行動を起こす源──。それが原動力。

世間からは「なんで?」と思われることでも、本人に聞くときちんと理由がある。そんな個人の「原動力」に迫ります。

「定時制の高校に通っています。『水曜日のカンパネラ』のコムアイさんのスタイリストもしてて、いまちょうどツアーで金沢とか静岡とか、いろいろなところを回ってるんです。あと、子どもと関わるアルバイトを少ししています」

──子どもが好きなんだ。

「子ども好きっていうか、子どもといると邪悪なものを感じないので安心するんですよね」

──文太くんは普段どんなところで遊ぶの?

「それが全然遊ばなくて。俺と同じ歳の大学生の子たちってワイワイ遊んでるけど、俺はそういうの得意じゃないから。どっちかっていうと美術館とかのほうが好き。高尾山に行って山に登ったり。人がいない静かなところが好きなんです」

──そうなんだ! ちょっと意外かも。洋服はどこで買ってるの?

「本当にばらばら。リサイクルショップでも買うし、ブランドの通販でも買うし。ブランドにこだわりはないんです。あとは友だちのブランドを着ることが多い。このトップスは、昨日フェスの仕事でお会いした『あやまんJAPAN』のファンタジスタさくらださんのブランド『S.F.SukoshiFushigi』です。バッグは友だちからのフィリピンのお土産。カラーリングがおもしろくて、もらってテンション上がりました」

──洋服を買うときのインスピレーションは?

「『これかわいい!』しかないかも。丈とか形もみるけど...。あとは、着てみて『違うな』って違和感を感じたら、買うのやめます」

──いままでいちばん高い買い物は何?

「ANREALAGEのコート。高校生のころにはまってて。いくらくらいだろう? 14万円くらいかな」

──高校生で14万円ってけっこう大きな買い物だね。

「そうですね。まあまあな買い物をしましたね」

──いつもすごくファッショナブルだけど、いつからファッションに興味を持ったの?

「そんなに早くはなかったかも。幼稚園のころはおばあちゃんに洋服選んでもらってて、どっちかっていうと絵を描くほうが好きだった。ちゃんと洋服を選ぶようになったのは小学校3年生とか。その前は4歳からずっとゲームやってました。10日間で200時間とかしてたこともあります」

──200時間!? しかも子どもで? 生粋のゲーマーだね...。

「けっこうまずかったらしい(笑)。ゲーム脳みたいになって、寝てるときも音楽流れてくるし。いまはゲームもしないし漫画も読まなくなりましたけど」

──さっき小3でファッションに興味を持ったって言ってたけど、きっかけはあったの?

「ファッション雑誌を読んだからかな。ゲームの本を探しに本屋さんに行ったんです。そこで偶然見つけて、こういう世界もあるんだなって興味を持った。中1ぐらいのときはギャルソンが好きで、がんばってお小遣いを貯めて買ってました。でも、ぜんぜん似合ってなかった。ぜんぜんお洒落じゃないし。昔の写真は見るに耐えない(笑)」

──文太くんにもそういう時期があったんだね。じゃあいつからいまみたいな個性的なファッションになったの?

「いまみたいなファッションになったのは、16、7歳くらい」

──そのきっかけは?

「住む場所が変わったからかな。心の余裕が生まれた。視野が広がりました。前は自分が生きるのに必死だったけど、いまは本を読んだり、服を着たり、そういうひとつひとつのことに楽しさを感じられるようになった。ファッションって心に余裕がないとぜんぜんお洒落に見えないから、そこが大きかったかなって思います」

──文太くんがお洒落だなって思う人っているの?

「やっぱりコムアイさんかな。動きとかもそうだし、知性もあるから全部がお洒落に見える。あとは、Poggyさん。すごくお洒落。ここから得られるものはないかな? ってよくインスタ見てます」

──文太くんはインスタを中心に注目されているけど、まわりの反応を感じたのはいつくらい?

「去年の9月に初めてイギリスの雑誌からモデル依頼をされて、それから最近いろんな人が注目してくださってますね。ありがたいけど、なんか...違和感があります」

──その変化に対して、いまどう感じてる?

「危ないなって思ってる」

──危ない?

「うん。ちゃんと地固めしないと、ただのitボーイって呼ばれて終わっちゃうから。俺はちゃんとスキルを学びたくて、いまはスタイリストの仕事をさせてもらってます。きれいとか、かわいいとか、お洒落とか、もうそれだけじゃ生きていけない。それに気づいていない人が多い。ただインスタでフォロワーが多いだけで勘違いしたりね。それが一生続くとは限らないし、インスタもいつ終わるかわからない。これはただのアプリだから。このアプリがなくなったら食っていけなくなる人が山ほどいるはず」

──じゃあ文太くんはSNSにはそんなに固執はしていないんだ?

「SNSを利用して自分を発信したり、仕事につなげようとは思うけど、俺はフォロワーとかは気にしていないです」

──どう見られるかより発信重視っていう感じ?

「SNS上でも、俺は本当にいいと思ったものだけを使うし、無理だなって思ったら使わない。そういうのはフォロワーが増えたとしてもやらない。そこで仕事を得ようとしたら、イメージも崩れるし、見てる人もだんだん本物か偽物かに気づき始めてるから」

──SNSを通しても、それが本当か嘘かって見えてくるよね。ところで、普段文太くんが仲良くしているのは、どんな人が多いの?

「俺はけっこう人は選ぶかな。警戒心が強いかも。仲良くしてて信頼できる人は、ファッションはまったく関係ない人で、中学時代の同級生や、高校時代の先輩。真面目な話ができるんです」

「俺は日本にしか住んだことしかないから、その感覚値でしか話せないけど、日本は出る杭は打つっていう風潮がすごく強くて、ほかの人を許容する力が低い。そこがつまんないんですよね。たとえば、LGBTの人に対しても、変わったファッションをしている人に対しても。俺なんかは慣れているから平気だけど、まわりの視線に折れちゃって普通のファッションに戻した子もいる。そういうのはもったいないなって思う。別に人に害を与えてるわけじゃないし。認識とか知識の問題なんだとも思います」

──やっぱりまわりからの視線を感じることはあるんだね。

「あります。電車に乗ってて、写真を撮られることもありますよ(笑)。撮られてるって思ったら、『何で撮ってるんですか?』って聞いたりもします。ただ人を馬鹿にしてるなんて見ててつまんないから。なんにもクリエイティヴじゃない」

──そうだね。コソコソ影で笑うのって、いちばん陰湿だしね。

「そういうところは、ある意味日本人がいちばん気持ち悪い。俺、英語は話せないけど、外国人の友だちいっぱいいて、よく話するんです。日本人はTwitterでは悪口を書くのに、実際に会うとすごく普通の顔してくる。そういうのは絶対にしたくない。だから俺は意見をはっきり言います」

──強いね。

「でも、意見として言ったのに、そこを人間関係として受けとっちゃう人が多い。自分のこと嫌いになったのかな、とか、自分のことイジメようとしてるのかな、とか。ぜんぜん思ったこと言ってるだけだけど、って(笑)。日本の教育にも原因はあると思う。校則とか授業のやりかたとか、全部抑圧的だから、だから全部みんなと同じじゃないといけないって思っちゃうんですよね」

──文太くんはインスタ以外で使ってるSNSはあるの?

「SNSは、あとはTwitterですね。自分の思想とか意見を言うためのものとして使ってます。そういう俺の考えを見たいって言ってくれる人もいるから。いまネットってものがあるなら、うまく利用しなきゃって思ってます」

──SNSも結局は"自分がどう使うか"、だよね。ところで、文太くんってシンプルな服を着ることもあるの?

「ありますあります。黒いサーマルにジーンズとか。よく声かけてもらったり、スナップをお願いされることがあるんですけど、そんな余裕もないくらい急いでるときは、地味な格好するようにしてるんです。でも、バレないかなって思ったけど、意外とバレるんですよね(笑)。スタイリストとして、リサーチするために街を歩くときにも、シンプルな服を着ることがあります」

──どんな人に声かけられるの?

「30代、40代の方や、若い子もいます。俺みたいな格好がしたいけどできない人に応援されることが多いかな。あとは人生に疲れてる人も多いかも。ブログも書いてるんで、そういうのを見て、心の励みになりましたって。人生相談もDMでめっちゃくるし」

──よく頼られるんだね。でも、文太くん自身が辛くなったり、孤独になるときはある?

「あります。昔はそういうので荒れてて大変だったけど、いまは『あー疲れたな』とか『死にたいな』とか思っても、助けてくれる人がいっぱいいるからビックリしました。すごい心配してくれるから、俺がこういうことを言われるようになったんだーって。驚きました」

──これからどうしたい?

「洋服を使って、子どもの支援をしたいです。洋服じゃなくてもいいや。最終的に、虐待されていたり、食べるものに困っている子どもたちを支援したい。そのための方法をいま模索しているんです」

────ファッションの道に進んでるのも、子どもたちを支援したいっていう気持ちも、文太くんのなかではつながってるんだね。

「昔、自分がつらいときに、まわりの大人に相談しようとしてもぜんぜん対応してくれなかったことがあって。そういうのを経験してから、自分はこうはなりたくない、ちゃんと力になってあげたいって思うようになった。俺はエネルギッシュなほうなんだと思う。大抵の子はそういうことが起きると犯罪や薬に行っちゃったりするけど、俺はいい方向に行けた。だから、自分も子どもたちをいい方向へ誘導してあげれたらいいなって思います」

──いい方向へ行けるかって、「誰と」「何と」出会えたかってすごく大きいよね。

「そうですね。それが俺だったらうれしいし、ほかの何かに目を向けてくれたらいいなって思う。自分自身がそれに救われた部分が大きいので。なんかすみません、生意気なこと言って」

撮影・取材/グリッティ編集部

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