皆様はじめまして。鉄道人身事故の発生状況をまとめた「鉄道人身事故マップ」を作っている佐藤裕一と申します。おもに若者の過労死・過労自殺を取材していますが、鉄道人身事故のデータ集めとマップ化もおこなっています。どうぞよろしくお願い致します。
「鉄道人身事故マップ」は、鉄道各社が国土交通省に報告した各年度の「運転事故等整理表」をもとにしています。「運転事故等整理表」は、筆者の情報公開請求に対して国交省が開示しました。当ブロマガでは、この「整理表」を1カ月単位に整理して、鉄道人身事故の発生状況をお伝えして参ります。
「整理表」は、鉄道各社の報告から国交省内での取りまとめを経て開示を受けられるようになるまでに3カ月かかるため、入手した時点で3カ月前のデータになっているのですが、この国の日常風景の1つである鉄道で何が起きているのか、基礎資料としてご覧下さい。
「整理表」は、国交省の「鉄道事故等報告規則」にもとづいて鉄道各社がを国に提出する書類です。様式や報告内容や原因分類といった詳細は「鉄道運転事故等報告書等の様式を定める告示」で決められています。
もともと列車の運行についての報告であるため、悪天候、施設や車両トラブル、人身事故、倒木や動物との接触なども記載され、その数は毎年度5000〜6000件にもおよびます。
日頃、鉄道を利用していて見聞きする「人身事故」は、告示では「人身障害」という事故の種類に分類されています。列車に接触したために人が死傷したケースに該当します。ただし、自殺は、列車に接触して死傷しても「人身障害」にならず、「輸送障害」に分類されます。自殺の場合は原因も、動物との衝撃や妨害行為などと同じ「鉄道外」いう扱いです。
国交省鉄道局職員によれば、「人身障害」はすべてのケースで国への報告義務があるが、「輸送障害」の場合は遅延時間が30分以上のときのみ報告義務が生じると言います。そのため、遅延30分未満で運転再開した自殺の場合には報告義務がありません。ただ実際には、「遅延30分未満のケースでもまず報告されていると考えて構わない」とこの職員は説明していました。
むしろ最近は、「事業者と話をすると、『明らかに自殺なのに警察が自殺と認定してくれないことが増えた』と言う」の実情のようで、「整理表」を細かく確認していくと、原因は「線路内立入り」になっていても、記述欄には「飛び込んだ」などと書かれているケースも見られます。
したがって、遅延30分未満の自殺のなかには国交省に報告されていないケースがある可能性があり、また、実際とは異なる原因が付けられいてる可能性もあります。なお、自殺に該当するかどうかは警察が判断し、死亡とは、事故後24時間以内に死亡したことを意味します。
鉄道人身事故は、目の前で起こることもあれば、誰かに突き落とされたり、不注意が原因で死傷する身近な問題です。ホームから転落した人を救助したという報道もありますが、救助を諦めなければならない場面に遭遇することもあると考えています。
人身事故の起こらない日が続きますように。
※「整理表」全体は筆者のサイト「回答する記者団」からダウンロードできます。別途アカウント登録(月1000円)が必要ですが、ご関心のある方はご利用ください。