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ユーザーエクスペリエンス (UX) からみる2014年トレンド【btrax】
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ユーザーエクスペリエンス (UX) からみる2014年トレンド【btrax】

2014-01-15 09:30
    ここ数年で恐らく”デザイン”という言葉の意味と価値が大きく変化した。そして今年、2014年はこれまでには考えられない程にユーザーエクスペリエンス (UX)デザインのイノベーションへの重要性が高まるだろう。”2013のトレンド Top10を振り返る – UI編”及び”2013のトレンド Top10を振り返る – UX編”からも解る通り、優れたUIとUXを実装したプロダクトが市場をにぎわせている。

     

    UI 及びUXの重要さは以前よりとりざたされて来ているが、2014年に入りさらに加速するであろう。プロダクトのスペックやテクノロジーよりもユーザーが受け取る”エクスペリエンス”が最も重要なファクターであり、ユーザーはモノ自体にお金を払うわけではなく、そこから得られる利用体験に価値を感じるのである。

     

    そして、2013年がイノベーション前夜だとしたら、2014年は確実にイノベーション元年となる事が予想される。パソコンやスマホの枠を超え、私達の日々の生活に確実に影響を与えるサービスが続々リリースされ、人々のライフスタイルに大きな変化が訪れる。もちろん未だに車は空を飛ばないし、人類が火星に移住するまでにはしばらくかかるだろう。しかし、確実に私達の日々の生活に大きな影響を与える商品が次々と発表されるはずだ。

     

    こ れまではAppleの独り勝ちとも言えたこのユーザーに対する総合的ライフスタイル提案型プロダクトに対し、多くの企業がその牙城を崩さんとチャレンジし始めている。今後はデバイスやテクノロジーの内容自体よりもユーザーが受け取る”エクスペリエンス”が最も重要なファクターになってくる。ヒット商品を生み出したいのであれば、ユーザーにプロダクトの利用体験を通して新しいライフスタイルの提案が必須になる。それでは、ユーザーエクスペリエンスの側面から見る2014年のトレンドを見てみよう。

     

     

    2014年から始まる新しいユーザーエクスペリエンストレンド

     

    これからのユーザー体験のキーワードは”Always Connected”

    先日のEngineer Typeでのインタビュー記事で も紹介されている通り、今年も引き続き優れたユーザーエクスペリエンスを提供するプロダクトが注目され、恐らく暮れごろにはネットに繋がっていないデバイスの方が少なくなるぐらいの勢いであろう。私達の身の回りのプロダクトのその多くがインターネットにつながりだす事により、クラウドやAPIなどのネット上に存在する様々なシステムにコネクトする。それにより、俗にInternet of Things (IoT)を通し、今までの概念では想像もできなかった利用方法と価値がユーザーに提供される。それはまるで、今までは水槽に閉じ込められていた金魚が大 海に飛び出すかのごとく、無限の可能性が広がる。

     

    ハードウェアとソフトウェアの境界線が消える

    インターネットが普及し多くのソフトウェアがWebアプリに変換され、スマートフォンの普及で大量のモバイルアプリがリリースされた。すなわち多くのソフトウェアが誰でも無料もしくは安価で手に入れる時代が到来したという事である。それは同時に、あまりにも多くのソフトウェアが氾濫し、それ自体での差別化が難しくなってきたという事でもある。例えば、Webやモバイルアプリ”だけ”ではユーザーに対して提供出来る価値は限定的になる。

     

    これからは、AppleがiPodとiTunesの両方を通じユーザーに総合的な価値を提 供したように、優れたユーザーエクスペリエンスを提供したいと思うのであれば、これからはデバイス+ソフトウェア+インターネット+コンテンツのコンビ ネーション以外あり得ない。例えばインターネットに接続したハードウェアをモバイルアプリのダッシュボード画面で操作し、そのデータがクラウドを経由して Webアプリ経由で閲覧出来る。そしてその全てのエクスペリエンスに一貫性がある。

     

    加えて2014年はよりいっそうハードウェアの創り出すコストとプロセスの最小化が進むことで、ハードウェアとソフトウェアの垣根を越え、加えてインターネットテクノロジーを活用したプロダクトが市場をにぎわすであろう。

     

    スマートウォッチが百花繚乱

    恐らく2014年に最も多くの人々の生活に影響を与えるプロダクトのその一つがスマートウォッチであ る。スマートウォッチとは、時計をスマートフォンやインターネット接続させる事で通常の時計の機能の他に、Webの閲覧、ソーシャルメディア利用、各種情 報の取得等を可能にするデバイスである。また、ユーザーの行動情報や位置情報、その他のデータを取得・活用する事し、クラウドシステムと繋ぐ事で、それぞ れのユーザー毎にカスタマイズされた機能を提供する事も可能。

     

    これまでもNike Fuel Band, Jawbone Up, FitBitなどの腕に装着可能なデバイスは幾つか存在しているが、そのほとんどがユーザーの行動を感知し、健康に役立てるフィットネス系の機能をメインとしてきた。従って、腕にはめていたとしても、それらは”時計”として利用されているわけではない。

     

    しかし、2013年にクラウドファンディング経由で大きな話題を呼んだPebbleの 最新モデルを初めとして、先日ラスベガスにて開催された世界最大の家電市、CESでも複数のメーカーやスタートアップから各種スマートウォッチが多数発表 された。また、近いうちに真打ちのAppleからもスマートウォッチが発表される事が噂されており、ゆくゆくはスマートフォンに取って代わる可能性も考えられる。2014年は時計がユーザーに与える新しい利用体験価値に注目したい。

     

    文字-less コミニュケーションの始まり

    日本でも大人気になっているLineの成功でも解る通り、文字を使わないコミニュケーションを提供するプロダクトにも注目したい。ユーザーとしては時間の節約だけではなく、より細かなニュアンスをつたえたり、言語の壁を乗り越えたり出 来るなど、新たなエクスペリエンスに対して大きな価値を感じている。そしてこれからは画像や絵文字、ステッカーだけではなく、動画やジェスチャー、そして最終的には脳波によるコミニュケーションの実現もあるかもしれない。テクノロジーの発達で一昔は超能力と思われていた事が近いうちに可能になる。

     

    リアルなユーザー体験を提供するオンラインサービス

    以前の記事”シェアリングエコノミー:新しい形の消費モデル“の中でも紹介されたUberAirbnbな ど、ネット上だけでは完結せずに、ユーザーのリアルな生活に価値を提供するようなサービスが2014年も一層人気を集めるだろう。ソーシャルメディアの様にユーザーがネット上で何かをする為のサービスではなく、生活の中での不便をテクノロジーが解決するという本来あるべき姿が最も正しいエクスペリエンスの 提供である。

     

    スマート家電からスマートホームへ

    モノがインターネットに接続するコンセプトは今からおおよそ10年程前に も”ユビキタス家電”という呼び名で話題になった事がある。冷蔵庫やテレビ等、家電がネットと接続する事で可能性が広がるというコンセプトだったが、その当時はWifiやスマートフォン等のインフラが整っておらず、時期が早すぎた感があった。しかしながら、今まさにあらゆる家電がネットに繋がる事で次世代のユーザーエクスペリエンスを可能にしている。

     

    2014年中には様々な家電が室内Wifiを利用してインターネットと接続する事で室内全てがスマート化していく事が予想される。例としては室温をスマートにコントロールするNest, スマホ経由でカギが開くLockitron, 次世代の歯磨き体験を提供するKolibree smart toothbrushなどがある。これらは全て”スマート家電”と定義されるが、近いうちに家自体がネット接続し、スマートホーム化するであろう。

     

     

    ヘルスケア系プロダクトにも期待

    あらゆるデバイスがインターネットと接続する事で、ユーザーの健康管理に関するプロダクトにも大 きな変化が訪れるであろう。ヘルスケアやフィットネス系のプロダクトは、そのデバイス、データ、コンテンツそれぞれの分野での精度を上げ、様々なユーザーニーズを解決するだろう。これまでのダイエットや運動関連の商品に加え、これからはユーザーのストレス値を元に心のケアも行う事で、潜在的なリスクを事前に感知し、心身ともに健康的な生活の提供を目指す。

     

    自動車が4つのタイヤがついたスマートデバイスに

    米国株式市場で2013年に最も株価を上げた銘柄は次世代の電気自動車 (EV)を提供するTesla Motorsで あった。一年間で株価が実に約3.5倍にもなった彼らが提供するのは単なるEVではない。常にネットに接続し、車体をコントロールするソフトウェアは随時システムアップデートされ、その度に走行性能がアップされる。各パーツは完全にモジュール化されていて、組み立て、交換が効率的に可能になっている。そして、車体の購入はオンライン経由。サイト上でオプションや色の設定を行い、オーダーを行う。このユーザー体験は自動車というよりも、まるでパソコンやスマートフォンのそれに近い。

     

    ユーザートレンド側から見ても、車を選ぶ際の決め手は馬力や性能よりも、iPadが繋がるかや、ダッシュボード の操作性などのユーザーエクスペリエンスを重要視する傾向にある。これに対し、多くの自動車メーカーが時勢代のモデルの投入を予定している。また、 2014年はApple iOSやGoogle AndroidがOSとして自動車に導入されたり、Spotifyが車内で利用可能になったりなど、よりいっそう自動車とネット技術の融合が進みそうである。

     

    加えて、AutomaticDashなど、自動車やモビリティーに関するサービスを提供しているスタートアップにも注目が寄せられる。

     

    自転車だって新たなエクスペリエンスを提供

    最 新テクノロジーを活用してユーザーに新たな価値を提供しているのは自動車だけではない。より身近な乗り物である自転車にも大きな変化が訪れようとしている。アメリカの都心部では自転車の盗難がかなり大きな問題になっているが、GPSを搭載しスマホと連動させる事で随時自転車の場所を確認する事が出来る様 になったり、スマホアプリを活用してカギの開け閉めをしたり、ユーザーの自転車に取り付けられたセンサーを利用して環境情報を取得したりなど、自転車のスマート化もどんどん進むであろう。注目したいプロダクトとしては、FlyKly Smart Wheel, Faraday Bikes, Helios, Fukushima Wheelがあげられる。

     

     

    ウェアラブル系は見た目が命

    昨今話題になっているウェアラブルデバイスであるが、実はテクノロジー面よりも装着時のかっこよさが運命を決める最も重要なエクスペリエンスとなると考えられる。これまでに多種多様なデバイスが発表されているが、見た目のクールさを売りにしているものは意外と少ない。

     

    特にGoogle Glassに代表されるような視覚デバイスは、装着時にかなりの違和感があるのでまだまだ時期尚早な感がある。装着時に違和感を持たせない事に加えて、周りの人から見てもオシャレでなければウェアブルとしてのエクスペリエンスは非常に低いだろう。

     

     

    消滅するトリセツ

    新たなプロダクトが次々にリリースされる気配のする2014年であるが、忘れてはならないのが、ほとんどの製品 に取扱説明書がついていないという事。パッケージに簡単な使い方は書いてあったとしても、数ページに及ぶ説明書が必要になっている時点で、ユーザーには使ってもらえないと思って良い。取扱説明書は数年前までは家電を中心に無くてはならない存在であったが、これからの時代は直感的に利用出来るUXを実装し ていないプロダクトはヒットしないであろう。

     

    提供するユーザー体験を説明するにはコンセプトムービーが最適

    Webサイト やカタログ等の静止画では到底説明しきれない、新たな利用体験の提供をユーザーに対して訴求するプロダクトに関しては、ユーザーの生活にフォーカスしたコンセプトビデオをオンライン上で展開するのが最も有効な方法である。事実、これまでに紹介したプロダクトのその多くがコンセプト動画をメ インコンテンツとしてる。日本発のプロダクトでも優れたコンセプトムービーを作成すれば、世界中にアピールする事が出来る。

     

    新たなユーザー体験を説明するコンセプトビデオ例:

     

     

    まとめ:

    上 記のトレンドに関してよく考えてみると、最近話題になっているデバイスやサービスのその多くが10年以上前から日本でも開発・販売されていたものと大きく 変わらない事が解る。ではなぜ今さらになって海外のスタートアップを中心として創り出されるこのようなプロダクトが注目されているのだろうか。恐らくそれ は、テクノロジー自体ではなくインターネットと接続した事にもよる総合的なエクスペリエンスをユーザーに対しての提供出来ているのが大きな理由だろう。また、奇抜なコンセプトを備えた話題のプロダクトはソーシャルメディア等を介して瞬時に人々に広がるバイラル性もその成功に一役買っているはずだ。

     

    し かしながら、いまだに多くの日本企業が創り出すプロダクトはスペックは良いのであるが、利用するユーザーに対しての総合的な問題解決、ユーザー体験、そし てライフスタイルの提案が出来ていないものが多く、残念に感じる。一方で去年から徐々に増えてきているアメリカのスタートアップが提供するプロダクトは性 能や機能面で多少見劣りするが、利用者に対してのクリアな価値提供に成功しているケースが多い。その点を見ても、2014年はソフトウェア、ハードウェア、インフラなどの垣根を越え、ユーザーに未来を期待させ、”ワクワク”するようなプロダクトがよりいっそう多く見られるであろう。

     

    こちらの記事を新年の挨拶に変えさせて頂き、2014年は引き続き我が社btrax (ビートラックス)もクライアントのプロダクトのグローバル展開を可能にするエクスペリエンスデザインを提供するべく、スタッフ一同邁進していきますので、今年もよろしくお願い致します。

     

    筆者: Brandon K. Hill / CEO, btrax, Inc.

     

     

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