IBMの大規模調査「IBM GLOBAL CEO Study 2012」では、ソーシャルメディア時代における新戦略として、多くのCEOが「顧客・社員・パートナー」との関係性を深め、競合優位の構築を推進していることを明らかにした。この記事では、先日開催されたセールスフォースのイベント「ドリームフォース」にて、この絆による価値創造を具体的にどのようにしていくか、発表された情報をもとに詳細に踏みこみたい。まずは第一回として、「顧客との関係性を深めることによる価値創造」を、バージン・アメリカの事例をもとに紹介したい。

 

航空業界は、ソーシャルメディア活用に積極的だ。ジェットブルー航空やサウスウェスト航空はツイッターによるアクティブサポートで知られており、ともにフォロワー数は100万人超、ビジネス・アカウントでは世界最大級だ。また全日空や日本航空のFacebookページはともにファン数70万人と国内トップクラスを誇っている。中でも注目されているのは、バージングループの航空会社であるバージン・アメリカだ。米国Ampliateの 調査資料 によると、2011年、米国航空会社に関するソーシャルメディア上の投稿は33,043件、それらは約4,700万回シェアされた。投稿のうち、ポジティブな意見は45%だったが、バージン・アメリカへの投稿はなんと96%がポジティブであり、ソーシャルメディアで最も愛されているエアライン・ブランドであることがわかった。 

 

このイベントでは、「顧客との絆を深めるソーシャル革命」の具体的なイメージとして、バージン・アメリカが現在すすめようとしている未来型サービスをもとに次のようなデモが行われた。

 

バージン・アメリカのある航空機が飛行中に遅れて、定時に到着できない事態が発生した。すると同社のスタッフは、顧客管理システムでファーストクラスの乗客の情報を一人ずつチェックし、同じ画面でその乗客が最近フェイスブックに書き込んだ情報も確認する。このチェックをしたところ、乗客の一人がフェイスブックで、その日に極めて重要な用事があることを書き込んでいて、航空便の乗り継ぎを急がないと遅れてしまうことが分かった。そこでバージン・アメリカのスタッフは、着地の空港にいるスタッフに、素早く乗り継ぎができる移動経路の地図を送り誘導を指示した。この指示を受けた空港スタッフは機転を利かせ、誘導する旨を乗客の座席の前にあるモニターに表示させた。(出典元記事 : 日経ITpro「ソーシャル革命が起きている」)

 

このデモンストレーションは、セールスフォースの得意とする顧客管理機能とあわせて、プラットフォームであるForce.comや新機能のChatter Communitiesを活用し、独自にカスタマイズすることで実現される。具体的なプロセスは次のようなものだ。

 

  1.  Force.comが提供するAPIを使って、航空管制システム(他システム)とデータの連携を行う
  2.  Salesforce(Sales Cloud)の顧客管理機能やData.comのソーシャル・キーを使って、顧客のマイレージやソーシャルメディアでの言及などを統合し、VIPかどうかの管理を行う
  3.  Force.comの機能を使って、自動的に案内図を生成する
  4.  Virgin America社内用のChatterで、各空港の社員間でリアルタイムに背景説明を加えた情報を共有する
  5.  Chatterboxを使って、ファイルをデスクトップとクラウド間で簡単に同期する
  6.  Chatter Mobileを使って、席から離れていても情報を確認し、対応できる
  7.  Chatter CommunitiesやChatter APIを使って、Virgin America独自のアプリを開発し、機内ディスプレイでChatterを使った社員と顧客のリアルタイムコラボレーションを実行できる

 

なお、デモで活用されているChatter Communities for Service は、2012年秋にパイロット限定版を配布の予定で、一般提供は2013年後半に開始とされている。また、より詳細なバージン・アメリカのソーシャルメディア戦略に関しては、こちらの動画をご覧いただきたい。

 

Click here to view the embedded video.

閲覧できない方は、こちらへどうぞ。 Virgin America Social Media Strategy
 

イベントに登場したバージン・アメリカのデビッド・クラッシュCEOは「伝統的な航空会社は、社員の多くが軍出身者ということもあり、指揮統制を中心とする考えが根強い。しかし、私たちの文化は異なる。グループの垣根を越えたコミュニケーションやコラボレーションを促進していきたいと考えている。それがうまくいけば、私たちは直接お客様との会話に入っていけるだろう」と語り、顧客との絆を深めるために、バージン・グループの開かれたカルチャーがプラスになっていると強調した。

 

ビジネスをソーシャル化する。それはテクノロジーの問題だけではない。企業文化や組織、意思決定のメカニズムまで大胆に変革する必要があるのだ。彼のコメントには、そんな大切なメッセージが含まれている。

 

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by 斉藤 徹
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