ヒッチコックが映画に使用したことで知られるようになった「ドリーズーム」と呼ばれる撮影テクニックと、デジタル技術を駆使した「スリットスキャン」という映像技術。
【大きな画像や動画はこちら】
新旧2つのテクニックを融合させることで、まったく新しい映像の世界が広がっています。
■ドリーズーム
特殊効果を担当するカメラマンだったイルミン・ロバーツが初めて使用したといわれるドリーズームは、アルフレッド・ヒッチコック監督作品『めまい』の中で効果的に使用されたことで、広く知られるようになりました。映画『めまい』の原題が『Vertigo』 であったことから、欧米では「バーティゴ・エフェクト」、あるいは「ヒッチコック・ズーム」とも呼ばれています。
具体的には、台車に乗せたカメラを被写体に向けて、移動させると同時にズームアウトすることで、被写体の大きさを変えることなく、背景だけのパースペクティブを変化させるというテクニックです。撮影の際にカメラを乗せる台車のことを「ドリー」ということから、日本では「ドリー撮影」のカテゴリの中で語られることが多いようです。
■スリットスキャン
次にご紹介するのが、スリットスキャンと呼ばれる映像技術。
スリットスキャンはその名の通り、映像をピクセルごとの細かなスリット(切り目)で分割し、上下あるいは左右のスリットに時間差を生じさせることで、被写体の形がつぶれて見えたり、ジェル状の物質のようにグニャリと歪んで見えるという技術。この技術を用いると、静止しているオブジェクトには変化が起こらず、動いている被写体にのみ独特のエフェクトが現れます。
こちらは撮影手法というよりデジタルを用いた映像加工技術を指していますが、ツブゾロッタフィルムさんが視覚的にも詳細な記事を紹介して下さっているので、是非ご参考ください。
■スリット・ドリー・スキャン
この映像が、2つの技術を融合させた「スリット・ドリー・スキャン」。
50年代から使用されている古典的な撮影テクニックとデジタル技術の邂逅は、思いもよらない科学反応を引き起こしました。ドリーズームとスリットスキャンを同時に使用することで、あたかも特異点と化した物体だけが時空間のゆがみから取り残されたかのような、奇妙な効果が現れています。
この映像技術を発表したのは、フランスの写真家ミカエル・レノーさん。ヒッチコックじゃありませんが、じっと見ていると「めまい」を起こしそうな不思議なトリップ感のある映像ですよね。
こういう新しい映像技術が、今後どのような形で使用されていくことになるのか、ちょっと映像の未来に興味がかきたてられてきます。
Crazy camera trick takes the Hitchcock zoom to a whole new LSD level [Sploid]
【動画】人間が液体のようにたぷんたぷんになる不思議な映像手法「スリット・スキャン」 [ツブゾロッタフィルム]
(キネコ)
関連記事
- 3月12日は「サイズの日」。美人とサイズの意外な関係
- 常識を変えるために必要ないくつかのこと:漁師とともに生きる若き女性の転機
- ヒューマン筋を鍛えろ!スタッフサービス・エンジニアリングの"新"人事制度が熱い!!