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恐怖と感動に震える宇宙漂流映画『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督にインタビュー
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恐怖と感動に震える宇宙漂流映画『ゼロ・グラビティ』のアルフォンソ・キュアロン監督にインタビュー

2013-11-26 21:30
    『ゼロ・グラビティ』


    息をつく暇もないほど美しく、恐ろしい光景を体感できるスペース・スリラー映画『ゼロ・グラビティ』が12月13日(金)に公開されます。

    そこで今回は、観客だけでなく多くの映画製作者たちのド肝を抜いた、本作の圧巻の映像を作り上げた、アルフォンソ・キュアロン監督にインタビューして参りました。宇宙映画のレベルを数段回上げた、監督の言葉の数々は以下より。
     


    【大きな画像や動画はこちら】

     

    アルフォンソ・キュアロンアルフォンソ・キュアロン監督


    ――本作は設定が非常に単純ながらも、圧倒的な内容の濃さとショックがありますが、この設定で絶対に面白くなるという核心は作る前からあったのでしょうか?

    アルフォンソ・キュアロン(以下、キュアロン):今回は息子のホナス・キュアロンと共同執筆しているんですが、脚本を書いている時からシンプルなストーリーながらも肉体的な面でも引き込まれるような、臓腑で感じられるようなアプローチができれば、観客は思考を止めて感情面だけを経験するかのようにキャラクターに感情移入し、キャラクターの旅についてきてくれるんじゃないかと思っていました。

    これが成し遂げられれば、テーマは普遍的なものだったので、観客にとって大きなカタルシスとなるような映画にできると思っていましたね。


    ――主人公を女性にした理由や意図はありますか?

    キュアロン:実は最初は考えもしなかったんですよね。ライアンという名前をつける前から、脚本段階から「女性」というキャラクターで進めていました。自分たちの中ではそう決まっていたんです。そして、具体的に主人公をどうするか話し合い始めた時に、やはり女性がぴったりだなと思いました。

    本作は、「逆境をくぐり抜けて再生する」という普遍的なテーマを描いた作品です。再生というのは、女性的なエネルギーを通して行われることでもあり、本作はその旅を描いてもいます。言い換えれば、肥沃、繁殖、誕生といったことであったり、何かを育てる力、自分自身を育てる力でもあり、自分の感情を育てるといったこと、そしてもっと単純に、母なる地球といった意味合いもあります。それはやはり女性的なエネルギーだと思うんですね。なので、主人公には女性がぴったりでした。

    回避したかったのはマッチョなヒーロー映画のようになってしまうことです。特別な能力を持たない日常的な人物が、自分とはかけ離れた非日常に置かれてしまうことがポイントでしたからね。


    ゼロ・グラビティ撮影現場撮影現場の様子


    ――映像が素晴らしいのは言うまでもありませんが、中でも主観映像が非常に自然かつ効果的に使われていると感じました。主観映像を使う上で何か特別な工夫はしましたか?

    キュアロン:本作の作りとして、客観的な視点から宇宙服のマスクの中に入ると、そこからはキャラクターの主観になります。続いてそこからマスクの外へ出ると、実はそこで観客の視点へと変わるんです。なぜ主観映像が上手くいっているかというと、観客がそれぞれの体験というものを持って、キャラクターに感情移入するように作っているからでしょう。


    ――本作にはパニック、スリラー、アクションなど、さまざまなジャンルの要素がつまっていますが、インスピレーションを受けた作品はありますか?

    キュアロン:スティーブン・スピルバーグの『激突』、黒澤明原案の『暴走機関車』、あとはリチャード・C・サラフィアンの『バニシング・ポイント』ですかね。この3本を参考にしました。


    ――本作は91分というタイトな作りです。監督の作品は本作に限らず、短い尺の中で見事にドラマを描き切っていると感じるのですが、毎回意識的にタイトに作ろうとしているのでしょうか?

    キュアロン:自分が好きな作品、例えばウディ・アレンの映画も90分だったり、100分だったりします。逆に、短い作品で例えペースが速くても、飽きてしまうこともあるものです。

    確かにヒーローものだったりSFXものは、見ていて「なんでこんなに尺が必要なんだろう?」と思う作品もありますが、個人的には、短い尺に見合うストーリーに惹かれるからですね。あくまで今のところなので、この先もっと長いものを作ることはあるかもしれません。


    ――画面の情報量の多さ、ものとものの距離感、ジェットコースター的な体感といった点の素晴らしさから、3DやIMAXという技術は本作のために作られたのではないかとすら感じました。本作を作っていて、3D映画は今後もっと進化できるといった実感はありましたか?

    キュアロン:私は3Dが大好きです。ただ、映画作家にとって3Dはツールであるべきなんですね。映画が発明されて、1988年か1989年には初めての3D映画が作られているくらい、実は昔からあるものではありますが、3Dで上映するべきではなかった映画もたくさんあって、やはり必要な時にだけ使うべきものだと思います。

    『ゼロ・グラビティ』は製作に4年以上、3Dのデザインとプランニングに時間をかけました。3D映画にはこのくらいの準備がマストです。3Dのほうが商業的にいいんじゃないかということで、後付するのは間違っていると思います。最初から綿密に計画して作るべきです。日本の皆さんも是非『ゼロ・グラビティ』は3Dで良い音響環境で見てください



    『ゼロ・グラビティ』は3Dであれば、全身の意識を映像へゆだねて、宇宙を「体感」できる現在最先端の3D映画。ドラマも非常に感動的なので、2Dだとつまらないということはありませんが、監督も言っていたように、200%楽しみたい方は是非3Dで鑑賞してください。

    『ゼロ・グラビティ』は、12月13日(金)全国ロードショー。3D/2D同時公開。

    配給:ワーナー・ブラザース映画
    © 2013 WARNER BROS.ENTERTAINMENT INC.


    『ゼロ・グラビティ』公式サイト
    『ゼロ・グラビティ』公式Facebook

    スタナー松井

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    RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2013/11/zerogravity_interview.html
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