鈴木克昌代表代行・幹事長 衆議院本会議代表質問(2014年1月29日)
衆議院本会議にて、安倍総理の施政方針演説、国務大臣の演説に対する代表質問が行われ、生活の党を代表して鈴木克昌代表代行・幹事長が登壇しました。質問全文は以下の通りです。
【内容】
- 国連の理念と世界観に立って安全保障を展開
- 日本国憲法9条の解釈
- 国連平和活動への積極参加
- 日本国憲法、国連憲章、日米安全保障条約は三位一体
- 円安で中小企業の利益が縮小
- 財政健全化への具体的道筋について
- 健全な競争のある政治こそ、議会制民主主義の本旨
【質疑全文】
私は、生活の党を代表し、安倍総理の施政方針演説に対し、生活の党の安全保障政策、経済財政政策について、私の所信を申し上げながら、総理のご意見を伺います。
○ 国連の理念と世界観に立って安全保障を展開
まず、安全保障についての質問から入ります。安全保障とは、諸国民、諸国家との平和共存をどのように構築していくのかという平和の問題であります。21世紀となった現在、自己主張するだけの国家のあり方から脱却し、国際社会が協力して国家間の争いをなくしていかなければいけない、というのが生活の党の基本的な考え方であります。これは、第二次世界大戦の結果生まれた国際連合の基本理念とも合致します。日本の安全と平和は、世界の平和が維持されてはじめて実現できるものです。私たちは戦後の国連の理念と世界観に立って、日本の安全保障を展開すべきと考えます。
これに対し、旧来の主権国家の武装独立・軍備強化を基本とするのが安倍政権の安全保障政策ではないでしょうか。20世紀までの国家と国際社会は、主権国家がそれぞれの国民と国土、そして、国益を守るために政治を行ってきました。安全保障の観点で見ると、敵の攻撃から自国を守るということも含めて、軍備の拡充と武装独立がその要でした。したがって、主権国家は、武力をもって敵の武力に対抗するということになります。これは必然的に軍拡競争となり、軍備の充実に狂奔し、それが結果として戦争につながっていきました。20世紀はこの繰り返しであったといえます。
安倍政権は、こうした主権国家論に基づいた国家を目指しているようです。これは21世紀の国際社会では通用しない、本当に間違った、いびつな考え方であり、絶対に平和と両立しないものであります。安倍総理は、国際社会の協力という新しい世界観ではなく、いまだに旧来の主権国家論に基づいて安全保障を展開しようとするお考えでしょうか。加えて、主権国家論に基づく武装独立の手段である核武装について、総理はかつて「憲法は核武装を否定していない」と述べていますが、憲法と核武装の関係について如何お考えでしょうか。総理の答弁を求めます。
○ 日本国憲法9条の解釈
安倍政権による、旧来の主権国家論に基づく安全保障政策を憲法上正当化しようとするのが、集団的自衛権について、憲法9条の解釈の変更を目指す動きです。安倍政権との対比を明らかにするため、生活の党の憲法9条の解釈を申し述べます。
国連が行動をとるまでの間、我が国の安全をどのように守っていくのかを示すのが、自衛権に関する憲法9条の解釈です。現行憲法9条1項では「国際紛争を解決する手段として、国権の発動たる武力の行使は行わない」とし、2項で「そのための戦力は保持しない」としています。その解釈の前提として、自衛権というのは、自然権として憲法を超えて世界的に認められています。
その上で、9条1項は「国権の発動たる武力の行使」である自衛権の発動について、「国際紛争を解決する手段として永久に放棄する」としています。これらを踏まえて9条1項と2項を具体的に解釈すれば、個別的であれ、集団的であれ、自衛権の行使は日本に対する急迫不正の侵害があったとき、あるいは周辺事態法でいう日本の安全を脅かす事態に至ったときに限って、自衛権を行使するということです。他方で、これら以外の日本に直接関係のない紛争については、自衛権を行使せず、国連の決定に従い国連の行動に参加することで世界平和を維持していくべきであると考えます。
安倍総理、国連中心に世界平和を守るという理念に基づき自衛権行使を限定するという生活の党の憲法9条の解釈について、如何お考えでしょうか。明快な答弁を求めます。
これに対し、自民党日本国憲法改正草案では、集団的自衛権を「保持していても行使できない」との解釈の重要な根拠となっている、戦力の不保持等を定めた現行憲法9条2項を削除して、新2項で改めて「自衛権の発動を妨げるものではない」と規定しています。これによれば、個別的であれ、集団的であれ、何らの制限もなく自衛権を行使できるようになります。つまり自民党案によれば、自衛のためと称して「地球の裏側」にまで自衛隊を派遣することが可能になります。20世紀までの戦争のほとんどは、自衛権の拡大解釈です。
日本でも、上海で日本人が殺された、財産が損なわれたと言っては出兵したわけです。制限のない自衛権を認めることは、戦前において破綻に至った考え方への回帰にほかなりません。安倍総理、無制限の自衛権行使を憲法上正当化することが、憲法の平和主義の名に値するのでしょうか、さらには、米軍とともに「地球の裏側」に自衛隊を派遣して、日本国民の安全を確保することが、最適な道だとお考えでしょうか。総理の答弁を求めます。
○ 国連平和活動への積極参加
生活の党は、日本が直接攻撃を受けたり、日本の安全に重要な影響を与える事態が生じたりした場合は自衛権を行使し、それ以外の国際紛争については、国連の決定に従い国連の行動に日本が参加することで、世界平和を維持していくというのが、日本国憲法の理念であり、また国連憲章の理念であると考えます。旧来の主権国家論の繰り返しではなく、国連の基本理念に立脚して平和を構築するためには、日本が率先して国連が機能するように努力する必要があり、そのための根拠を憲法に明示するというのが、生活の党の考え方です。
生活の党は、憲法9条に「国際協力」の規定を追加すべきと考えております。具体的には、国連の平和維持活動に我が国が参加する根拠となる規定を設けることと、国連の平和維持活動への参加に際しては、実力行使を含むあらゆる手段を通じて、世界平和のために積極的に貢献する旨を規定することであります。安倍総理は、憲法9条について、1項、2項を変更せず、「国際協力」を加憲するという私たちの提案をどう受け止めるでしょうか。答弁を求めます。
○ 日本国憲法、国連憲章、日米安全保障条約は三位一体
日本が国連決定に従って行動することは、日米同盟とも全く矛盾しません。日本が他国から攻撃された場合や、周辺事態が発生した場合、国連が何らかの行動を取るまでの間、タイムラグが生じます。その間は日米安全保障条約に基づき、日米が共同で反撃して日本を守る。しかし、ひとたび国連で何らかの決定が下された場合は、日米ともにその決定に従って行動する、というのが日米安全保障条約です。
日本国憲法も、国連憲章も、日米安全保障条約も、全く明快そのものであり、三つは何ら矛盾していないのであります。生活の党は、日本国憲法、国連憲章、日米安全保障条約は三位一体であり、相互に補完し合うものと考えますが、総理はどのようにお考えでしょうか。
生活の党は、あくまでも国連を中心として世界平和を守るという理念を堅持し、国連に積極的に協力すべきであると考えます。21世紀の国際社会は、20世紀までの戦争の時代に終止符を打つべきであります。そのためには、旧来の主権国家論から脱却して、新しい世界観で国連を機能させることこそ、世界平和への最良の道であると生活の党は考えております。
安倍総理は、施政方針の中では国連の平和活動には一切触れず、その代わりに米国との安全保障面での連携強化を強調しました。総理は世界平和を構築していくためには、国連中心ではなく、米国中心の体制を優先していこうとお考えなのでしょうか。答弁を求めます。
○ 円安で中小企業の利益が縮小
次に経済政策について伺います。平成25年は、いわゆるアベノミクスと呼ばれる経済政策を背景に歴史的な円安が進行しました。安倍政権発足前の平成24年11月初めに80円だったドル円相場は、平成25年12月末には105円まで急落しました。
このような急激な円安は、輸出企業に大きな収益をもたらす半面、当然のことながら輸入コストが上がる企業の収益を圧迫しています。そして円安による原材料の高騰に苦しんでいるのは、ほかでもない、我が国経済を支えてきた中小企業です。
中小企業家同友会全国協議会の2013年4~6月期景況調査で「円安の進行による仕入れ価格の上昇での利益の影響」について回答を求めたところ、回答企業413社のうち「利益が減少した」という企業が86.7%に達しました。そのうち9.7%は「円安によって赤字になった」と回答しています。円安が進めば、販売価格に転嫁できない内需型の中小企業は利益が減少することになります。円安の進行をやみくもに歓迎することはできません。
中小の元請け、下請け企業の苦悩をお示しします。つまり、円安で苦悩が増している実態です。
2013年の輸出総数量は-1.5%ですが、輸出総額は9.5%増えています。つまり輸出単価の平均は11%上がっている。
しかし、輸入総数量は-0.4%ですが輸入総額は15%増えているのです。つまり輸入単価の平均は15.4%上がっています。
このことは元請け、下請けの中小企業はこの分だけ原材料価格が上昇して製造単価当たりの利益が減少しているのです。
この様に中小企業は原材料高に泣いています。従って、輸出大手は元請け下請けに円安のメリットを工賃として支払うべきです。これでなければ中小企業の従業員の給料は上がりません。
総理は労使会議での給料アップのみならず中小への工賃アップも要請して頂きたい。
総理、円安に泣いている中小零細企業に給与所得者の70%が雇われています。又、日本の企業の99.7%がこれら中小零細企業である事をご理解いただきたいのです。
経済評論家の池田信夫氏も『アベノミクスの幻想 日本経済に「魔法の杖」はない』の中で次の様に指摘しています。「円が弱くなることは資産評価が減ることであり、本来望ましくない。それが経済を改善するのは、貿易黒字が経済を支えていた高度経済成長期の『貿易立国』の時代の話であり、いつまでも(円安を)続けることができない」。
リーマンショック後に1ドル70円台まで進んだ円高の影響で、多くの日本企業は海外進出を加速させました。人、モノ、金が自由に国境を越える時代になっており、かつてのように円安が日本国内に経済的な利益をもたらすことは保証されなくなりました。輸出量が伸び悩む一方で輸入額が膨らみ、平成25年には過去最大の貿易赤字を記録するなど、安倍政権の経済政策の歪みが徐々に顕在化しています。
我が国が経済の好循環を取り戻すためには、一部の大企業や輸出企業の利益ではなく、経済の構造変化を踏まえ、中小企業も含めた真に内需拡大に資する経済政策が必要なのではないでしょうか。総理の答弁を求めます。
○ 財政健全化への具体的道筋について
次に財政健全化について伺います。総理は、国・地方のプライマリーバランスについて、2015年度までに2010年度に比べて赤字の対GDP比の半減、2020年度までに黒字化する財政健全化目標の実現を目指し、平成26年度予算において、中期財政計画を上回る5.2兆円を改善すると言われました。
しかし、これは消費税の増税によるものでしかありません。一方、財政健全化に必須である歳出削減については、社会保障費だけでなく、公共事業費が前年度比実質2%増など主要経費は軒並み増額されており、歳出総額が過去最大の95.8兆円と、歳出削減どころか逆に増えているあり様です。
また、1月20日に内閣府が公表した「中長期の経済財政に関する試算」においては、2015年度の半減目標は2013年度から今後10年の平均成長率が実質2%程度、名目3%程度という非常に甘いシナリオに基づいてかろうじて達成する程度であり、2020年度では、11.9兆円もの赤字が残るとされており、このままの歳出規模では黒字化目標が達成できず、さらなる収支改善努力が必要であることは明白であると考えます。
総理は、「経済の再生なくして、財政再建なし」と言われておりますが、歳出削減も財政健全化には必要なことであると考えます。そこで、2020年度の黒字化を見据えた財政健全化への具体的な道筋と歳出削減の必要性について、総理の考えをお答えください。
また、報道によれば、総理は、昨年12月の企業経営者との懇談で「財政は世間で言われているほど、財務省が言うほど悪くない」という認識を示したとされますが、本当にそのような考えをお持ちなのか、あわせてお聞きしたいと思います。
足下、景気情勢は一定の回復を見せておりますが、それと同時に、一部食料品等の価格の上昇などが見られるのではないかと思います。このような状況の中、総理が消費税率引上げを決められた理由を、ここで改めてお伺いしたいと思います。
また、国民の目から見れば、お金に色はないわけですから、消費税収が社会保障に使われると言っても、結局は回り回って公共事業などに充てられるのではないかという思いがぬぐえないと思います。このような疑念を払拭するためにも、消費税収が社会保障に使われることを明確化するため、区分経理を行い、社会保障特別会計の設置を図るなどの措置を講ずるべきではないでしょうか。総理のお考えを伺います。また、消費税率の引上げとともに、一体として行う社会保障改革の中身について、具体的にお示しください。
さらに、財政再建は、税収増などの歳入確保と歳出削減の両面から考えていくべきです。景気回復による自然増収自体は望ましいことですが、これを借金の返済ではなく、政策経費に振り向けるようなことでは、財政再建などおぼつきません。その点についても、総理のお考えを伺いたいと思います。
○ 健全な競争のある政治こそ、議会制民主主義の本旨
最後に、議会制民主主義における責任ある「健全野党」のあり方について確認いたします。議会制民主主義をより良く機能させるためには、野党が与党との政治理念や基本政策の違いを明確に打ち出し、政権交代を目指し国民に自分たちへの支持を訴え、政権を取った暁には責任を持ってその政策を実行していく。これこそが健全な野党の使命であります。
古今東西の歴史が示す通り、一強支配体制の行き着く先は、国民に多大な負担や犠牲を強いて不幸をもたらす悲劇です。国民生活の向上は、一強支配体制からではなく、政党同士がより良い政治を目指して切磋琢磨する、健全な競争のある政治体制から生まれるのであります。政治に健全な競争があることこそ、国民に対して真に「責任ある政治」ではないでしょうか。「責任ある政治」の実現に向け、議員各位のご理解とご協力をお願い申し上げ、私の代表質問を終わります。