DUE内の制作担当(CDのプロデューサと言えば分りやすいですね)から「楽曲をゲームに導入する場合、どれくらいの印税をもらうのが妥当なのか?」という質問を受けました。

一言で「楽曲をゲームに導入する」と言っても、「どういうタイプのゲームなのか?」「音楽著作権のみを使用するのか、原盤も使うのか」などによっても印税の考え方が大きく違います。

以前「§2:自分の曲をゲームに収録してもらいたい。」という記事を書きましたので、そちらもご覧になっていただきたいのですが、「ゲームに音楽を導入する場合の印税」を考える上でのポイントを箇条書きにしたいと思います。


■Ⅰ■ まず次のことを調べてください

Ⅰ-1.音楽はどんな使用のされかたをするのか

(1)いわゆる「音ゲー」か?
(2)音ゲーではなく、ゲームの背景や挿入歌として音楽が使われるのか?

Ⅰ-2.原盤をつかうのか?

(1)曲をゲームメーカーがMIDIなどで打ち込みなおしてゲームに導入するタイプか?
(2)権利者が作った音楽原盤ごとゲームに導入するタイプか?

Ⅰ-3.ゲームはどんなタイプのものか?

(1)アーケードゲームでゲームメーカーはゲーム機器をオペレーター(ゲームセンター運営会社)に販売することのみで収益を上げているタイプか?
(2)まだあまりこのタイプが無いが、アーケードゲームだが、ゲームメーカーはオペレーターにゲーム機器を販売した後も、継続的にあるいは不定期に「楽曲を追加販売」していくタイプか?
(3)コンシューマーゲームで、音楽がゲームソフトとともに録音されているディスクなどを販売するタイプか?
(4)コンシューマーゲームで、ユーザーはダウンロード販売で「音楽ファイルを購入する」タイプか?



■Ⅱ■ 印税を算出するための代表的な考え方は次の通りです(浜町音楽ギルドの考え方です)

Ⅱ-1.アーケード版の「音ゲー」でメーカーがオペレータに売り切りの場合

音楽著作権使用料は  ”「基本使用料」(1曲あたり)+「複製使用料」(ゲーム機1台あたり)”と
いう形にわけてそれぞれの金額を「指値(交渉で決める)」で設定します。

原盤使用料も同様に ”「基本使用料」(1曲あたり)+「複製使用料」(ゲーム機1台あたり)”という考え方ができます。

具体的な金額のイメージはゲーム機の販売実績やタイプなどによって変わってきます。DUEに音楽出版を預けていただいているボカロPさんは、個別に浜町音楽ギルドに相談してきてください。


Ⅱ-2.コンシューマーゲームの「音ゲー」で音楽を個別にDL購入するタイプの場合。

著作権使用料は、その楽曲の「配信権」をJASRACやイーライセンスにて管理している場合、それぞれの管理団体のルールに従い計算されます。もし「配信権」が自己管理の場合は、「JASRACに準ずる」という条件にするのが妥当だと考えています。

(原盤を使う場合は)原盤使用料は、浜町音楽ギルドとしては「通常の着うたなどの配信」と同じスキームで交渉しています。およその目安ですが「販売価格の50パーセント前後を基本に、音をそのまま販売するのか、イラストなども販売するのか、若干の加工やアプリとの連動こみで販売するのかなどを鑑み修正を行い、それを販売単位内の収録楽曲数で割った金額」というイメージです。

具体的な数字を書くのは控えますので(笑)、DUEに音楽出版を預けていただいているボカロPさんは、個別に浜町音楽ギルドに相談してきてください。


Ⅱ-3. コンシューマーゲームの「音ゲー」で音楽があらかじめ収録されているゲームソフトを購入するタイプの場合。

こちらもⅡ-1同様、著作権および原盤権ともに「指値」交渉をする必要があります。

浜町音楽ギルドの考え方としては、「そのゲームソフトの販売価格の中で、音楽著作権+原盤権使用料の割合はおよそ10数%前後であろうと仮定し、その中に収録されている楽曲数で割った金額を大体の目安にし、さらにそのゲームの知名度や販売実績数を鑑みて交渉する」という手法を取っています。

これ以上書くことは「浜町音楽ギルドの手の内」を明かしてしまうことになるので(笑)、これ以上は、DUEに音楽出版・原盤をを預けていただいているボカロPさんのみに、個別に説明させていただきたいと思います♪


Ⅱ-4.いわゆるSNS型ゲームへの使用の場合。

これは実に多種多様です。単に「BGMとして使用」する場合、「課金対象となるアイテム購入に付加する」場合、「課金対象となるイベントのクリア報酬に付加する」場合で考え方も交渉のポイントも違います。

●一番わかりやすいのが「課金対象となるアイテム購入に付加する」場合です。

原盤使用料に関しては、その「販売価格」を母数に、その「販売価格のおよそ50%が販売原価と考え、その販売原価の中に占める音楽の割合をこちらで仮に設定した数字」をもとに交渉すればよいと思います。

著作権に関しては、その販売方法が JASRAC規定やイーライセンス規定で決められたものであれば、それに従い、指値交渉する必要があるタイプのものであれば、著作権使用料+原盤使用料として、上記の原盤使用料に若干上乗せするという考え方ができると思います。

画像や動画と音楽とがシンクロしているようたタイプの場合は、別途、基本使用料を設定しても良いかと思います。

●BGMに使用する場合は、当該ゲームの全売上を母数に、だいたい何パーセントぐらいがBGM使用料かと仮定し(そのゲームの全体的なイメージをもとに、最初にこちらで仮決めてしまいます)、それを全BGM曲数で割った数字をもとに交渉する、という方法を取っていますが、これ以上は書きません(笑)

どちらにせよ、SNSタイプのゲームでは、いろいろなタイプの楽曲の使用方法があります。クライアント上に音楽が残るのか、それともストリーミングタイプなのか、楽曲メインなのか、特定アイテムがメインで、曲はそれに紐づいたものなのか、それらのことを考えた上で交渉する必要があります。


というようなイメージで印税交渉をしています。

要は

「A:そのゲームの内容を理解する」
「B:そのゲームのビジネススキームを理解する」
「C:そのゲームでの音楽の使用法を理解する」

をポイントに、特に「C」に関しては、

「D:その使用方法はJASRAC等で金額が決められている方法なのか、
それとも、指値交渉する必要がある方法なのかを理解する」

ということを考えて印税交渉を行う必要があるというわけです。

以上、ちょっと今回は細かいことを書いてしまいました。
文責 にへどん