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生まれ変わった『トゥームレイダー』の女性脚本家が語る、ゲーム脚本家のお仕事
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生まれ変わった『トゥームレイダー』の女性脚本家が語る、ゲーム脚本家のお仕事

2013-10-19 12:30
    生まれ変わった『トゥームレイダー』の女性ライターが語る、ゲーム業界のライティングのお仕事


    海外ゲーム業界の脚本家のお仕事はどんな感じなんでしょ?

    10月初めフィンランドの首都ヘルシンキで行われた、ポップカルチャーファンのためのイベント、「FanFest」(ファンフェスト)では、たくさんのコスプレイヤーたちがその姿で見るものを楽しませてくれていました。

    でも、コスプレだけが全てじゃありません。ファンフェストのゲストパネリストには、フィンランドが生んだカルト映画『アイアン・スカイ』、『スターレック 皇帝の侵略』の監督であるティモ・ブオレンソラさん、そして新たにリブートされた『トゥームレイダー』などで知られるゲーム脚本家のリアナ・プラチェットさんが迎えられていました。

    残念ながら『アイアン・スカイ』のパネルには行けませんでしたが、リアナ・プラチェットさんの講演会の方はバッチリ聴いてきましたので、その内容をお届けします。
     


    【大きな画像や動画はこちら】

     
    リアナ・プラチェットさんは、『ディヴァイン・ディヴィニティ』、『ヘブンリーソード』、『ミラーズエッジ』や『オーバーロード』シリーズ、そして『トゥームレイダー』最新作の脚本(この作品はある若者の命を救うことにもつながった)も担当した方であり、また、『ディスクワールド』のテリー・プラチェットさんを父に持ち、そのテレビシリーズ化である『The Watch』の脚本も担当されているイギリスのゲーム脚本家です。


    生まれ変わった『トゥームレイダー』の女性ライターが語る、ゲーム業界のライティングのお仕事2

    黒髪美女を前に、なぜズームできないカメラしか持っていないのか...と自分を責める1時間半。


    スクリーンには、プラチェットさんの関わった作品のカバーアートがズラリ。壇上の椅子に座る黒髪の女性がプラチェットさんです。

    プラチェットさんの講演では、彼女が幼いころに父テリーさんと一緒にゲームをした経験や、いじめられっ子だった子供時代の話、ゲーム脚本家としての仕事の難しさ、開発会社の規模によっての仕事のしやすさの違いなどが語られていました。

    開発会社の規模による違いは、以下のような内容。小さなゲーム開発会社では、1体1でゲーム制作者たちと働けるため、ゲームのストーリーやセリフをレベルデザインと合わせて作り、結果として脚本とゲームステージがうまくフィットするようにできるそうです。一方で、例えば『トゥームレイダー』のような規模の大きなゲーム開発会社/環境では、キャラの動きやゲームプレイにまで脚本家が影響を与える事は難しいとのこと。

    コントラクトライター(契約脚本家)という仕事柄、「パラシュート部隊みたいに」いきなり戦場=開発現場に飛び降りて、まるで救急隊員のように、血を流しているライティングの応急処置をするような仕事もあるそうです。

    そういう仕事では、「ここ書きなおして欲しいけど、書きなおし後の分量は前と全く同じようにして」とか、「締め切りがクレイジー」なんてこともあるとか。他にも「あそこに居るぞ!」、「撃て!」といったようなセリフを、内容は同じながらも、20種類以上のバリエーションを作らないといけないなど、ゲームならではのライティングのお仕事の話も飛び出していました。

    脚本家として、クリエイティビティーが制限されるようなことはあるか? との質問には、「ゲームプレイが制限となる」との回答でした。例えば、『トゥームレイダー』の最初は、武器を持たずに非力さを味わうことになるのですが、プレイヤーとしては早く武器を手に入れて戦闘をしたいというようなことです。

    武器の無い非力感と「やっと武器を手に入れることができた」という安堵感を味合わせるための仕組みも、ゲームとしてみればつまらないと見られることもあり、そのバランスの取り方が難しいようです。また、気がつけば脚本を書いたある箇所が、ゲームテンポの都合などでレベルデザインごと消えていたりといったこともあるそう。

    ゲームキャラの声についての話も出ました。多くの場合、音響監督は、それがどんなキャラクターなのか、それがどんなシーンかをよく知らない人が担当するそうで、結果として全体がちぐはぐな演技になることもしばしばあるとか。

    しかし、小規模なゲーム開発では音響監督もプラチェットさんが担当する機会があるそうで、自らが作り上げたキャラクターやそのセリフが自分の思い通りに形作られていくのは楽しいとのこと。

    また、書きたいゲームのテーマはあるか? という質問には

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    ミリタリーゲームで女性が主人公のものを書きたいわね。昔から女性兵士も前線で活躍しているのに、マルチプレイで選べるキャラクターくらいしかまだいない。しかも、ゲーム内では女性兵士よりも犬のほうが先にプレイアブルになっているのよ。
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    と、プレイアブルな犬は出てくるものの、プレイアブル女性キャラはマルチプレイだけなゲームを暗にほのめかした回答。

    現在のゲーム業界で描かれるキャラクター像に関しても言及がありました。「障害を持ったキャラクターにしろ、女性犯罪者キャラにしろ、まだまだキャラクターの描き方は幅が狭い(narrow)作品が多く、男性キャラクターにしても、コピペされたようなキャラばかり」という不満を持っているようで、もっと興味深い(interesting)キャラクターを描きたいとも語っていました。

    また、プラチェットさんの好きなゲーム作品は、『Psychonauts』(サイコノーツ)や『ダンジョンキーパー』、『Vampire - The Masquerade Bloodlines』、『ハーフライフ2:エピソード~』などだそうです。

    最後に、ゲームライターになりたい人へのメッセージとして、プラチェットさんは

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    ネットワーキングが大切。人と人との出会いや交流により仕事も広がっていきます。
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    と、ネットワーキングの重要性を語っていました。

    ゲーム脚本家のお仕事が、小説や映像作品の脚本書きとはだいぶ違うものであるということがよく分かる講演でした。ゲーマーの心を動かす大事な役目のこの仕事、ゲーム脚本家を夢見ている方にも、リアナ・プラチェットさんを目指して頑張っていただきたいですね。


    FANFEST

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    RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2013/10/fanfest_pratchett_panel.html
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