前言撤回するようで申し訳ないのですが、私が前回妄想で書いた“キュレ―ション3.0”は、なかなかワークしないだろう。
いや、実際にはワークしていると認めてもらえないと言った方が正しい。
「失敗」レッテルを貼られる理由
ここ15年くらいの間に、企業は掲示板やブログ、SNSなど、社外で使われているものを導入してはやめるという歴史を繰り返している。お金と時間をかけて、せっかく導入したツールをやめてしまうなんて、もったいないことこの上ない。
2012年度のIDC Japanの調査結果によると、47.7%の企業が社内ソーシャルを利用している、または検討しているとのこと。(出典:IDC Japan)
もしかすると、今これを読んでいただいている方の会社にも、社内ソーシャルのようなツールが導入されているかもしれない。そして、一部の「そういった」ことに敏感で発信意欲の高い人、もしくはすっごく暇な人のどちからかにしか使われずに、気が付けば「あれ、どうなったんだっけ?」と思われ、しばらくすると「失敗だった」というレッテルを貼られる、なんてこともあるかもしれない。
社内ソーシャルに関わらず、一般的に私たちが生活者として利用しているツールは、少し遅れてから社内にやってくる。そして、「日常的に使っているんだから、仕事でもつかえるよね」という暗黙の了解のもと、何となく導入され、静かに幕を閉じていく。
考えてほしい。
私たちが一般的に使っているSNSやWEBサイトなどのサービス。成功して人気を博しているものは、どれだけ運用に力を注いでいるのだろうか。何もケアせずに、大人気になるサービスなんてあるのだろうか。
(これを読んでいらっしゃる方には、もはや当たり前かもしれませんが)
社員の意識と行動の分類
前置きが長くなりましたが、今回の問い。
「誰が社内ソーシャルを使うのか」
目的なく社内ソーシャルを導入する企業もあるというが、もちろん企業であるから、キメキメでなくても、ある程度のゴールと費用対効果を見込んで導入していることを前提として、考えてみたい。
私たちは日常的にfacebookやtwitterを使っている。そこには、なんでもかけるのだけど、場が社内ソーシャルに移った瞬間、書き込めなくなってしまう。そんな人が多いと聞く。
では、実際に書き込んでいる人とはどのような人なのだろうか。
私は、株式会社ソフィアという会社で、インナーブランディングのシナリオプランニングを担当している。だから、いろいろな企業の、実にいろいろな職種の方々にインタビューをする機会がある。これまで、数百人という「社員」の方々にお話を伺う中で、社員の方々の行動特性は大きく4つに分類できることがわかってきた。
簡単に説明すると、
「目的志向の行動型」
すごくパッションにあふれていて、目的志向でどんどん変革を進める。そのせいか、周囲に少し“うざい”と思われていることもある。しかし、そういった周囲の目は気にせず(気にしていないふりの可能性有り)、成果を出すために前のめりで活動する。そのために社内外関わらずネットワークを広げる。
「和を重視する調和型」
「和をもって尊し」が基本。周囲との調和を重視し、摩擦を恐れてなかなか進められない、または、綿密な根回しでくたくたになることがある。頼られると断れないので、仕事を多く抱えてしまいがちだが、周囲の人に愛されていて、人間関係は一見良好。
「スキル重視の研究型」
自分のスペシャルティを極めていくことが最重要。自らのスキルを高めるための研究には時間も手間も惜しまない。スキルを高めることで、組織に貢献する。ただ、そのスキルを主張しすぎるがあまり、周囲との摩擦が起きることがある。
「業務重視のフリーズ型」
とても多忙。とにかく多忙。手帳やパソコンには、やらなければいけないタスクがたくさん書き込まれていて、優先順位が付けられない(もしくはタスクの書き出しもしていないためわからなくなる)。深夜残業や休日出勤も多く、頑張っている人に見える。先を見据えた仕事ができなくなっている。
少し極端に記述したが、概ねこの4つの分類になる。もちろん、この分類は永久的にこのままではなく、配属された部署の雰囲気や仕事内容などに影響されるところも大きいため、その時々で変化する。
孤独を感じる社内イノベーター
この分類に沿って考えれば、社内ソーシャルを目的にあわせて使う人、目的はともかく周囲とのコミュニケーションのために使う人、自分のスキルを周囲に知らせるために使う人、使う余裕などない人など、と分類ごとの傾向が見えてくる。
そして、この分類を見てお気づきかと思うが、「目的志向の行動型」は、非常にマイノリティ。彼らは、社内におけるイノベーターとして、新しい取り組みやツールの積極的な活用を始める。社内ソーシャルに関わらず、前回の記事で妄想した「キュレ―ション3.0」を現実化してくれる人かもしれない。
しかし、彼らは社内において同じ志向や同じ価値観を持った人となかなか出会うことができないため、職場で孤独を感じていることが多く、人とつながることができるツールを求めているのだ。
かれこれ、6年くらい前だろうか。連結で50,000名を超える会社の社員インタビューで、まさにこの「目的志向の行動型」に出会った。彼はまだ30歳前の若手で、職場の変革のために、周囲の仕事はそのままに、変化させるべきことはすべて自分一人で対応していた。そして、1時間半にわたるインタビューの最後に言ったのです。「親会社、子会社、孫会社関係なく、社員同士がつながって、自分と同じ価値観を持ち、行動している人がいるのがわかっていたら、僕はもっとがんばれる」と。
導入はゴールではなく、スタート
しかし、彼らイノベーターだけでなく、その後に続くアーリーアダプターを生むためにも、手放し運転はNG。手放し運転でも、イノベーターたちの努力により、一時的に活性化するかもしれない。しかし、”一部の社員しか使っていないので失敗”という結論付けされる可能性だってゼロではない。最初から、全員がいきなり使い始める、なんて夢物語はそこにはないのだが・・・(たまに全員が使うことを前提としてしている会社もあるので)。
冒頭でお話ししたように成功して人気を博すサービスは運用にとても力を注いでいる。社内におけるソーシャルも、それぞれ目的に合致する利用の仕方を促進し、また社員一人ひとりが楽しんで、役に立つと感じながら使え、それぞれの成長、ひいては企業の成長につながるような支援をしていくこと。
そのときに、社内の「どんな人に」、「どんな風に使ってもらいたいか」を考え、さらにその人たちが「使ってよかった」と思うために、どんなファシリテーションが必要か、まで考えられると、より活性度が高まるのではないだろうか。
そして、そういったことを考え、自主的に動かしていくことが、導入を決めた経営者の、そして担当者の重大なミッション。
ブームとなっている社内ソーシャルだが、導入をゴールとしないでほしい。たくさんの、いろんな社員の方々のお話を聞いてきたからこそ、思うこと。ユーザーである社員のことを考え、彼らの役に立つ、そんな運用をしてほしいと筆者は切に願うのです。
by 森口 静香