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公開当時よりも今現在のほうが重みのあるディストピアSF10選
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公開当時よりも今現在のほうが重みのあるディストピアSF10選

2014-11-25 22:30
    公開当時よりも今現在のほうが重みのあるディストピアSF10選


    『ハンガーゲーム』のヒットもあり、最近、ディストピア映画が目につくようなったのではないでしょうか。

    改めて、ディストピア作品にはまっているという人も多いでしょう。そこで、io9が公開/出版当時よりも今現在の方が重みを感じられるディストピアSF作品10選を紹介したので、皆さんにもお届けしたいと思います。


    【大きな画像や動画はこちら】

    本リストでは『1984』や『すばらしい新世界』といった有名どころは敢えて登場させず、その分マイナーな作品を紹介しています


    ■『未来世紀ブラジル』

    公開当時よりも今現在のほうが重みのあるディストピアSF10選

    カルト的人気を誇る本作はメッセージ性が高い


    行き過ぎた社会主義的官僚政治、思慮の無い消費の流行、そして整形手術...。カフカの作品を彷彿させるテリー・ギリアムの『未来世紀ブラジル』は、私たちが今生きている世界について多くの警告を発している映画と言えます。


    ■『The Machine Stops(機械は止まる)』 E.M.フォースター著 (1909)


    『インドへの道』や『ハワーズ・エンド』で知られるイギリスの小説家、E.M.フォースターの短編小説『The Machine Stops(機械は止まる)』は機械に依存する地下暮らしの人々の様子を描いたSFです。

    この世界では、人間同士の関係は無く、基本的にメールやビデオ電話を介してコミュニケーションを取ります。機械に頼りすぎた人たちの寓話であり、生身の人間の代わりにテクノロジーを使うことは、人間を退廃的にし、弱めると警告しています。

    皆さんにも思い当たる節があるのではないでしょうか。そう、フォスターは現代に生きる私たちがフェイスブックやTumblrに依存し過ぎることの危険性を解いていたのです。インターネットやSMSを利用する上で知っておくべきことは、フォスターの『The Machine Stops(機械は止まる)』で学べるかもしれません。


    ■『少数報告』フィリップ・K・ディック著 (1956)

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    犯罪を未然に防ぐ為に、犯罪を起こす前に逮捕


    『少数報告』は、プリコグと呼ばれる予知能力者たちによって構成された殺人予知システムのおかげで犯罪を未然に防ぐことに成功している未来を描いた短編小説です。

    偽の携帯電話基地局が、特定の範囲内で交わされた携帯電話の全通話の情報を収集しているといった、政府やその他の機関が犯罪予防に積極的になりすぎている今だからこそ、出版された当時より私たちに考えさせられる内容になっています。

    なお、同作は出版から46年経った2002年に、スティーブン・スピルバーグによって『マイノリティ・リポート』の名前で映画化されています。


    ■『われら』 エヴゲーニイ・ザミャーチン著 (1920)

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    自由を奪えば犯罪は無くなる


    ロシア革命直後に執筆された本小説は、共産主義の高まりに対する抗議のようにも捉えることができます。しかし『われら』は、全体主義や、人々を数字と化して完全に服従させるシステムに組み込むこと人々が思考犯罪や非順応行動によって判断されてしまうことへの警告とも受け取ることができるのです。

    小説の舞台は26世紀、人々はお互いを数字として認識する「完璧」な社会に住んでいます。「緑の壁」に四方を囲まれたその世界では、「人々を罪から解放する唯一の方法は、自由から解放することである」という理論のもと、自由は罪と判断され、犯した者は公の場で処刑されるのです。

    考えることを忘れてしまっていた主人公は、ある日、国家の転覆を計画する女性と知り合い、徐々に心や思考を取り戻します。しかし、計画は密告者によって潰されてしまい...。

    本作は、ジョージ・オーウェルの『1984年』を筆頭に、多くのディストピア作品に影響を与えたと言われています。


    ■『The Clockwork Man』 E.V. Odle著 (1923)

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    私たちは進んで便利さを手に入れ、自由を捨てた


    今から数千年も先の時代、メーカーズと呼ばれるヒューマノイドが人間の頭に時計仕掛けを埋め込み、自由と引き換えに、時間と空間の間を意のままに移動できる能力を与えていました。しかし、あるデバイスに捻れが生じ、時計仕掛けの男が1920年代のイギリスの小さな村で開かれていたクリケット試合に突如として放り込まれてしまったのです...。

    この「人間の頭に時計仕掛けを仕込んで〜」という設定は、スマートフォンやグーグルグラスがどれほど私たちをコントロールしているのかというだけでなく、ハイブマインドになることへの意思とも考えることができるでしょう。つまり、今日、私たちを悩ませるテーマの多くはこの小説から始まっているのです。


    ■『鉄の踵(かかと)』ジャック・ロンドン著(1908)

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    ヒトラーの到来を予言した本とも言われる


    『われら』同様、オーウェルの『1984年』に影響を与えた作品が、ロンドンの『鉄の踵』です。本書は、1912年から1932年の間に政権を握り、その後300年にも渡って支配し続けた圧倒的な金権政治について書かれており、中流階級を破壊し、人々を最大限妥当に見えるよう支配する悪徳資本家に関して警告しています。

    ■『ハリスン・バージロン』カート・ヴォネガット著

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    近年話題の「学芸会で全員主役」や「手をつないで徒競走」を連想させる?


    全ての人間があらゆる意味で平等になった社会。標準的な人間はありのままの姿で生活することができる一方で、知能が他の人よりも秀でている人間は、その能力が発揮されないように妨害するハンディキャップの装置を付けることが義務付けられます

    作品に登場するジョージとヘイゼルは、自分で考えることを止め、取り憑かれたようにテレビを見ています。そんなジョージとヘイゼルの息子であるハリスンは、他者よりも美しく、才能に恵まれ、知能も高い為に多くのハンディキャップを負わされた上に刑務所に収容されていました。

    ある日、ハリスンは人々が強制的に平等にさせられていることに異議を唱えて脱獄し、自分を押さえ込んでいる数々のハンディキャップを破壊し、同様に他の才能ある人たちも解放します。

    彼は、優秀な人間をありのままの姿でいさせるという健全な目的のために動いたのです。本来の能力や才能をここぞとばかりに発揮する人々...。しかし、間もなく駆け付けた政府の人間によってハリスンはあっけなく射殺されてしまうのでした。そしてそれまでと変わらず、競争のない平等の社会が戻ったのです。

    本作は、ポップカルチャーの「レベルを下げる」ことをターゲットとしており、反知性主義の幕開けを書いています。後に、著者のヴォネガットは、物語の中で優秀な人々に障害となるものを負わせようとする人間に共鳴し、嫉妬や不安に駆られた人々が他者に対して何をするのかということを伝えたと語っています。

    (『ハリスン・バージロン』はarchive.orgから英語の全文を読むことが可能です)

    画像:via Hey Apathy Comics


    ■ 『侍女の物語』マーガレット・アトウッド著 (1985)

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    数年前に「産む機械」という発言もありましたね


    近未来のアメリカに作られたキリスト教原理主義勢力の国で、健康な女性は妊娠/出産に従事するだけの道具として、支配者層の「侍女」として生きる様を描いたアトウッドの『侍女の物語』。

    女性の権利は剥奪され、色で分けられ、階級によってランク付けされ、生殖に従事する...。一見すると、今の世の中とはかけ離れているようにも見えますが、実はそうでもないのです。

    先日、Huff Post Booksのジェシー・コーンブラス記者が「Is 'The Handmaid's Tale' Science Fiction -- Or a Preview of 2016?」という記事の中で、ここ数年の間で、階段の踊り場で転んだ妊婦女性が胎児殺未遂として逮捕された例や、帝王切開に間に合わずに双子のうちのひとりを死産してしまった女性が逮捕された例、出血が見られた為に病院に行ったところ、第2度殺人と判断され、医療診断書が流産だったことを証明するまで1年も投獄されたという例を挙げ、「女性がどのように産むかを自分自身で決定することを妨げられるのは『侍女の物語』の世界だ」と書いています。

    それだけでなく、妊娠中絶反対派が多く、中絶禁止の法を可決しようとしている州もあるアメリカでは、女性が産む機械として扱われる『侍女の物語』は決してファンタジーの世界の話ではないのです。


    ■『沈んだ世界』ジェームズ・グレアム・バラード著 (1962)

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    映画化されるようですね


    気候変動により高温多湿の水浸しになってしまった世界を舞台にしたバラードのディストピア小説。

    国連が、実質的な種の絶滅やら、世界的/地域的食料不安やらを避ける為に、国連が2100年までに炭素排出量をゼロにしなければならないと言ったら、バラードの気候変動によって圧倒された世界のビジョンは適切だと考えられるでしょう。


    ■ 『ジェニファー・ガバメント』 マックス・バリー著(2003)

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    勤め先が自分の苗字の如く名乗る人は現実社会でも少なくありません


    このリストの中では比較的新しい2003年の作品『ジェニファー・ガバメント』。しかし新しいながらも、出版された当時よりも、今の方がずっと重みを感じられます。

    企業が力を持ち行政はその力を失い存在するだけとなった世界で、人々は自分が働く企業の名前を苗字として名乗るようになります。納税義務はなくなったものの、全てにおいて金がものを言い、支払い能力がなければ、警察や救急のサービスすら受けることができません。そんな中、ナイキのセールスマンが、新製品の運動靴を購入した人物を殺すというキャンペーンを企画し...。

    本書は、企業の持つ力だけではなくマーケティングが如何に私たちの世界観を歪めるのかという点についても問いかけています。


    [via io9

    中川真知子

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