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ちょんさん のコメント

あの晩の帰り道、「清々しいほど何も残らないことほど清々しいことはない」と初めて知りました。
次の日、朝起きていつものようにケータイを触る私の手には、筋肉痛のような痛みがありました。
無我夢中で拍手をし続けたからです。
このどうしようもない清々しさに精一杯の感謝を表現したかったからです。
「何も残らなかった」この舞台を、最高のものが残った舞台にしたかったからです。
あの痛みは私にとって生涯忘れられないものになりました。
そしてそれが、これから私の生きていくなかで何度も励みになると思います。
ありがとうございました(^-^)
No.13
127ヶ月前
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『ドーナツ博士とGo!Go!ピクニック』 の 全ての公演が終了した! 7月から稽古に入り ほぼ2ヶ月間かけての千秋楽だった! キャストもスタッフも皆 「あっと言う間でしたね!」 と言っていたが 私はそれを聞き流して ただうなづいていた! どうやら私だけが とんでもなく長い夏を過ごしていたらしい! それは私が 「そう生きよう」 としたからだ! 2年前の私は もう演劇には関わらないような気がしていた! 東北を襲った震災は 東北人である私の心に とんでもなく大きなダメージを与えた! 作家として常に他者を元気づける立場に廻りながらも 自分自身へのダメージを消し去る事ができなかった! 嘆き悲しむ人を目にしながら 悲しいストーリーや 誰もが涙するであろう美しいストーリーが 山ほど頭の中に生まれたが それを描こうとする私の手を ある問いかけが止めた! 「悲しく苦しい現実が  多くの人々に涙を流させている時に  なにゆえ作り物のお話で  人を泣かせる必要があるのだろうか?」 そんな時に私は『ひろぐ』で ”今こそいっぱい笑わせる時だ!” と説いた! 私自身もそうするべきだと信じた! しかし! 実際に津波で流された広大な瓦礫の中に立ち 周囲を見渡した時 そこに住んでいた家族や友人を失った人達 そして そこに住んで生き残った人達を なぜ今すぐ笑わせなければいけないのか その意味すらも見失った! そこでの私の判断に躊躇はなかった! 「何も書かない!」 最大の理解者であり応援者でもある 「カミさん」 も それでいい! と言ってくれた! 「お金が欲しいから結婚したんやないよ!  あんたとやったら  乞食になっても楽しそうやから結婚したんや!  ついでに言うたら  顔とか全然好きやない!」 最後がすさまじく余計だが どうにもありがたい言葉だった! 私は生活を「カミさん」に頼る事にした! 「カミさん」が質の高い演劇やテレビドラマに出演し 得てくれるお金を家計の中心として 自分は ”以前はいい脚本を書いたらしいが  今はまったくやる気のない作家” という肩書きのタレントとして人前に姿を見せた! それは特につらい事でもなかった! それによって私は多くの時間を手に入れたため たいそうひろいだ! かねてから興味のあった様々な事に 真剣に取り組む事ができたため 私の中身は充分に満たされた! なのでこれから先も このままでいいような気がしていた! そんな中で かつてのマネージャー 「ガソ」 こと 「神夏磯(かみがそ)」からの呼び出しがあり 『ドーナツ博士とGo!Go!ピクニック』 の演出依頼を聞かされた! 私が他人の作品を演出しない事は 既に承知な「ガソ」なだけに 断られる事を前提で私を東京に呼び出した! 私は私で ちょうど 「国立科学博物館」 での 特別展示が見たい時だったので 大喜びで東京行の新幹線切符を受け取った! ただそれだけであった! そこで私がなぜ演出を引き受けたのか? 実のところ今となっては 思い出す事ができない! ひょっとしたら 貯金が底をつくのは見え始めていたので そろそろ働かなければ という気持ちでもあったのかもしれない! 脚本を書かずに 演出だけでお金が手に入るのであれば それはそれは楽な仕事だ と考えていたのかもしれない! その仕事が私に 決してお金では買えない とても大きなものをもたらしてくれる事など 想像もしていなかった事は 間違いない! 今年7月! 稽古場に出向く私の足どりは重たかった! なぜなら気がつけば私は 2年も演劇の現場から遠ざかっていたからだ! 演出ってどうするんだったかな? という疑問すらが私の中には芽生えていた! ところがだ! 稽古場に入るなり 馴染みのスタッフ達が 口々に私にこう言ってくれたのだ! 「また大王と一緒に仕事するって  ○○に言ったら  すっごく悔しがってました!」 涙が出そうになるほど嬉しかった! 私は努力というものが大嫌いだ! しかしそんな私でも 仕事をする上で 努力を惜しまない事がある! 「もう一度この人と仕事がしたい!」 と思わせる事だ! 2年も演劇界に顔を見せなかった私を 他人に自慢するほど歓迎してくれた事は なによりの喜びだ! 『ドーナツ博士とGo!Go!ピクニック』を通して 私は彼らにもう一度思わせなければいけない! 「もう一度この人と仕事がしたい!」 あまりにも久々に 稽古場の演出席に座った私は そのパイプ椅子の座り心地の良さを 心から満喫した! 演出を依頼されたと言う事は 「この脚本を  あんたが面白いと思える物として  作って欲しい!」 という事だ! 「後藤ひろひとが面白いと思う事を  多くの観客も面白いと思う!」 そう信じてもらえているという事だ! 私はそれを一瞬たりとも忘れる事はなかった! なので私は演出席で ひたすら自分が笑える方向に 作品を仕上げて行った! 脚本家である 「あっくん」 こと 「西野亮廣」からも 「後藤さんが面白いと思えるように  好きに脚本を変えてもらって構わない!」 という許可をもらっていた! なので私は 「あっくん」が面白いと思えるように どんどんと脚本に変更を加えた! それが私にとっての面白い事だったからだ! 「あっくん」はよく 稽古場や飲み屋で嘆いた! 「そっかぁ!  あそこはそう書けばよかったんかぁ!」 「うわー!  なんであれを思いつかへんかったんやろー!」 彼は特に 終盤での登場人物達による追いかけ合いのシーンに たいそう悔しがっていた! 窃盗団のリーダー「ビリー」が 目当ての物品を手に入れた後に こっそりと玄関ドアを開けて 自分が外に逃げたように見せかけるシーンなのだが 「玄関が開いてる!」 という台詞を 私の権限で 玄関を開けた「ビリー」本人に言わせる事にしたのだ! 泥棒本人が言う事によって 「本当だ!  外に逃げたぞ!」 と追いかけて行く一同が より間抜けに見える! 「あっくん」はそんな子供が大喜びしそうな改訂を たいそう楽しそうに悔しそうに 見守ってくれた! そしてそんな「あっくん」の嘆きを聞くたびに 作品が成功に向かっている事を感じた! 彼の脚本の中で 一つだけどうにも納得がいかなかったのは 「ばっち」こと「相葉裕樹」君の役柄だった! いかれたキャラクター達が 壮絶に勘違いし合う脚本の中で 「ばっち」の役だけが 実に普通で面白味のない人物像だったのだ! それゆえに宣伝上は彼の役を ”主役”と押し出してはみたのだが あの作品に主役など必要ではないという事は 関係者の誰もが理解していた! 誰よりも「ばっち」本人が たいそう退屈そうに 当たり前な演技で稽古に挑んでいた! そしてぽっかりと浮いている自分の役に 不満を感じていた! 「僕だけ全然遊べないんですよねぇ・・・。」 私と「ばっち」は休憩のたびに あれやこれやと策を練った! やがて「ばっち」は ”いまどき” をテーマとしたキャラクターを開発し 私はそれを更に過剰に演出した! すると! 完璧にいかれた登場人物が誕生した! やった! これで遂に全員がいかれた! (『ドーナツ博士とGo!Go!ピクニック』の  パンフレット座談会では  「今日の稽古からあれを試す!」  という「ばっち」の記念すべき言葉が  記されている!) 最後に私は 作品の前後に演出家である自分のモノローグを 書き加えた! 劇中で最も重要となる小道具を 演出家が置き去りにしていく オープニング・モノローグ! そして登場人物達がその後どうなったかを伝える エンディング・モノローグ! それを加える事で 『ドーナツ博士とGo!Go!ピクニック』を さも私が操る世界のように錯覚させる作用が ものすごく高まった! いかれた人達が一つの建物の中で大騒ぎする そんな作品をより面白く見せるには どの役にも感情移入などさせずに 全てを上の立場から見てもらう事が 最善である事を私は知っている! やがて初日を迎え 舞台に立ち 「それはさておき」 などと言いながら お客さんに向かって一人で喋っていると そこはとんでもなく居心地のいい場所だった! 自宅で入浴するよりも 気持ちのいい所だった! どこの 「昆虫館」 よりも 長くいたくなる場所だった! 大阪での最後の公演! 私と「あっくん」と 「つむつむ」こと「津村知与支」君とで 『Grandfather's Clock』を 歌い終えてもまだ アンコールの拍手が鳴っていた! 普通ならばそれで終了なのに まだまだ拍手が鳴りやまなかった! なので急遽 私と「あっくん」とで舞台に戻ると お客さん全員が 立ち上がって拍手をしてくれていた! それはそれは美しい光景だった! 私は「あっくん」に囁いた! 「これを君に見せたかったんだよ!」 私は今回の演出を引き受ける条件として 「あっくん」の出演を提示した! 自分が書いた物で お客さんがどれほど喜んでくれたかを 客席や評判で知るのではなく 舞台の上から見せたかったのだ! そしてそれを表す最も素敵な光景が 目の前いっぱいに広がっていたのだ! 「あっくん」は目に涙を浮かべながら 「すげぇ!  すげぇ!」 とだけつぶやいていた! 私はどうしてもその光景を 他の俳優達にも見せたくなった! なのでスタッフに 「みんなを呼び戻してくれ!」 と舞台の上から指示を出した! やがて全員が舞台に集まった時には 既に私服に着替えて帰る準備をしていた俳優もいた! 初舞台である「ひめ」こと「木下美咲」ちゃんは 美人さんが台無しになるほど泣いていた! それほど素敵な光景だった! なので 「むらじゅん」 こと「しずる」の「村上純」君は 携帯電話で写真を撮影した! それはこんな素敵な写真になった! 『ドーナツ博士とGo!Go!ピクニック』の 全ての公演を終えて 今こうして書斎 「LEVEL 4」 のデスクにつく私は 記憶喪失から冷めたような気分だ! 私の作品を上手に真似て書かれた 『ドーナツ博士とGo!Go!ピクニック』 を演出した事で 私は自分が過去に何をして来て これから何をするべき人間なのかを 全て理解してしまった! もしも私が 何らかの病に犯された2年間を過ごしていたとしたら 最高のリハビリ治療を受けた事になる! 後藤ひろひとは 演出家でも俳優でもない! 以前はいい脚本を書いたらしいが 今はまったくやる気のない作家でもない! 後藤ひろひとは脚本家だ! 見る者の心をぐらんぐらんに揺らし続ける作家だ! 全ての準備が整った! 2年間の大切なおやすみを武器に 私は舞台に戻るとしようか! もう2度と! 漫才師に盗まれる程度の作品は書くまい! 私は私にしか作り得ない作品で 多くの人々の心に入り込もうとするのだろう! 今はとにかく 沢山の人達に感謝したい! 劇場に足を運んでくれたお客さん達! 私の唐突な思いつきを次々と実現させてくれた 優秀にしていたずら好きなスタッフ達! 私の遊びにいっぱい乗っかってくれた 愛すべきキャスト達! (ただし「マンボウやしろ」とは  もう二度と一緒には飲まない!) そして誰より! この機会を与えてくれた 「あっくん」と「ガソ」! みんなに感謝したい! 全ての公演を終えた翌日 私は「あっくん」と「ガソ」に メールを送信した! そこには感謝の言葉と共に 以前『ひろぐ』にも掲載した 故「スティーブ・ジョブス」の言葉を添えた! ”Being the richest man in the cemetery   doesn't matter to me!  Going to bed at night   saying we've done something wonderful!  That's what matters to me!" 「世界一の大金持ちになって墓に入っても  何の意味もないよ!  ”俺たち素晴らしい事を成し遂げたね!”  と言いながらある晩ベッドに入れたら  それが僕にとって最高の出来事だ!」 私はジョブスの言う”最高の出来事”を これから何度も経験するつもりだ! なお! 『ドーナツ博士とGo!Go!ピクニック』に関して 私へのメッセージや 私に聞かせたい感想などがあれば 是非承りたいと考えていますので しばしコメント欄を開放します! どうぞご自由にお書き込み下さいな!
ひろぐ
昆虫、ロケット、ロボット、サッカー、プロレス、映画などなど、多趣味な著者が書く方面から様々なゲストをよんでお送りするトークショーあり、ブロマガありのエンタメチャンネル!