、リスクが高すぎて、大規模MMOだと、今のところスクエニだけになっている。結果、競争が発生しづらく、日本になかなか浸透しないってのが多分そこもあります。海外には面白いMMOはいっぱいあるんですけど、全部英語なので、この日本人の英語嫌いが治らない限りは浸透しにくいですね。

    ひろゆき:日本人ユーザーに知られていないんだから、WoWをパクって出せば「これ面白いじゃん」ってなるんじゃないですか。

    吉田:いいんじゃないかと思います。だってFF11は『エバークエスト』にハマった開発スタッフがみんな1年EQを遊び倒して「これのFFを作ろう」って始めたプロジェクトなので。その上で、FF11はMMORPGにシナリオと演出を持ち込んだから、海外でも高く評価されました。海外MMORPGは今度はそのFF11で好評だった”ストーリー性”を取り入れて進化するという。元々『ウィザードリィ』があって『ウルティマ』があってドラクエが生まれて、そこからFFが生まれてってのと、何も変わっていないです。グローバルスタンダードを作るところから始める、それで良いと思ってます。ただ、”FFであること”がとても重要で、チョコボがいてモーグリがいて竜騎士がいて、泣けるシナリオがあって出会いと別れがあって、飛空挺が飛んでて、みんなでわいわい召喚獣と戦って、それでいいんじゃないかなと。もちろんそれだけじゃない芯はあるのでまずは、ですけど。

    ひろゆき:『ディアブロ』やWoWみたいな小さいキャラがわさわさいるような方向にFF14はいかないんですか。

    吉田:いかないです。一度ローンチしているタイトルですし、新生といっても絶対的な賞味期限があります。同じFF14で立て直してみせるって選択をした以上、僕は(賞味期限が)2年ちょっとだと思っていました。MMORPGの平均制作年数って普通5年なんですが、それを半分以下でゼロから作り直して、大作と肩を並べるところまで(品質を上げて)って考えると、ベースのFF14から取捨選択の必要があって。でも僕自身思っていますが、世界的にマーケットを見渡した時に、FF14ほどMMORPGとして、キャラクタークリエイションとキャラクターグラフィックスに凝ったゲームってないんですよ。この等身、このリアルさ、この装備の質感、この品質で何年も愛着をもってゲームができるのはFF14だけだろう、ここは間違いなく勝てるだろうと思っているので、そこは逆に強みにした方がいいだろうと思っています。さっき放送中にもLOD(レベルオブディテール:カメラの距離によってポリゴンの制御を行う描画方式)の話で「分からないよこれ!」という発言がありましたが、HighからLowポリゴンになっても気づかないっていうぐらいシルエットにこだわっていますしね。

    ひろゆき:FFがいきなりCGで映画っぽいムービーを出してくるっぽい感じの、要はオンラインでもこのレベルのグラフィックなら出さないでしょってところで存在感を出しているんですね。

    吉田:そこはFFが背負っている宿命なのかなとは思っています。今年一年、海外のイベントで現地のFFファンと話す機会が多かったんですが、FFシリーズの印象というのは世界共通で、やっぱりグラフィックスとストーリーとキャラクターが衝撃だって言われるんですよね。「もう一回竜騎士でプレイしたい!」、「チョコボに乗りたい!」って欲求が皆ストレートなんですよね。じゃあ全部入れればいいじゃんって感じですね。

    ひろゆき:海外のそういったコンベンションとか行くと他のMMORPGに比べてもFFのコスプレ率が高いんですよね。あれってFFの絵が他とレベルが違うってことなんですかね。

    吉田:キャッチーみたいですね。特に哲さん(野村哲也氏)の書くキャラクターが彼らから見て。それも今だとジェネレーションの差もあると思うんですよ。僕も『ファイナルファンタジーVII』(以下、FF7)は衝撃的だったので。ただ、あの時代あの年齢だったから受ける衝撃と、仮にですけど来年40歳になる僕のタイミングで出されたとしたら、あそこまでの衝撃って多分受けないんじゃないかと。当時先端だったゲーマーも、もう社会の荒波を知ったおじさんですからね。ジュブナイル小説ってあるじゃないですか。当時FF7に衝撃を受けた僕らは「昔みたいなインパクトが欲しい」って言いながら、あの頃のFF7が今発売されても、当時と同じような大絶賛はしてくれない気がします。でも、それくらいお客さんも育ってきちゃったので、今後はそれぞれの世代にあったインパクトがないと、ちょっと難しいんだろうなって思っています。まさしく社会に出る前の感覚と、世間の現実を知ってしまった後では、ストーリーやキャラクターから受ける「リアリティ」は全然異なるので。ただ、FFの路線の中には、絶対ジュブナイルとして必要な部分があるだろうと思っていて。今回のFF14でやろうとしていることに、もう一方システムであったり、ハイファンタジーで遊べる『ファイナルファンタジーⅠ~Ⅴ』ぐらいまでの懐かしさを感じながらやれた方が、シリーズ全体のバランスとしては、いいんだろうなって思いもあります。

    ■FFはむしろ、前に進まなきゃ駄目なんだ

    ひろゆき:ターゲットの年齢ってどれくらいを考えているんですか?

    吉田:結構高いですよ。コアになるのは20代中盤から30代までぐらい、あとは大学生ですね。実はそこが毎日1時間とか2時間でもコツコツやってくれる層でもあるんですよ。

    ひろゆき:今の小中学生みたいな、そもそもFFに触ったことがないみたいな子供達向けには対応仕切れていないみたいな?

    吉田:そこは多分バトルロードみたいな、その世代にあったFFをちゃんと作らないとダメですね。そのFFをステップにして、上がっていくのを作らなきゃ駄目なんですけど手が回ってないです。それはどっちかっていうと、会社の使命としてブランドの為にやらなきゃいけないことだと。ドラクエでバトルロードを作ったのは、それが第一でしたから。『ポケットモンスター』(以下、ポケモン)に負けてるぞと、このままでは洒落にならない、と。ポケモンがどんどん下(の世代)を作って、テレビをやって、お弁当箱になってるわけですよね。今の子供たちは3歳、4歳になったらポケモンを知っているわけですよね。で、アニメを見る、小学生になったらゲームを買う。そのルートが出来てるんです。

    ドラクエもユーザーアンケートを取ってくと、どんどん年齢がちょっとずつ上にいってるんですよね。もちろん、天辺(最高齢)も上がっているんですが、そのままスライドしていて。これ、まずいだろうって。当時『ムシキング』が凄いヒットしいて、小学生低学年から高学年までが簡単に遊べて、あそこのシェアを全部取りに行こうと、当時のプロデューサーである市村がそう言って。あそこでドラゴンクエストの勇者とかモンスターとかを知ってもらったら、お父さんが絶対語ってくれると。かつて勇者だったお父さん達が「破邪の剣を取るのはな……」って。親子2世代になったんだから、そこを狙って一気にガッっと取りに行こう、と。

    更にそのタイミングで、『ドラゴンクエストⅣ~Ⅵ』を『ニンテンドーDS』で出して、全タイトルとアーケードで連動をやって、最終的に全部『ドラゴンクエストⅨ』(以下、ドラクエ9)に持って行った結果、ドラクエ9が420万本を超えていく底支えにはなったかなと。

    ひろゆき:結構ちゃんと考えてるんですね。

    吉田:そこはプロデューサーの市村(市村龍太郎氏)が凄かったですよ。僕は当時ディレクターをやっていて、今の僕はバトルロードやドラクエ9のプロデューサーだった市村の見よう見まねをやってるだけなくらい。

    ひろゆき:外から見てると「堀井雄二さんまだやってるんだー」ってのしか見えないじゃないですか?

    吉田:ドラクエはそれでいいと思いますし、堀井さんが書くシナリオやゲームアイデアには、今でも頭が上がらないです。やっぱり本当に凄いので。遊び手にストレートに同化しているというか。当時DSのリメイクやバトルロードで、本当に凄く一気に年齢層が下がった時期でした。だからこそ、今ドラクエ10もその小学生を取る。そのバトルロード世代で育ってきた人達がプレイできるために、親御さんが安心して親子二世代で遊べるように、キッズタイムをやったりと。

    ひろゆき:キッズタイムはすごい発明だなと思いました。FF14ではそういった若年層対策みたいなことはやられないんですか?

    吉田:先ほどもちょっと触れましたが、本当はやらなきゃ駄目なんですけど、手が回ってないです。エニックスっていう会社はドラクエを中心に回してきた会社。ドラクエを出すために、他のタイトルが自由でありつつも、売上に貢献するようにがんばる。でも、FFは割と本編が自由で。例えば放送前にひろゆきさんが「特に規制がないなら、FFでクリスタルを食って体力回復する、というのもアリなんですか?」って、それに対して「いいよ」って言える土壌で作ってきたのが、FFだということに、今回担当して気付かされました。どちらかというと「好きにやればいいじゃん」になっちゃってるので、IP(知的財産)コントロールが苦手なんですよね。その代わり、このFFは誰々さんのアイデアでって作家性が実は強い。だから包括して、ブランドとして底上げをしてかなきゃみたいな所は、ドラクエと比べると、ちょっと遅れてる部分はあります。それがこれからのうちの課題だと思います。

    ひろゆき:ブレイブリーって、今年のTOP3に入るぐらい面白かったんですが、昔のFFの3~5くらいの、ゲームシステムの面白さが感じられて。「ゲームシステムとしてやっぱり面白かったんじゃん」って証明出来たと思うのですが、FFの歴史って折角面白いゲームシステムを発明しても捨ててきているじゃないですか。今回のブレイブリーって「ゲームシステムが面白いんだから、捨てなくていいんじゃない?」みたいなのが社内であったんですか?

    吉田:真意はブレイブリーのプロデューサーの浅野(浅野智也氏)に尋ねるしかないですが、DSでFF3のリメイクをやった後、彼が光の4戦士を作った時も、そして今回も「もったいないよ。あんなに面白いのに」って思ったはずで、そこに吉田明彦の絵やデザイン、世界観を乗せて。実は作ってるのは外の会社さんなんですけど、逆に言うとFFにコダワリがないというか、新しいFFにあまりこだわりがなくて。「あれだけ面白かった遊びがあるんだから、もう一回、今の世代にやってもらおうよ。」っていうのがモチベーションだと思います。サブタイトルのフライングフェアリーの「F」と「F」を外せばどう読めるかとか、そんな辺りにもそういう意思は見えるのかなと。そして、どちらかっていうと、本流でFFを作って来た人達は「FFはむしろ、前に進まなきゃ駄目なんだ」っていうことを、真剣に考えています。丁度、今、そういう意味でバランスが取れ始めてきているのかもしれないですね。浅野や僕みたいに、FFの開発に携わったことがなくて「FFなんだから、良かった要素、全部突っ込めばいいんじゃん」みたいなことは、あんまりこれまで無かったんじゃないですかね。スクウェアとエニックスが、ここに来てだいぶ混ざったのかなと。

    ■第一印象

    お二人の第一印象は?

    -ここで改めて、お二人の最初の印象は? ひろゆきさんには『ニコニコ動画』の他にも『2ちゃんねる』の……みたいな印象がありましたか。

    吉田:僕、これまでは殆ど2ちゃんねるを見てなかったので、噂に聞く程度しかそこは無いんですよね。今回FF14でオンラインタイトルを見るようになって初めて、というところが大きいですね。ゲーム開発で2ちゃんねるを見ると、心が折れるので(笑)。もちろん良い意見も沢山あるんですけど、やっぱり人間って弱いので。いい意見10個に対して、1個ネガティブなものがあると折れたりするじゃないですか。僕は(それに対して)「折れるくらいなら、最初から見なければいいじゃん」って方だったので。今ではFF14を背負っていて、真逆になっちゃってますが。

    それと仕事が大好きで仕事ばっかりやってると、世間に疎いんですよ。ニュースと新聞は大好きなんで見てますけど、テレビは殆ど見ないです。ネット系のニュースも見てないので、実はひろゆきさんのことを殆ど知らなくて、前回のWindows 8の放送(11月30日放送「Windows 8 8つの魅力」)を拝見した時に「あ、この人すごい」と思って。今日、(放送前に)ひろゆきさんが言ってましたけど「リハーサルやりたくない」って。多分、欲求なんですよね? 自分が聞きたいとか、知ったら、もういいやっていう。「なんで、わざわざもう一回やんの?」、「俺知ったからもういいや」みたいな。

    ひろゆき:えぇえぇ。

    吉田:前回の放送の中でもFF14について、台本の無い中で時代の終焉トレーラーを見て「バッドエンド(のイベントや展開を)やらないよね。普通」とコメントしていて。あの放送があったからじゃなくて、ご自身の引き出しから、リアルタイムに開け閉めしながら話してるというのが「あ、すげー」って思って、だから楽しみにして来たんです。ただ、プラスかマイナスか、どっちに跳ねるか、直接お話したことがないので、そこが一番のリスクポイントだろうなと思ってました。

    -実際に話をしてみて、印象は変わりましたか?

    吉田:今のところは、まったく変わってないので、次回はぜひ、お酒を飲みながら(笑)

    ひろゆき:ごちそうさまです!

    吉田:ご馳走させて頂きます。

    ひろゆき:ありがとうございます!

    ーひろゆきさんからは?

    ひろゆき:最初は電話だけだったので人となりは分からなかったですけど、ただ電話の時だけでも、言ったことをちゃんと返してくる人なので、面白い人だなぁ、と思ったんです。んで、今回、何を聞いても、ちゃんと返ってくるじゃないですか。元々、シナリオ出身ってのがありながら、プログラムのこととかも出てくるし、サーバのこととかも出てくるし「この人すげーなー」って思って。で、多分、労働時間が無茶苦茶長いんだろうなぁ……と。

    吉田:はい。僕多分7年ぐらい連続で在社率NO.1じゃないですかね(笑)。別に、FF14やってからじゃないんです。

    ■なんなんですかね、褒められたいんですかね

    ひろゆき:今は、自分が好きなものを作れるから大好きってなると思うんですけど、「これそんな面白くないよな」ってのもやらなければいけないですよね。仕事って。そういう時でも、モチベーションは維持できるんですか?


    吉田:僕、正直に言えば「どうしてもこれが作りたくてしょうがない」みたいなのが元々薄いんです。誰もが投げ出すとか「どうにもなんないよ」って言われたのとかを何とかするほうが、モチベーションになるほうなんで。あんまり、こだわりが無いんですよね。

    スクエニ入社前の話ですが、当時いた会社が、だんだん斜陽してきて、売れ筋の物をどんどん出してけみたいな時代で。プロジェクトに対しても言われるんですよ。例えば「是が非でも○○万本売ってくれ」「今期予算で○○万本分が足りないから売ってくれ。タイトルはどれでもいいから」みたいな。まぁ、それはそれで、仕事としての面白さは絶対にあるので、あんまり(自分のこだわりは)無いですねぇ。

    ひろゆき:それで、よく興味をもって働けますよね。

    吉田:あと、どうにもならないと思った場合「どうにもなんないから、止めれば?」って言いますね。「もうやめたほうがいいよ。これ」って。で、それを上司に言っても聞かないと、部長に言って、部長も駄目だと、副社長のところに行って、ごちゃごちゃ言ってたら社長に行って、社長が面倒くさかったら会長に直接……とかしてたので。まだ若い頃でしたけれど、おかげで上からマジ切れされたこともありました。

    ひろゆき:めっちゃめんどくさい奴じゃないですか。

    吉田:実際に幾つかプロジェクト止めました。「プロジェクトクラッシャー」って言われたことも(笑)

    ひろゆき:でも、当たる時ってあるじゃないすか。適当に作ったものがヒットしたりとか

    吉田:でも誰が聞いてもつまらないとしか思えないゲームは、何万本も売れないです。作ってる人たちまで、匙を投げてるようなケースも当時はあったので。データを全部集めて、数字も全部出して「論理的に見ても無理ですよね?」と。

    ひろゆき:それって、誰のために働いてるんですか?

    吉田:うーん……。そんなゲーム買ったら、お客様が不幸だっていう気はします。会社がこんなもん作ってたら、話にならないっていうか。僕、その会社に憧れて入って、凄いそこのゲームが好きで……。入社するときも面接で「僕が立て直しをします」って、アホでしたね(笑)

    そう言って入ったからには、可能性があればやったほうがいいと思うし、逆に無いなら不幸になるから、止めたほうがいいって言います。今振り返ると、まるで成長してないですね(苦笑)

    FF14は可能性があると思ったし、何よりお客様があんなに応援してくれていたので、寝ないでやってられる原動力ではあります。

    ひろゆき:普通は、給料分働けばいいとか、周りのスタッフを敵に回したら毎日が面倒くさいとか、頑張らなくてもいい理由って一杯あるじゃないすか。「超これが好き!」だから頑張りたいってのは分かるんですけど、そんなに興味がないとかモチベーションがいまいち分からないですね。

    吉田:自分でもよくわかりません。誰もやりたがらないから面白いというか……あとは褒められたいんですかね。一般論ですが、他の人がやりたくない!と思うことをするから、お給料もらえるわけですし。つきつめれば、仕事ってそういうものかなと。僕は経理とか無茶苦茶苦手で、とにかくやりたくないですが、だからこそ、経理の方たちを本気で尊敬しますし、だからこそ、お給料もらえてるんだろうな、と。

    ひろゆき:プロジェクト潰しても、褒められないじゃないですか。

    吉田:そうでもないですよ。作りながら絶望してるスタッフも多い時代でしたし「なんでこんなもん作ってるんだろう」とか「止めたほうがいいのに」とか。あとは「止める」ことは「悪」ではなくて、確かに中止は損になりますが、それ以上の損が拡大する可能性は無くなります。止めた分、すぐ次の新規プロジェクトに人が回せますし、ヒットも狙える可能性が出る。プロジェクトを止めるというのは、いずれにせよかなりのストレスで、誰もやりたがらないし、自分のせいにはされたくない。そういう意味で、感謝される場合も多いです。やっかまれることもありますけど、まぁ、それがカワイイって言ってくれる上もいるんで。「お前は馬鹿正直だな(苦笑)」って。当時、会長や社長や副社長、専務など、若い頃からそこら辺にはすごく可愛がって貰えた。それは、今も変わんないですね。

    ■今後について

    -最後に、ひろゆきさんが期待してる今後のFF14と、今後吉田さんがどうしていきたいかをお聞かせ下さい。

    ひろゆき:なんだろうなぁ……。吉田さんはソーシャルゲームが、こういうタイミングでコレを入れたら儲かるっていう統計から一番儲かるアルゴリズムを自動化しているだけで人間の入る余地は全く無いけれど、だから一番よく売れるっていう"ビジネスモデルとしての賢さ”を分かっていながら「チョコボを入れたら楽しいよね」っていうユーザーが「コレ楽しい」ってモノも入れていくっていう両方をやってるわけじゃないですか。それが融合した結果って「ユーザーが望んだモノをいれました」と「ビジネスですってのも入れました」っていうことで、吉田さん自身の意見が無いじゃないですか。っていう"吉田システム"が果たして、どこに行くのかって興味がありますね。逆に吉田システムってパクろうと思えば、パクれると思うんですよ。統計的にユーザーの言ってることを集めました。お金を一番払い易いのはこういう状況ですって。そういう吉田システムの試験がどうなるのかってのが、ゲーマーとしてもそうだし、ビジネスモデルとしても凄い面白いなぁ……と興味深く見てますけど。

    吉田:その二つを繋げる(のがポイントですね)。さっき(放送中に)パケットの話がありましたけれど、その見えないパケットというか、新生FF14の根本に流れている「僕の思想」はやっぱりあって、そこを盗まれるようなら、僕の能力不足ですね。(今後に関しては)僕自身も今回チャレンジなので、ある意味で手足を縛られて、この期間で敢えて決めなければいけないって中で、取捨選択をして、最善のベストルートを進んだ時に、どこまで出来るのかっていう。

    逆に、FF14をやってみて予想が当たる時と外れる時の落差が凄いんです。「これじゃまだ駄目だろう。まだまだだろう」と思ったものが、非常に好評だったり。例えば、PVひとつとっても、今年の夏に「リミットブレイク」っていうパーティーで大必殺技を放つシステムがあって、βのフェーズ3からシステムとして開放されるんですけど、そのトレーラーを作ったときに、全て、インゲームの素材で作ってと(オーダーをしました)。FFってCGバリバリのPVが割と多いんですが、今回は全部インゲームの素材だけにしようと作ったんです。ただ、新生FF14が製作途中ということもあって、細かい点でギリギリまで「納得が行かないなぁ」とか結構あったんですよ。「やっぱりFFって、もっとこうじゃないと」みたいな。修正で無茶なお願いしたりして、担当には迷惑かけました。で、出したら、まったく杞憂なくらい評判が良くて。どこがくすぐるポイントなのか、分からないなぁ本当に、って思いました。それが所謂ジュブナイル的なFFのファンの人達は見てないからなのか、ゲーマーとしてのFFユーザーが「いい」って言ってくれているのか。でも、ジュブナイル的なFFのファンの人達も獲っていかないと、ビジネスとして成り立たないのかどうか、っていうところで凄く迷った点だったんです。

    でも同時に、まだこんなにゲームとしてのFFが楽しい、楽しみだって人が世界中にいるんだ、というのは凄く新鮮だったので。「あ、まっすぐそこに突っ込んでいけばいいや」、「やっぱりお金は後からついてくるんだろう」と確信した瞬間でもあったので。FFはCGの美しさをどこまでゲームで再現できるか、というイメージが強いかもしれないですが、ゲームシステムで押しても大丈夫、みたいな手ごたえはありました。ネットでは「CG詐欺はもうたくさん」って言われもしたので、もう言われたくないなと。

    それと同時に、この前の「時代の終焉」のトレーラー作ったときに、CGでやるからには、CGでしか出来ないことをやるべきだって話をして、コンテを切ってビジュアルワークスと打ち合わせもして。やっぱり如何にハードウェアが進んでも、あの群集を動かすことは不可能だし、あの巨大な惑星から、あのクオリティーのバハムートが飛び出してきて、世界を焼き尽くすって、正直言うとリアルタイムで作るよりもCGで作った方がまだまだ安いんですよ。

    だからこそ、誰がどこを切り取っても「よく分かんないけど、これFFでしょ」って言われるものこそCGでやるべきだよって言って。逆にそれで興味喚起する人もいるから、CGだからこそFFだと思って貰えるものをやれば良くて。ビジュワルワークスのスタッフも滅茶苦茶気合い入れてくれて。

    「CGだけじゃなく、ゲームの中とちゃんとリンクさせるから」と、中身を掘り下げて作りました。

    CGを求めてるFFファンというのもいますし、海外から「これぞFFのムービーだ!」という意見もありました。ニコ動さんにも転載されたやつのコメントに「スクエニの本気を見た」って書かれてたり、「これぞFFでしょ」って書かれてるのを見て、嬉しかったですね。

    まだまだ、FFにしかやれないCGも作れる。それでイメージ喚起したものが(ゲームで)実体験できることが大事。あのバハムートと戦えるんだよね、って。こけおどしじゃないんだよね、って。それを僕らがゲームの中でコンテンツとして実現できれば、「詐欺」ではないんだろうと思っています。今、丁度バハムートのダンジョンの追い込みに入るところなんで(笑)

    -有難う御座いました!

    放送終了後の深い時間にも関わらず2人の会話は止まることなく続いていった。この2人のやりとりを聞いていて改めて思ったことが、ユーザーサイドやビジネス的など複数の視点を持ちつつ「聞きたい・知りたい」という欲求が強い、ひろゆき氏と、同じく複数の視点で物事を考え「きちんと答えを届ける」吉田氏は会話の馬が合うということだ。しかし、ひとつだけ実現していないことがある。実は吉田氏自身も対談中に語っているように「睡眠時間を削ってでも知りたい」という欲求が強い人であり、一方のひろゆき氏も、分かり易くとぼけることはあるが「きちんと答える」人だということだ。次回チャンスがあれば、逆の立ち位置でのやりとりも見てみたいと強く感じた。それが今回のような対談なのか『ニコニコ生放送』なのか別の何なのかは分からないが、その会話の妙を見てみたいと素直に思う。

    RSSブログ情報:http://getnews.jp/archives/282212
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