『スパイダーマン』や『M:i』ように壁を登れるグローブが実現


スタンフォード大学のエンジニアであるエリオット・ホークス氏率いる研究者がヤモリにインスパイアされたグローブを作ったとio9が伝えました。このグローブを使えば、『スパイダーマン』や『ミッション:インポッシブル』のヒーローさながら、自由に壁を登ることができるようになるみたいです。
 


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ホークス氏のチームのグローブの話の前に、ヤモリがどうやって壁にくっついているのか、軽く触れたいと思います。

ヤモリの四肢5本の指には発達した趾下薄板(しかはくばん)という器官があり、その表面には、ナノメートルサイズの毛の集合で出来た剛毛があります。

この毛の集合体とも言えるものが、壁の凹凸に噛み合うと、弱い力が発生します。この力は「ファンデルワールス力」と呼ばれており、現在、様々な分野で応用されているのです。

そして、このヤモリにインスパイアされ、「ファンデルワールス力」を使ったのが、ホークス氏とチームが開発したグローブなのです。

ただ、ヤモリは非常に軽い生物なので指の先についたパッドのみで十分ですが、人間を登らせるとなると、体重を分散する必要があります。ホークス氏とチームは、パッドの表面を最大限利用することで体重の分散を可能にし、人がガラスの壁を登れるグローブの開発に成功したのです。



ヤモリの粘着力について学んだ、ルイス・アンド・クラークカレッジの生態機械エンジニアのケラー・オータム氏(ホークス氏の研究には未参加)は「これは本当に凄いことだ」とPopular Mechanicsのウィリアム・ハーケウィッツ記者に話しています。

このパッドの仕組みをハーケウィッツ記者が簡単に説明していたので、抜粋して紹介します。

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ホークス氏とチームは、PDMSマイクロウェッジという乾燥接着剤を開発しました。ガムテープや強力接着剤とは異なり、この爬虫類にインスパイアされた接着にはナノファイバーが使用されています。このナノファイバーは、壁の表面に噛み合わさると弱い力が生じてくっ付き(「ファンデルワールス力」で知られる)垂直に引くと簡単に外れます。


彼らはスプリングを使い、24のマイクロウェッジパッチを人が手で掴むことのできる平らなプレートに固定しました。この24のパッチが、クライマーの力を分散させるのです。このパッチは失敗を重ねた上で、何度もテストされています。


ノーマルのスプリングでは体重を平均的に分散させることができません。また、パッチがひとつでも限界点を過ぎてしまったなら、そこから雪崩のようにプレート全体に広がってしまいます。


ホークス氏のシステムの鍵となったのはこうです。彼は通常のスプリングでパッチを固定するのではなく、形状記憶合金で出来たスプリングを使ったのです。


通常のスプリングは、輪ゴムを引っ張るようにピンと張りますが、形状記憶合金のスプリングは、チューインガムを引っ張ったように柔らかく、それほどピンと緊張させることはありません。


このようなスプリングで固定される為に、ホークス氏のマイクロウェッジはクライマーの体重をプレート全体にほぼ完璧に近く分散させることができるのです。ホークス氏はガラスの壁を簡単に登ってみせました。


科学者は、このグローブが200ポンドのまでの体重の人であれば使用できると結論付けています。また、このウェッジのいずれかに問題が発生した場合、プレートが自己修正するのです。


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前述のケラー・オータム氏は「イモリが壁に張り付いていられるメカニズムを最初に発見した時から15年もの間ずっと、私はこれを夢見てきたのです。このグローブは、人間がビルをよじ登ることができるという十分過ぎる証明と言えるでしょう」と話しました。

この研究の全てはthe Journal of the Royal Society Interfaceで読むことが可能です。

また、詳細を知りたい方は、Popular MechanicsScience Newsをチェックすることをオススメします。


トップ画像 via Elliot Hawkes

http://io9.com/spider-man-gloves-are-real-and-they-actually-work-1661737250[via io9]

中川真知子

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RSS情報:http://www.kotaku.jp/2014/11/spider-man-gloves-are-real-and-they-actually-work.html