きっと皆さんも目から鱗がボロボロ落ちることでしょう。
親しみやすいデザインのモンスターたちと、主人公のサトシに友人のタケシ&カスミ、それに敵対するロケット団など...。彼らが巻き起こす愉快な冒険と手に汗握るバトルで、ゲームの発売当初より子供たちのハートをワシ掴みにし続けてきた『ポケットモンスター』。
しかし舞台となるカントーやオレンジ諸島といったエリアをはじめ、『ポケットモンスター』たちと人間たちとが共に暮らすこの世界は...実はディストピアなのではなかろうか? という疑問が沸き起こっているのです。
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うーん...そう言われても、にわかに信じられない気もしますよね。しかし「io9」では、それを裏付けるいくつかの考察がなされていますので、一緒に検証してみるとしましょう。
■ 基本的に闘鶏と同じである
まずは小手調べに、一番明白であろうものを例にとって挙げてみましょう。野生のモンスターたちを捕獲して調教し、限られたスペースで対戦相手の子飼いのモンスターとバトルさせるのは、全くもって闘鶏や闘犬と一緒です。
中国ではコオロギ同士を戦わせる「闘蟋(とうしつ)」というのもありますが、自分が汗水たらして育て上げた小動物を、飼い主の名誉や賞金目当てに戦わせるのはコンセプトが完全に同じです。きっと周りでもどちらが勝つかで賭け金が飛び交っていることでしょう。
現実においても『ポケモン』世界の中でも、全世界で全ての人たちがこれに興じているわけではなく、ごく限られた人たちの間でのみ流行しているスポーツだ、という点でも一緒です。
純真無垢な子供たちは、素直に「ポケモンマスター」に憧れるであろうと思いますが、実はギャンブルの対象とみなされがちな競技の調教師を目指すよう仕向けているのです。
■ 10代前半の子供たちを危険な旅に出す親たち
子供を千尋の谷に突き落とす獅子と同じか?
サトシがポケモントレーナーを目指して旅だったのは、齢僅か10歳の時でした。
いくらモンスター同士が戦うと言っても、万が一彼らから繰り出される技が近くで指示を出している10歳の少年に被弾したら...? 一発で即死、良くても瀕死状態にまで陥ってしまうであろうものがワンサカあります。これもまた非常に危険です。
それにこの世界では砂漠や活火山、それに魔の海域といった危険なエリアが多く広がっており、こうしたエリアを10歳の少年が横切らないといけない状況になっているのです。
しかも追い打ちを掛けるように、彼らの親たちもポケモントレーナーの修行中だった頃には、同じ体験をしてきたということで正当化されているからたまったモンじゃありませんよね。
■ バトルありきで都市計画が出来ている
アニメシリーズではそんなに描かれない部分ですが、主人公が訪れてモンスター同士を戦わせる街は、いささか不自然な都市計画の基に建造されているようです。と言いますのも、ひとつの街であるにも関わらず、学校や病院や役所、銀行などの金融機関は何処に在るのでしょうか?
人々が基本的な生活を送る施設は街に存在しないというのに、ほとんどの街にはポケモンセンターが設けられているというのも、常識的には不自然な話ですよね。
それにフレンドリィショップとジムも、かなりの場所につくられているというのは、教育よりも健康よりも全国的に闘鶏/闘犬が推奨されているのと同じことになってしまうというのです。
街の規模に対してその人口までもが絶対的に少ないだけでなく、闘技場に行けば主人公のみが、そこのサービスを享受出来るように見受けられるのです。これまた異常かつ、孤独な事この上ありませんね。
■『ポケモン』チャンピオンが世界を統治しているのでは?
これは上の疑問に次いで、誰がこの世界を統治しているのだろうか? というものです。
テレビアニメにはたまに市長が出演するものの、ゲームでは政府の存在が描かれないため、誰が街づくりをして、誰がインフラ整備をして、誰が警察官やポケモンセンターの職員・女医ジョーイを雇用し、そして誰がトーナメントの場と賞金を提供しているのか、さっぱり見えません。
そこで『ポケモン』世界で、権力を持っていそうな人々が誰なのかを考えてみますと...四天王かジムリーダー、もしくは「バトルフロンティア」の責任者であるフロンティアブレーンがソレっぽいかもしれません。
戦いで強い人間がのみ、世界を統べる力を得るという構図なのかもしれませんね。彼らに政治的な能力があるのかどうかは、また別の疑問になりそうですが。
■女性警察官ジュンサーの繁殖力が凄い
大量生産される女性警察官の謎
ポケモンセンターで務めている女医ジョーイもそうですが、警察官のジュンサーもまた、ほぼ同じキャラクターが何人も登場します。ジョーイたちもジュンサーたちも顔や声、髪型だけでなく職業が同じなのですが、どれも親戚だという設定となっています。
血が繋がっていれば少しは似ているのも解りますけども、ほぼ全員が完全に一致しているというのはちょっとアレですよね。だからこそ、彼女たちの存在は時折りネタとしても扱われるようです。
これについては、作品の中で誰も疑問を呈さないのもまた不思議な話です。建前上は親戚だと言っても、もしかしたらターミネーター並に大量生産されたアンドロイドかもしれませんし、映画『バイオハザード』のアリスのような、クローンなのかもしれません。
ちなみにですが、実はタケシにだけは微妙な違いから、彼女たちがどのジョーイでどのジュンサーなのか判別できると言うのです。彼には識別IDなどを検知する能力が備わっているのでしょうか? ヒヨコ鑑定士に匹敵するスキルです。
■モンスターたちは契約奴隷である
たとえばゴーゴートがシャトルバスの仕事をこなしていたり、ラッキーが施設でアシスタントをしていたり、サイホーンとカイリキーが肉体労働に従事させられていたり、はたまたクチバシジムのリーダーであるマチスの話では、アメリカ空軍時代にポケモンに発電させて飛行機を飛ばしていたという話もあったことから、モンスターたちはその特性を利用され、人間社会で労働を強いられている場合が多々ありました。
そんなモンスターたちは、大体の場合使われる立場であり、人間やその他のモンスターたちを監督する立場にはありません。もしもある程度の役職を与えられたにしても、賃金を支払われる描写がないので、彼らは無償で働かされている契約奴隷だという仮説は間違っていないのでは、と思われます。
■モンスターを幽閉する、超高水準の科学技術の謎
この世界で描かれる科学技術は、現実世界に暮らす私たちのそれよりも、かなり進んだものとして描かれることがあります。たとえば上の動画に出てきたモンスターボール。これのエネルギー源は何なのでしょうか? そして白い光でモンスターを放出し、赤いビームで取り込むという技術を持ち合わせていますが、このテクノロジーは一体...?
動画の最初は、ボールより大きなモンスターがどうしたらその中に収まるのか考えています。デジタル・データ化による保存をしているのかと思いきや、様々な描写からモンスターたちが拡大と縮小されるだけでなく、ボールの中で意識を持って生きているということが分かりました。
しかもボールの外にいるトレーナーと、意思疎通に加えて指示の実行まで可能というのだからこれまた不思議な現象ですよね。
ボールの中に捉えられたモンスターたちは、居心地よく安心してくつろげるよう、中で丸くなって眠っているのではないか? とも考えられています。でももしかすると、もっと快適な自然環境がこの球体の中で再現されているのかもしれません。
まさかそこまでしているとは思えませんが、モンスターたちは割と好んでボールに収納されたがっている様子もありますので、彼らにとって何か良いことがあるのかもしれません。
それでも物理的に、血の通った動物が縮小/拡大をするのは現実的ではないと考えるのであれば、角度を変えて考えてみるとしましょう。そもそも全ての『ポケモン』たちが、肉体を持たない霊魂だったとしたら?
モンスターボールはさしずめ、映画『ゴーストバスターズ』の四角いトラップと同じ機能を搭載しているのかもしれません。それでも超高水準の科学技術ですけどね。
■何はさておき、人間とモンスターたちの関係はおかしい
子供も憧れるコイキングの活造り
契約奴隷やボールへの幽閉など、これまで考察してきたことを横に置いたとしても、この世界の人間とモンスターたちの関係は正気の沙汰ではありません。
ペットと主人の関係であると同時に、現場監督と労働者(もしくは同僚や部下)という関係も成り立ち、はたまた捕食の対象としても描かれる『ポケットモンスター』たち。人間は彼らのことを何だと思って接しているのでしょうか?
愛するペットや従順な部下が、食べられる存在だなんて...どう考えてもおかしい関係です。
■社会は洗脳でモンスターたちの存在理由を刷り込む
サトシをはじめ10代の子供たちは、『ポケットモンスター』たちは労働や戦闘で使役するだけでなく、食べることも出来る存在だと教え込まれます。なので正気の沙汰ではない関係性だとしても、彼らの世界では当たり前のことと考えられているのです。
上記の事例も含めて、『ポケモン』たちは無償で人間たちに仕えるのが当たり前というのは、モンスターたちが人間とは異なる種族で、下等生物として捉えられているからなのかもしれません。
アニメシリーズの第一話『旅立ち』では、ポケモン図鑑の中に「野生ポケモンは人間に飼育されているポケモンには敵意や蔑みの感情を抱いている」という記載情報が紹介されるシーンがあります。
このことから、野生ポケモンがトレーナーではなく飼われているモンスターに攻撃してくる理由が解ります。このように、子供たちの洗脳は祖父母の代から続いているだけでなく、冒険の旅に持たされるポケモン図鑑からの情報もあるのです。
次にオーキド博士の存在も忘れてはいけません。彼はサトシの親の世代とも仲が良く、『ポケモン』研究者として地位と権威を持った、世間から尊敬されている人物です。そんな博士が子供たちにモンスターたちの存在意義がこういうものだと教えていたとしたら...?
あちらではそれが洗脳ではなく、当たり前の教育として観られるかもしれませんよね。
しかしポケモンの解放を謳う秘密結社、プラズマ団からしたらどうでしょうか? 本来なら野生の地に生息しているべきモンスターを片っ端からとっ捕まえて、人間のために戦闘や労働を無償で強制させられるモンスターを当たり前だとする世の中こそが、大きな間違いを犯していると考えるのも当然でしょう。
『ポケモン』の世界では、N(エヌ)やプラズマ団およびロケット団やマグマ団などは悪者として虐げられていますが、現実社会の倫理観に照らし合わせて考えると、あちらで正義とされる側の常識はディストピア的思想だとしか思えません。
たとえ子飼いになったモンスターたちが、嬉々として奴隷の境遇に甘んじていたとしても、野生ポケモンたちの行動こそが本来の姿だとすると、一体どちらが悪なのでしょうか?
■これは全て目と鼻の先で起きている出来事である
これら全ての話は、単なるゲームやアニメの中だけの話ではなく、実際に現実に世界の何処かで起こっている話だとしたら...皆さん驚かれるでしょうか?
クチバシジムのリーダー、マチスが元アメリカ合衆国空軍の少佐だったという話を鑑みると、カントー地方やジョウト地方という架空の地名ではなく、実存する国からやってきた人間なのが分かります。
そして、ヨスガジムのジムリーダーであるメリッサ。外国からやって来たという彼女は英語交じりの日本語を話し、アメリカ版『ポケモン』ではフランス語混じりの英語を話します。
このふたりの出身と情報からして、『ポケモン』世界の外というのは今現在わたしたちが暮らしている社会に他ならない、というのがお分かりかと思います。そして彼らによりますと、あちら側とこちら側の国際関係は、こちら側からの移民を受け入れてくれるくらい良好なのだそうです。
モンスターに関するテクノロジーが突出して進んではいるが、彼らを奴隷のように扱い、子供たちにそうするよう教育するあちら側の世界。皆さんは現実的に考えてみて、向こうに足を踏み入れたいと思うでしょうか?
How Pokémon Is One Of The Creepiest Dystopian Societies Ever[io9]
(岡本玄介)
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