ゲーム『Until Dawn -惨劇の山荘-』では、ホラー映画の王道的展開やありがちな登場人物設定が、あれやこれやと登場します。
【大きな画像や動画はこちら】
「山荘」という設定からしてすでに『死霊のはらわた』や『キャビン』的ではありますが、今回はそうした「ホラー映画あるある」がどのように盛り込まれているのか検証してみましょう。
途中から思いっ切りネタバレになる記述、動画がありますので、ご注意ください。
---------------------------------------
金髪女性は素晴らしい犠牲者になる
---------------------------------------
1977年に、CBSのインタヴューでこうコメントしたのはミステリー/サスペンス映画の巨匠アルフレッド・ヒッチコック監督です。
---------------------------------------
彼女たちはヴァージン・スノウ(新雪)に滴った血痕のようである
---------------------------------------
とも語っていますが、それは現代のホラー映画にも脈々と受け継がれており、ちょっと可愛くてセックスが好きな(主にティーンエイジャーの)ブロンド娘は、物語の序盤で殺人鬼の餌食になってしまうのがお約束です。
実際に多くの観客がこの展開を求めているというのは、以前「ポルノ並み? しっかりエロいホラー映画のセックスシーン6選」でご紹介しました。
ヒッチコック監督がホラー映画で使った金髪女性キャラクターは、純粋無垢なお嬢さんが汚される様子として描かれますが、時に彼女たちは聡明さにやや欠ける、もしくは明らかに聡明さとは距離が果てしなく遠い駄目な子として描かれます。とはいえ、どちらのタイプも容姿が端麗というのが共通項でしょう。
彼女たちの性格はさて置いたとしても、見目麗しい女性たちが無残に殺されるシーンというのは、エンターテイメント性に富んだホラー映画の「華」でもあります。
では2005年の映画『蝋人形の館』の劇中で、パリス・ヒルトン扮するペイジが殺されるシーンをご覧いただきましょう。
ご存知の通りヒルトン家の令嬢パリスは、美人でエロくて聡明さがアレとあって、ホラー映画におけるこのスポットはこれ以上ないほどのキャスティングです。ナマ脚も露わに真っ赤なブラをはだけさせ、おっぱいをユサユサさせて逃げ惑う様は、100点満点でしょう。
ちなみに、ホラー映画以外でも『クルーレス』では、アリシア・シルヴァーストーンがキュートにビバリー・ヒルズのセレブ駄目ブロンドを好演していましたし、ソレを逆手に取った『キューティ・ブロンド』なんていう作品もありました。
もっと言うと、男性でも金髪キャラは『ズーランダー』のハンセル、ドラマ『トゥルーブラッド』のジェイソン・スタックハウスなどなど、ハンサムなのにアタマが空っぽに描かれるパターンが多く存在します(しかもホラー映画ではこのテの輩も初期に殺されがち)。
一方、駄目ブロンドとは対極に位置する、必ず最後まで生き残る主役の女性、いわゆる「ファイナルガール」もホラー映画の象徴的存在です。
彼女は家族や友人たちが次々と殺されていく中で、セックスやドラッグなどの禁断の快楽に溺れること無く、殺されるフラグが立たないまま、殺人鬼から逃げることに成功します。
往々にして、主役に抜擢されるだけの美貌と知名度を兼ね備えている女性が演じますが、例を挙げると『ハロウィン』でローリーを演じたジェイミー・リー・カーティス、『13日の金曜日』でアリスを演じたエイドリアン・キング、『ラストサマー』でジュリーを演じたジェニファー・ラヴ・ヒューイット辺りでしょうか。
そして、そんな「お約束」が受け継がれているのが、最近リリースされたばかりのホラー/アドベンチャー・ゲーム『Until Dawn -惨劇の山荘-』です。
ゲームの脚本家たちが、こうした「あるある」を散りばめて作っていることは間違いありません。そして、ホラー映画ファンであれば、プレイしていてホラーによくある展開を選択していく楽しさに気付くことになります。
たとえば、本作における「ファイナルガール」はサム。そして駄目ブロンドがジェシカです。
サムを演じるのはドラマ『HEROES』で一躍有名になったヘイデン・パネッティーア。(どのようにプレイするかにもよりますが)いくらゲームだからと言って、「お約束」になぞらえれば有名女優が生き残らない訳がありません。
サムのストーリーでは、どれだけ正しくなさそうな選択肢を押してもすぐには殺されませんし、周りの友人達がどんどん殺されていく中、バスタオル1枚で長時間あちこち彷徨っても、生き延びられるように出来ています。
そして、ジェシカを演じるのはミーガン・マーティン。うら若き女優ではありますが、地名度ではヘイデンにはまだまだ及びません。
ジェシカのキャラクターも駄目ブロンドのお約束を踏襲しており、物語の初期で危険に出くわし、ほんの些細な選択ミスですぐに殺される運命を背負っています。
こちらがジェシカ
ゲームの説明にもジェシカの性格は「大胆、人を疑わない、人を尊敬しない」とありますが、一番重要なのが「マイクの新しいガールフレンド」という設定段階からすでに立っている死亡フラグです。
新しいガールフレンドが一体どんな感じなのかは、以下の動画でご確認を。
ついでに言うとジェシカはチアリーダーで、プロム・クイーンで、マイクの元カノと仲が悪いという「あるある」度MAXな設定があります。やっぱり!
さらに、この2人は皆がいる山荘から離れて危険な目に遭い、肉体的な快楽に身を委ねる流れになります。これはどちらも「ホラー映画あるある」的に死へのカウントダウン。
2人は身の毛もよだつ鉱山へ立ち入り、得体の知れない追跡者に森の中で追い掛け回されます。やっとのことで山荘へと逃げ延びた2人の様子がこちら。
恐怖と興奮が冷めやらぬジェシカは、「私、いつもはセクシー・ベイブを演じているけど、本当は不安でいっぱいなのよ」という告白をします。実は、ここでジェシカは上っ面だけの駄目ブロンドではなく、もっと違った一面があることを見せ始めるのです。
ここでプレイヤーが操作するのはマイクなのですが、彼女に自信を持たせる選択をしてみるとします。すると、マイクはこう言います。
---------------------------------------
冗談だろ? 何も不安に思うことなんてないさ。不安なんて誰にでもあるものだよ。それを乗り越えようとしているキミはマジでホットだぜ!
---------------------------------------
と彼女を励まし(はやくコトに及びたかっただけかもしれませんが......)、ジェシカはこう返します。
---------------------------------------
じゃぁ毛布でも見つけて、暖炉の前で2人でくるまって、アナタがどれだけデカチ○野郎なのか確かめてみましょうよ!
---------------------------------------
「ホラー映画あるある」的にDQN連中はただヤリたいだけのキャラ設定ですが、この記事を書いた米Kotakuのクレペック記者いわく、もしかしたらこの2人は、さっきまでの恐怖を忘れるために、わざと虚栄を張っているのかもしれないと感じたようです。
ジェシカはか弱い乙女を演じ、マイクは頼られる男を演じ、それを正当化することで(山荘には友人たちがいる中で)セックスに及ぶ罪悪感を払拭しようとしているのかもしれない、と。
それを確信させるのが、次のシーンです。
ジェシカはさっきまでの恐ろしい出来事は、友人らが2人に一杯食わせようと企んだイタズラではないか? と決めつけ、自己解決しようとします。なので思い立った彼女は、下着姿だというのに雪が降る外に出てこう叫ぶのです。
---------------------------------------
アンタたち私たちのお楽しみを邪魔したいんでしょ!? でもそんなこと出来ないわよ! なぜならマイケルと私は今からファ○クするからね! そうよ! 私たちはこれからセックスするの! アツいものになるわ! せいぜい外から観て楽しむのね! これからヤルから!
---------------------------------------
その後、殺人鬼が彼女を狙ってくるのは想像に難くないかと思います。
本作は選択肢でストーリーが微妙に変化する「バタフライエフェクトシステム」が特徴とあって、ジェシカが死ぬこともあり、生き延びる可能性にも分岐します。
しかし、ジェシカはよくいる駄目ブロンドとはやや違い、違った一面も持ったキャラクターだというのが描写されるのは、本作独特のちょっとしたヒネりかなと思われます。
こちらがサム
ひるがえって主役のサムは知的好奇心旺盛にして野心的、勇気と不屈の精神を持ち合わせているキャラクターです。
やらねばいけないことは、どんな邪魔が入ってもやり遂げる完璧な主役キャラ......にも関わらず、『スクリーム』でシドニーが言う「あるある」に反した行動を取ることがあります。
---------------------------------------
ホラー映画なんてどれも同じよ。マヌケな殺人鬼が巨乳娘を追い回して、彼女は玄関から逃げれば良いのにわざわざ階段を駆け上がる(自ら追いつめられる)じゃない。
---------------------------------------
サムはこれに逆らうかのように、殺人鬼が現れるやいなや階段を駆け上がります。このように、わざと定説を覆し、危険な道を進むサム。
しかし、どこに行っても服装や小道具に困ることはなく、生き残る主人公となるための好都合な設定が色々とあり、大変恵まれています。
ゲームの終盤では山荘が舞台となり、アメリカ北端のインディアンたちに伝わる精霊で、食人鬼となったウェンディゴに襲われます。
ウェンディゴは動くものに反応するとあり、画面にはプレイヤーにサムを操作しないように指示が出るのですが、これが非常にシビアで、少しでもコントローラーが動くと殺されます。その様子が以下。
これを観たクレペック記者は、サム・ライミ監督の『スペル』のような、すべての危険が去って安心しきった時に起こる災難を思い出す、と言います。そのシーンがこちら。
なるほど、まぁこういう終り方も「あるある」の1つですよね。
ゲームなのに、ホラー映画の王道パターンをここまで大胆に取り入れているというのが新しい、というより「なんで今までなかったの?」という感じの『Until Dawn -惨劇の山荘-』。
美麗なグラフィックとお約束の展開を楽しみたいホラー好きゲーマーには、お楽しみいただけるのではないでしょうか?
トップ画像:Sam Woolley
How Until Dawn Messes With Two Of Horror's Most Overused Tropes[Kotaku]
Until Dawn -惨劇の山荘-[プレイステーション®オフィシャルサイト]
House of Wax: Paris Hilton's Death[YouTube]
Drag Me To Hell Ending[YouTube]
参考:Until Dawn (2015 Video Game)Full Cast & Crew[IMDb]
[Until Dawn wikia]
Scream: Sidney's phone call[YouTube]
ウェンディゴ[Wikipedia]
(岡本玄介)
関連記事
- 確定申告を高速化! 全自動のクラウド会計ソフト「freee」で16連射すると...?
- コンビニで買える! 支払い地獄を避けられるVプリカギフトの天使な使い方
- スタートアップ企業がやるべき 「PRを駆使した伝え方」とは