• このエントリーをはてなブックマークに追加
時代の変化を越え、100年続く企業を創る 〜ソーシャルシフト、実践の2年半〜
閉じる
閉じる

新しい記事を投稿しました。シェアして読者に伝えましょう

×

時代の変化を越え、100年続く企業を創る 〜ソーシャルシフト、実践の2年半〜

2014-10-02 08:30

    はじめに

     

    ループスのソーシャルシフト(※1)コンサルテーションが本格的に始まり、約2年半が経ちました。2011年の暮れ、「ソーシャルシフトの会」(※2)のコミュニティに入っていた株式会社カスミの監査役の方がループスを訪れ、その後すぐ、年明けには代表取締役会長の小濵氏が弊社代表の斉藤に会いに来られました。
    「ソーシャルシフト」の本を片手に。たったお一人で。

     

    当時の様子は別途ブログで記事にしていますので、改めて書きませんが、大企業のトップの方をここまで熱くする危機感に、ループスという小さな会社が役に立てるのかと、入社したての私は不安に思ったのを覚えています。

     

    あれから2年半、この度、現場のリアルな奮闘をベースに“ソーシャルシフト”の実践本として、を一冊出す事ができました。(※3)

     

    本書は、これまでの斉藤の著書「ソーシャルシフト」「BEソーシャル!」を基本概念に、私たちループスのコンサル部隊が実践してきたソーシャルシフトのコンサルテーションメソッドを、もっと現場で実践しやすい形に仕上げたソーシャルメディア時代の経営改革の本です。

     

    経営トップの描く改革の姿を現場に下ろした時に起こる、摩擦、担当者の奮闘、経営者が抱く危機感と描く理想、経営と現場の意識の違い…そういった、どこの企業でもありそうな「新しいことをやるときの大混乱」、そして「混乱の中でも前進し続ける信念」をこの本から感じていただけたら、書き手の冥利につきます。

     

    この本を書く中で常に念頭においていたことがあります。それは誰にでも、たとえばパートやアルバイトとして企業に勤めている方々にも「ソーシャルシフト」の息吹を感じてもらうこと。「ソーシャルシフトってこういうことなんだ」と感じ(まずは感じることが大事)、「身近なことからこれからの企業の50年は創られるのだ」と、新しい発見につなげていただきたいと思い、物語として楽しめるように書いています。

     

    読み終わった時に「面白かった!」と第1声で言っていただけたら嬉しいです。いつでも傍にある、読者の方と仲良くなれる本でありたいです。

     

    では、ここで少し本の内容に触れてみましょうか。

     

    この本について

    この本は大きく2つのロケットに分かれて展開しています。

     

    【ファーストロケット】改革の必然性への気づき

     

    プロローグから第3章までは、ソーシャルメディアが一般的に普及し、あらゆる情報が透明になっていく時代、社会の変化とともに変わりゆく生活者に企業がどう対峙して行くかということがテーマです。「ソーシャルシフトの改革」の序章です。

     

    ◎プロローグ
     地元スーパーはアマゾンとどう戦えばいい?
    ◎第1章
     炎上発生!泊まらない誹謗中傷の拡散をどう止めればいい?
     SNS時代の「新しいリスク」とコントロール
    ◎第2章
     「いいね!」のためにやるんじゃない!
     顧客と向き合う「真実の瞬間」
    ◎第3章
     ゲリラ豪雨!電話もメールも通じない組織をどう動かす?
     これからの「ハブ&スポーク型」の情報ネットワーク

     

    舞台は神奈川県の相模湾沿いに150店鋪ほどのローカル食品スーパーを経営する「ハッピーマーケット」。プロローグ、物語は社長の危機感から始まります。

     

    「アマゾンの国内市場流通額が小売業最大規模に」というニュースを目に、自分たちの競合は他県から迫ってくる同種の食品スーパーだけではなかったと、社長は焦ります。戦いは地上戦だけでなく、空中戦でもすでに広がっていたのだと気づき、新しい時代への生き残りをかけた経営改革が動き出します。

     

    物語の本編第1章からは、実家のスーパーを継ぐための勉強として、都内の半導体企業から小田原の小売企業「ハッピーマーケット」に転職して来た青年を主人公に進みます。転職先の企業でいきなり炎上事件に巻き込まれ、これまでのマニュアルにない危機管理体制を組み、これまでにないスピードでクライシスに対応してい く「古い組織」の大混乱ぶりを描いています。

     

    その後、第2〜3章にある、改革の推進チームの結成、社内の啓蒙活動、フェイスブックページの立上げ、天災による店鋪の危機などを乗り越えて行く中で、「この改革に本当に必要な事は何か」「改革の推進における一番の課題は何か」に近づいて行きます。

     

    本のタイトルにもある通り、この本は現場の方の実践に役立つようにつくっています。

    エンタメ感たっぷりの物語の中に、改革のポイントを要所で差し込んでいます。

     

    〜ファーストロケットの主な内容〜

    * 炎上対応のワークフロー
    * 社員向けのソーシャルメディア利用ポリシー(ソーシャルメディア活用の「お作法」)
    * フェイスブックページの運用ガイドライン・運用評価
    * 改革を浸透させる順序、新しい事を伝える順序(ロジャースのイノベーター理論)
    * 顧客ロイヤルティが決まる「真実の瞬間」 
    * 災害時のSNS活用のオペレーション など

     

    【セカンドロケット】改革の本質課題への踏み込み

     

    そして、後半戦は組織改革の序章となります。

     

    インターミッションで描かれている部分、海外のソーシャルシフト先進企業「ホールフーズマーケット」の視察を通じ、社長が新たな気づきと、課題の掲示を受けます。ここでの大きな気づきは「現場に権限を与えることが企業の強さを底支えする」です。

     

    ◎インターミッション
     「組織と社員の未来」を実現したホールフーズマーケット
    ◎第4章
     「コントロール」と「任せる」。正しいのはどっち?
     現場の声をフィードバックできる「オープンリーダーシップ」
    ◎第5章
     ビジネスは「現場」が9割!
     「顧客経験価値」と「社員恊働」のピラミッド
    ◎第6章
     北欧のイケアとインドの会社。共通する「強み」とは?
     ヒト・モノ・情報すべてを変える「ソーシャルシフト」
    ◎エピローグ
     100年続く企業をつくれ!

     

    第4章から第6章は、主人公や、そして現場(スーパー)の店長さんが、変容を遂げてきている生活者や社会のうねりに対峙して行く中で「生活者である従業員」を意識し、彼らの「声」を積極的に傾聴していくプロセスがキーになります。それを実践するためのリーダーのあり方としてシャーリーン・リーの提唱した「オープンリーダー」を、現場で実践しやすいリーダーシップ論に噛み砕いて取り入れています。

     

    後半は、現場と本部組織の攻防や、徐々に現れてくる理解者との連携、「店」という経営体と、「チーム」という意識の芽生えを通じ、ソーシャルシフトの改革が単に生活者に照準をおいた改革ではなく、”変容し続ける時代に対応していく、持続可能な企業をつくるための組織改革”であることに気づいていきます。

     

    〜セカンドロケットの主な内容〜

    * オープンリーダーシップ
    * 顧客と従業員の「声」を傾聴し、店鋪経営に活かすしくみづくり
      (「声」のフィードバックループの構築)
    * ソーシャルシフトの施策事例
      (それぞれのリーダーのそれぞれのソーシャルシフトの形)
    * 感動体験はどうやって築かれるのか
      (「顧客体験価値のピラミッド」と「社員恊働のピラミッド」)
    * ソーシャルシフトのプロセス「インサイドアウトイノベーション」
    * ソーシャルシフトの改革のKPIとは など

     

    さいごに

     

    この本を書くに当たって、私たちのお客様であるカスミ社の皆さんと推進している改革の現場で起きた出来事を多いに参考にさせていただきました。

     

    実際に起きた出来事をストーリーの原案にしたものもあれば、そうでないものもあります。登場人物においても、モデルがあるものもないものもあります。その点は、「伝えるべきことをどう伝えるか」という書き手の奮闘の結果として、受け止めていただければ幸いです。

     

    実際、現場で中心となって動いている推進組織のメンバーは、本当に必死です。得体の知れないものへの不安もたくさんあると感じます。けれど、新しい時代とは常に得体の知れないもので、その新しい時代にストレッチしていく企業になっていく過程では、そういった沢山のドタバタ劇があるということだと思います。

     

    現場は「スーパーの女」や、「半沢直樹」や、「踊る大走査線」のようなことが本当に起きています。まさに、事件は現場で起きています。

     
    だからこそ、現場の声を経営者が傾聴する、部下の声を上司が傾聴することが求められています。上司や経営者は現場に力を与え、持ちうる限りの知恵を与えて現場の従業員をエンパワーメントする。それが、企業があと数十年生き残るための、第1歩だと考えています。

     

    カスミ社の皆さんは、その一歩を着実に踏み出し始めています。

    旧態依然としたコントロール志向のマネジメントでは、最早ストレッチもスケールもできない時代なのです。

     

    「自分が出来る事はたかが知れとる」
    私が大好きな建築家が言っていた言葉です。

     

    従業員一人一人に誇り持ってもらい、経営に関っている実感を持ってもらう。
    「私たちのお店」、「私たちの会社」と愛着を持ってくれる従業員。

    その集合がどれだけ強い企業を創るでしょう。

     

    みなさまの会社ではどうですか?

     

    写真:ループス・コミュニケーションズ、カスミ社・ソーシャルシフトプロジェクトのメンバー(後列左から時計周りに、福田、加藤、岡村、斉藤、一人飛んで伊藤)、カスミ社の推進責任者高橋さん(前列中央)と一緒に。ここには写っていませんが、ここに至るまでの過程で多大なる尽力をして下さった、鬼頭正己さん、北野達也さんにもスペシャルな感謝を。

     

    ※1「ソーシャルシフト」
    ソーシャルメディアが誘起したビジネスのパラダイムシフト。
    生活者と企業の新しいコミュニケーションのカタチであり情報が透明になった時代の経営改革のあり方。
    ソーシャルシフト〜これからの企業にとって一番大切なこと〜
    BEソーシャル!〜社員と顧客に愛される5つのシフト〜』(両:斉藤徹著)

     

    ※2「ソーシャルシフトの会」
    斉藤の「ソーシャルシフト」執筆時に出来上がったFacebookグループ、現在グループ参加者は約6000人。各地域ごとに18の分科会が生まれ、各地域で「ソーシャルシフト」の考えや実践を共有し合うコミュニティが出来上がっている。
    参考記事:出版新潮流 1800人で書籍の「ソーシャル編集」 新刊本「ソーシャルシフト」の舞台裏(日経電子版記事)

     

    ※3『ソーシャルシフト〜新しい顧客戦略の教科書〜

    斉藤徹、伊藤友里著。9月23日発売、現在アマゾン、全国の主要書店で販売中です。


    by 伊藤 友里
    RSSブログ情報:http://media.looops.net/yurio/2014/10/02/text_for_socialshift/
    コメントを書く
    コメントをするにはログインして下さい。